第4話
この町は全体的に丸いフォルムでできていて、とてもかわいい印象だ。なんだかアニメの中に入ってきたみたいだ。楽しい。私はキョロキョロしながらコーと歩いた。
「初めは、僕が一番好きな場所に連れて行ってあげる!」
とニッと笑うと、私の手を引きながら、走りだした。着いた場所は大きな施設のようだ。
「ここはライブラリーだよ。この世界の記憶が全部揃ってるんだ。僕がよく遊びに来る場所。早苗もきっと楽しめるよ。」
中に入ると、受付のような場所でコーが笑いながら人と話してる。どうやら、よく来るだけあって顔見知りのようだ。受付の女性は私をチラッと見ただけですんなり通してくれた。誰でも入れる所なんだろうか?
中はすごく広い。こんなに広いライブラリーは初めてだ。背の高い棚がズラーッと並び、壁という壁にも棚がとりつけてあった。近くにあった本を手にとった。どうやら本ではない。ディスクのようだ。
「早苗、これがないと視られないよ。この場所にあるのは全部これで視るんだよ。」
VRゴーグルのような物をわたしてくれた。確かに差し込み口のがついてる。コーが見方を教えてくれる。
「ここにディスクを入れたら勝手に再生するからね。頭に被って装着完了~」
いうとおりにしてみる。
なにやら水辺のような場所が映ってる。魚をすくおうとしている手が見える。
誰かの視点だろうか?
逃げられた!
ヤバい!落ちる!
バシャン!
落ちた!
どうやら終わったようだ。
違う場所のを手にとる。
きれいな女の人が目の前に居る。
「ようやく抜け出せたね」
「・・・が君の側を離れないからイライラしてたよ」
『アハハ』
2人の笑い声。
顔が近く。クチュと粘りのある水の音
「んっ…」
クチュ、ピチャッ
急いでゴーグルを取った。
まるで自分がラブシーンをしてるようなリアルさ。相手は女性だったけど。まだ、ドキドキしてる。恋愛に疎い私には刺激が強かった。
リアルなラブシーンまであるのか。コーはいったい何を楽しみにここに来ているのだ。
でも、確かに面白い。次はここから離れてる場所を見てみる事にした。棚の一番上。なかなか手がとどかないとこを梯子に登って取って見てみる。
手をかざしている。
強風がおきて木の実が落ちた。
もう一度、手をかざしてる。
メリハリ音を立てて木が倒れた。
何をしてるのだろうか?ディスクを戻した。手を伸ばして離れたディスクを視てみる。
ワーッ!
すごい歓声だ。お祭りだろうか?
「これで今年も安泰だな。誰が柱様になるかヒヤヒヤしたぜ。」
「この後、うちの王様はどんな力を手にいれるのかね?」
目線の先には舞台のような台が四方八方から見える位置にある。羊が上にあげられた。係らしき人が棍棒を羊の頭の上に振り下ろす。グッタリした羊を皆に見えるように掲げてる。
ウオーッ!!
観衆から地響きのような声があがる。
手慣れている。定期的にやってるようだ。
次に白い服をきた男性が舞台に立った。静まりかえる。皆が固唾をのんで男性に注目してる。先ほどの男性が棍棒から剣に持ち変えて来る。嫌な予感がする。脇と背中に汗が吹き出した。剣を両手で持つと切っ先を白い服の男性に向け、一気に足を踏み出した。刺された男性はガクッとうなだれた。
剣を抜く。
剣から赤い血がしたたり落ちる。
倒れる白い服の男性。
観衆の歓声。
皆のボルテージが上がってるのがわかる。
その時、上空に大きな赤い生き物が一瞬見えた。
(!?)
舞台を見る。また誰か上がってきた。次は女性だ。
私は視るのを辞めた。次に起こる事は簡単に想像できる。気分が悪い。もう他のディスクを視る気にはならなかった。
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