第3話

「おはよ~」


 教室に入ると、すでにクラスメイトたちは全員揃っていて、各々が好き勝手に過ごしていた

 俺のクラスのやつは別に悪口を言わない、だから、学校に来れる

 そんな中、窓際の席に座っている一人の少女がこちらに向かって手招きをしてくる


「おはよう!! お義兄さん♪」


「ああ、おはよ...? また来たのか?」


 彼女の名前は橘 小守

 俺のいとこである。年齢は十六歳で、アイドルをやっている、今年の春に高校に入学してからというもの、何かと理由をつけてはこうしてクラスに押しかけてくるのだ

 まぁ、本人はそのことを特に気にしている様子もないのだが。


「それで、今日は何の用だよ」


 俺の問いかけに、待っていましたと言わんばかりの表情で鞄の中から一枚の紙を取り出して見せつけてきた


「ふふん、これを見なさい!」


 彼女が手に持っていたのは、一冊の本だった。

 表紙には【超絶可愛いJKアイドルのマル秘プライベート】と書かれている

 つまりはそういうことらしい


「お前も飽きないな……」


 呆れたように溜息をつくと、今度は机の上にドンっと音を立ててあるものを置いてきた


「はいこれ、お義兄さんの分です!」


 それは、数枚の写真だった。そこには、先ほどの彼女とは違う人物が写っていた


「これは?」


「写真集ですよ! 昨日発売されたんですけど、どうですか!! 私のこと好きになりましたか!?」


 興奮気味に話を続ける


「ほら、このページなんて凄く良いと思いませんか!?」


 そのページには水着を着た女の子が扇情的なポーズをとっている姿が映っていた

 確かに、綺麗な身体をしているが……


「……」


 黙ったまま何も答えない俺を見て、不安になったのか、徐々に声が小さくなっていく


「あの...ダメ、でしたか?」


「いいや、違う」


 俺は首を横に振って否定する 


「ただ、驚いただけだ」


「そ、それじゃあ……!!」


「元々好きだよ」


「きゃー!!!」


 嬉しさのあまり、その場で飛び跳ねて喜んでいる

 周りの視線が痛いな…… 


「良かったですね、小守さん」


 いつの間にか、隣に立っていた女子生徒が話しかけてきた

 彼女の名前は、神楽坂 渚 俺の幼馴染である


「ありがとうございます、神楽坂先輩!」


「いえ、私は大したことは何もしていませんよ」


「それで、どうしてわざわざ写真を持ってきたんだ? いつもみたいに、家に

 来て直接言えば済むことだろ」


 そう、それが一番の問題なのだ

 何せ、この女は学校が終わると同時に毎日のように俺の家へと押しかけてくるのだから

 しかも、なぜか俺の部屋でゴロゴロしたり、一緒にゲームをしたりして過ごしている

 正直、勘弁して欲しいところだ。

 だが、そんな俺の気持ちなど知る由もなく、


「えへへ~、実は、お義兄さんと一緒に登校したいなって思って!」

 などと抜かす始末である。


「それに、最近は物騒じゃないですか」


「物騒?」


「はい、何でも、不審者が出没するとか」


「そうなんですよ、もう怖いですよね!」


 二人揃って、神妙な面持ちになる。

 どうやら、真剣に悩んでくれているようだ。


「そうだ、いっそのこと二人で住んじゃいますか!」


「はい、名案です!」


「……」


 勝手に盛り上がる彼女たちを他所に、俺は深いため息をついた。

 全く、相変わらず困った奴等だな。


「お~い、さっきから何をコソコソと話してるんだ?」


 不意に背後から声を掛けられた

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