第5話
もうこの場所からでたい。なんだか疲れた。キョロキョロとコーを探す。彼は何かを視聴中だ。トントンとコーの肩をたたくと、飛び上がるほど驚かれた。
「なに、なに!み、視方わからなかった?」
心なしか顔が赤い。いったいこのガキは何を見ていたのだ。一気に力が抜けた。
「コー、そろそろ違う場所に行かない?」
「えっ?あっ、そうだね!」
ライブラリーを後にする。
「今度は町の中心に行くよ。ちょうどここからよく見える、あそこ。」
コーが指差す方を見る。
大きな木だ。ここからでも巨大であることがわかる。
「あの木はこの世界のあらゆる場所に繋がっているんだって。この町もあの木を中心に作られてるんだよ。近くにいってみよう!」
歩きながらこの世界に来てずっと気になってた事を聞いた。
「コーやコーのお母さんは私が怖くなかったの?空から降ってきた奴なんか未知すぎて怖かったでしょう?」
「それが僕も、たぶんお母さんも怖くなかったの。仲間?家族?うまく言えないけど馴染むというか異質な感じがしなかったんだ。」
「そっか。優しいね。コーもコーのお母さんも。想像もしなかった事が起きたのに受け入れてくれて。私のお母さんなんて出来の悪い私なんて受け入れてくれないよ。」
「そうか…。早苗着いたよ。」
いつの間にか巨大な木の前にいた。近くでみるとすごい迫力だ。
「すごい大きさだよね。この木、実は何度も折れかかってるんだよ。その度により強くなってるんだ。」
話してるコーの体がみるみる大きくなってる
。驚いて言葉もでない。
「実は僕は子供でもあるし大人でもあるんだ。子供の姿の方が早苗は警戒しないかと思って子供の姿でいたんだ」
「どういう事?」
「この場所は早苗の潜在意識の中なんだ。さっき行ったライブラリーは早苗が何度も生まれ変わって忘れてしまった記憶だよ。男として性を受けた事もあるし、残念ながら子供で終わった人生もある。そして、この木は早苗の『氣』だ。潜在下でもこうして立派に立っている。」
自分でいうのもどうかと思うが本当に立派な氣だ。この巨木の前では私が感じた傷も確かに微々たるものだろう。
思い出した。私はもう、中学生ではない。そもそも高校に入学してから母の言葉など忘れていたにも等しい。けど、話すものかという意地だけがベッタリ頭にこべりついていた。母が私を見限る人間じゃない事わかっていたのに…。おそらくこれが私が出した邪だったのだ。
「思い出したようだね。」
大人になったコーはにっこり笑った。
「たぶん上でパンタがイライラしながら早苗を待ってるよ。帰り方は簡単だ。木に早苗が触れるだけでいい。」
「ありがとう、コー。また、ここに来れるかな?」
「必要があれば。ここは君自身の中だからね。さぁ、もう行って。」
早苗は木に触れた瞬間に吸い込まれた。
気がつくと。目の前にパンタが立っていた。
「やっと帰ったか。自分の邪が祓えないようじゃ手伝いどころか足手まといだからな。よし、さっさと祓いな。」
早苗はうなずくと、黒いモヤを手で軽くはらった。モヤは煙が薄まるように消えてしまった。
「ようやくスタートラインに立てたな。とりあえず合格だ。いろいろ話す事もあるが、とりあえず体に戻るか。今日は早めに寝るんだぞ。」
肉体が居る場所に戻ると、パンタがしたように体に重ねた。すると、パンタを膝に乗せた状態で目が覚めた。パンタを撫でると「ニャ~」と片目を開けて一声鳴いた。
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