第5話 やばい女にばっかり好かれるのは何かの呪いですか?
今日はFPS配信!
ある意味、本命のゲームとも言える。
FPSといえば男のゲームだもんね。
すなわち、FPSをやれば男が観に来る!
そしてその中には、きっとイケメン配信者もいるはず!
そしてそして、この可愛い私にイチコロになって、イケメンの囲い大量!
イケメンに囲まれた配信生活の始まりだ。
今回プレイするゲームは、BPEX。
いわずと知れた大人気FPSである。
様々なフィールドに降り立ち、最後の一人になるまで戦い続ける。
私はクラフトとシューティングを合わせたフォートモーニングというゲームの方が好きなんだけど、あっちはゴースティングがすごいとかであんまり配信でやってる人がいないんだよね。
そんなわけで、私は配信と機材の準備をして、午後6時きっかりに配信スタートのボタンを押した。
「こんメアなの~! 今日はBPEXをやるの~!」
コメント
:こんメア~
:こんメア!
:楽しみ!
:やったことないけど面白そう!
:今日もメアちゃんかわいい
:きたー!
相変わらず女のコメントばっかりだ。
アイコンとか名前からして明らかに女だし。
男のコメントもちらほらと流れているが、コメントのあまりの女率に若干引いている空気さえ感じられる。
ぐぬぬ……。
コメント
:《神保アカネ》こんメア!
:アカネちゃん常連になってて草
「神保センパイ今日も来てくれてるの~!」
神保アカネ。私がデビューした「せんせーしょん!」と親交のある「私立カシコミ学園」の先輩Vtuber。
……なのだけど、前々回の配信が終わってから彼女の配信を観に行ったら、まあまあやばい女だということがわかった。
それ以降、ちょっと警戒しているのだ。
コメント
:《神保アカネ》なんでも教えたる
:優しい先輩だ
:すっかり骨抜きにされとるw
:アカネちゃんがこんなにデレるの珍しいよね
:可愛い女には優しい女
「先輩のご厚意すごく嬉しいの……! 今度キルムーブ教えてほしいの~!」
コメント
:《神保アカネ》任せとけ
:これはコラボ決まったな
:メアルちゃんをよろしくお願いします!
とは言ったものの、カシコミ学園って確か女オンリーの箱だった気がするし、仲良くするメリットがないんだよね。
私はまんがタイムき◯らを目指してるわけじゃないのだ。
私が目指してるのは、乙女ゲームの主人公。
四方八方どこを見てもイケメンだらけ!
そんな世界を作っていきたいし、そのためなら概ねなんでもやる所存だ。
それこそが私の幸せなのだから。
「うーん、どのキャラがいいか分かんないの……」
:《神保アカネ》初心者ならブラハおすすめやで
ブラハってこのガスマスクつけてるキャラか。
可愛くないし見た目はあんまり好みじゃないけど、おすすめらしいしこれにしておこう。
そして、私の第一回BPEX配信がスタートした。
泣いても笑っても初回は一回っきり。
気合い入れていくぞー!
戦艦みたいな乗り物から飛び出すと味方がマップにピンを打ったので、そこを目安としてフィールドに降り立つ。
フィールドに降りたらまずは武器を探さないといけない。
武器の入っているボックスを求めて走り回っていると、少し先にボックスを発見した。
「あ、見つけたの!」
喜んだのも束の間、敵が突然目の前に現れて武器を構えてきた。
「ちょっと待つの!? メアルまだなんにも持ってないのー!」
やばい、このままじゃ確実に死ぬ!
初回が初動死なんて嫌なんだけど!
私は武器を諦めて、建物の中に逃げ込んだ。
「なんとか逃げれたの……油断も隙もないの」
こちとら初心者だぞ、もっと手加減しろい!
それにしても、アイテムを取るだけでもこんなに苦労するなんて……。
こうしている間にも、キルログがどんどん更新されていく。
見せ場は作りたいけど、迂闊にも動けない。
一体どうすれば……。
その時、あるコメントが目に入った。
「索敵しましょう。「全能の目」です。ボタンはL1」
「ぜ、全能の目!?」
よく分からないけど、ええいままよ!
言われた通りにボタンを押すと、「敵をスキャン中」という文字が出てきてマップ上の敵が感知され始めた。
「なにこれすごいのー!」
こんな能力があったなんて!
間違いなく、今の私の目には星が輝いているだろう。
通りすがりのコメントのおかげでなんとか窮地を脱して、武器や回復アイテムを入手することができた。
初回で初動死っていう結末は回避できた。
よかった……。
と思っていると、何やらコメント欄がざわざわしていることに気づいた。
なんだろう?
コメント
:ロロたん!?
:女王が降臨なされた
:ロロたん来てるやん!
え? ロロたん?
誰だそれは。
視聴者の反応からして、活動者なのは明白だった。
名前的に女っぽいけど万が一イケメン配信者だった可能性に備えて、そのロロたんとやらのコメントを探す。
すると、件のコメントはすぐに見つかった。
というより、さっき私の窮地を救ってくれたコメントだった。
「うるふし……ロロさんで合ってますか?」
コメント
:合ってるよー
:敬語助かる
そのコメントをしたのは、
また女かよ!
ていうか、さっき女王とか言われてたけど……?
コメント
:《潤伏ロロ》降りたらまずは味方についていきましょう
:ロロたんがコメントしてるの初めて見た...
:本当に本物?
:公式マークついてるから本物でしょ
:女王にコメントもらえるのすごい!
なんか勝手に盛り上がってるけど、私は潤伏ロロなんて知らないぞ……。
でも有名な人っぽいし、無視はできないよね……。
「潤伏ロロさん、コメントありがとうございますなの~! 潤伏さんもVtuberですよね? コメントくれたってことはメアルのこと気になってくれたってことでしょうか……?」
:《潤伏ロロ》メアルさんのこと気になってます!
:おー!
:正直!w
:これはてぇてぇの予感
:女王のコーチングは貴重
何がなんだか分からないが、とりあえずすごい人っぽい。
まあ、女って分かった以上、興味はないが。
「えー! 嬉しいですー! メアルも後で潤伏さんの配信観に行きます! チャンネル登録もします! あとあと、メアルはゲームとか大好きでFPSを中心に配信していく予定なのでよければ仲良くしてもらえたらすごく嬉しいです!」
ちょっと媚びすぎかな……?
まあ、相手が活動者だと分かった以上スルーもできないし、これくらいは許容範囲だろう。
コメント
:ぐいぐいいくねw
:V仲間からコメントもらえて嬉しいんだねー
:よかったねー
:喜んでて可愛い
:《潤伏ロロ》私も嬉しいよー!
その後も配信は恙無く進行し、1時間が過ぎたところで配信を終了した。
そういえば、神保先輩はあれ以降コメントなかったな。
潤伏ロロとかいう新しい女が出てきたからコメントは控えたのかもしれないな。
例によって、自分に興味を持ってくれた人のことは知っておきたいと思った私は潤伏ロロのチャンネルに行ってみた。
活動者のことを知るなら、配信を観るのが一番手っ取り早いからね。
神保先輩はやばい女だったけど、やばい女なんて早々いるものではない。
それこそ、潤伏ロロはコメントの感じからもまともそうな雰囲気があったし、きっと大丈夫大丈夫!
そう見越して私は潤伏ロロの配信アーカイブを観てみた。
それは、最近発売されたマ◯オの新作をプレイするという内容だった。
「私、実はマ◯オが大好きで。幼少の頃はマ◯オとともにあったと言っても過言ではないですね。マ◯オのやりすぎで視力落ちたんですから」
声は悪くない。クール系優等生ってところだろうか。
話してる内容はバカだけど。
見た目はウルフカットの女王様って感じで、青色のドレスが似合っていた。
胸元ががばっと開いている。
「伊達に視力落としてないぞってところ見せてやりますよ」
そう意気込んで始まったプレイは、絶妙に弄りづらいレベルの下手さだった。
「今日は調子いいかも~」
本人はなぜか自信満々だけど。
そこまではよかったのだ。
問題は、難所と思われるステージに到達した辺りだった。
そこでミスを繰り返して、イライラがたまっていたであろう彼女は、突然台パンしたと思ったらこう叫んだのだ。
「あー! 酒飲みてー! ていうか飲むわ! 飲まなきゃやってられるかぁこんなゲーム!(プシュッ!)くー! キクー! 五臓六腑に染み渡るうううう! ったくよお、皆に優しいマ◯オはどこにいったんだよおおん!? 映画化したからって急に難易度上げてくんなし! こんなもんダ◯ソやダ◯ソ!」
私は黙って配信を閉じた。
そして、頭を整理する。
結果、辿り着いた結論は……。
「この女もやばい系じゃねえか!」
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