第7話 幕引きは突然に。
「なんだ?
「え……あ……の……えっと……」
どう言えばいいのかと、
ひょっとすると、
「モゴモゴしてないでとっとと言え!!!」
「そっ、その二人は俺を殺したヤツらなんですよっ!」
広前が掲げた拳にお札が握られているのを見た俺は、小森のことなど気遣うこともなく本当のことを言った。
あんなふうに燃やされたらたまらない。
「――おまえを? それじゃあおまえは、生きていた頃のことを思い出したのか?」
「……ええ、まあ、一応……」
「ギィィィィィェェェェェエーーーーーーーーッ!!!!!」
俺が応えたのと同時に、また小森の体か燃え上がり、叫び声が響いた。
小森の両脇に正座している
「ひぃ~~……広前さん~~~……もう、勘弁してくださいっていうのに……」
「やかましいっ! 小森、きさま仕組んだな?」
「仕組んだだなんて……人聞きの悪いことを言わないでくださいよ……」
「こうなるのを見越して、記憶に難のある高梨を初日から連れ回したんだろう!?」
「確かに、そうなればいいとは思っていましたが、わたくしも今日のことは想定外でして……」
「そんなワケがあるかぁっ! こんな偶然あるはずがないんだよ!」
怒れる広前がまたお札を手にしたのが見えたからか、小森は両手を前に出して広前の動きを止めるようなしぐさをした。
「待って! 待ってください! 結果、うまくいったんですからっ! 広前さんだって、結果、良かったと思いますよね!?」
一生懸命になって言い訳をする小森に、また広前が怒りだすと思ったけれど、広前はグッと言葉を詰まらせて黙り込んでいる。
小森の言うとおり良かったと思っているんだろうか?
「広前さん。時間も遅いですし、ひとまずお開きということでどうですか?」
「
全員の目が、一斉に男に向いた。
そうだ。
そもそも、コイツが禁足地に入ろうとしていなければ、俺たちもこんな廃村にくることはなかったし、怨霊化することもなかったんだ。
「ふぇ……? オレ? いや待て。オレをどこに連れていこうって……おまえらSCCだろっ! オレはSCCには入らないと何度も言ったはずだぞ!」
SCCに入るとか入らないとか、コイツはなにを言っているんだ?
ずっと俺のことを知っているような素振りだったのも気になる。
「……? あっ! おまえ、
「わかりました」
四方津は嫌がって逃げようとした男に当身を喰らわせて気絶させると、担ぎ上げて来た道を戻って行った。
「さて……この廃村のことは、谷郷に任せるとして……小森と三軒、高梨たちを連れて本部へ戻れ。話を聞くのは明日の昼にしよう」
「わかりましたよ……それじゃあ高梨さん、
小森に呼ばれたものの、俺は
このまま返していいんだろうか?
そう思っても、今さら復讐してやろうという気にもならない。
「広前さん、この二人……どうするんですか?」
このあとのことを谷郷と話していた広前に聞いてみた。
俺をみた広前は渋い表情だ。
「どうもこうも、コイツらが乗ってきた車に乗せて、うちのヤツらに適当な場所へ置いてきてもらうよ」
「適当な場所……? 警察には……」
「連れて行ったところでどうなる? おまえにしたこと……なにか証拠でもあるか?」
「そんなものは……ない……と思います」
ふうっと大きなため息を漏らした広前は、俺の目をしっかり見返してきた。
「おまえにとっては不本意だろうが、こればかりは私らにも手の出しようがない」
警察に突き出したところで証拠がなければ、本人たちが自白しない限りはなにも変わらないだろうと。
自殺で処理をされてしまっているとしたら覆すのは難しいから……だろうか?
あんなにも許せないと思っていたけれど、不思議なほどに今は悔しさも感じなくなっている。
微かなうめき声がして、茉莉紗と男が意識を取り戻した。
「高梨、ちょっと来い」
広前に手招きをされ、そばへ行くと、耳打ちをされた。
俺はそれに頷いてみせると、茉莉紗と男の前に屈んで視線を合わせ、こう言った。
「俺は、おまえらを絶対に許さない……ほかの誰かに同じことをするのも許さない。いいか? 俺はずっと見ているからな? おまえらのそばで、ずっと見張っていてやる」
怨霊化したままの姿で、わざと声を低くして言うと、二人は壊れた人形のように首を縦に振り、そのまま失神してしまった。
呆気ない終わりだ。
「広前さん、今のでいいんですか?」
「ああ。そいつらは霊感もなさそうだ。普段、霊なんて見ることもないだろう? ああ言っておけば、おまえに見られていると思い込んで、悪さなんてできなくなるさ」
そうだといい。
ほかの誰かが俺のような目に遭うのは可哀想だ。
「さあ、みんなもう戻れ。後の始末はSCCに任せてくれればいい」
シッシと動物でも追い払うように手を振った広前たちを残し、俺は小森たちと帰路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます