第262話 黒幕X
このニーベラントの世界にいったい何が起きようとしているのか。
俺はようやくその真相らしきものと黒幕に辿り着けたような気がした。
世界の滅亡を引き起こしていたのは、おそらくあの禍々しい光をその身に帯びていた青銀色の瞳の男。
タイテーニアによれば、あれは人間のような見た目をしていたが、紛れもなく人格神と呼ばれる人間性をもつ超越的存在であったらしい。
人格神とは、人間と同じように意志、感情をもち、行動すると考えられている神の態様で、俺が出会ったペイロンなどと一応は同じ分類がされているようだ。
自然神や怪異神、獣神などに分類される神々に比べると、人格神は、人に近い見た目を持ち、高い知性を備えている傾向にある。
それで、神々の社会にも一定の秩序や規律が必要だと考える勢力に身を置く者も多かったのだとか。
黒幕であると思われるあの
その目的はおそらく≪
妖精の爺さんたちは、あのような目立つ真似をしてまで手に入れる価値が、死ぬ前の惑星から採れる未成熟の≪
奴が、あの≪
ただ言えることは、この世界を救う道が無いという現実がよりはっきり明らかになったということだ。
妖精の爺さんたちの話では、あの
ウォラ・ギネが唱えるように、「力こそすべて。力こそが善」というのは本当だと今は思う。
あんなにも圧倒的な力を見せつけられると、滅びを受け入れざるを得ないと、抗う心が萎えてしまう。
これから、いったいどうすればいいのか。
長居しすぎても妖精の爺さんの負担になると思ったので、なにも思いつかないままだったが、とりあえず≪ぼうけんのしょ3≫の「はじまり、そして追放」をロードした。
ここから城に引き返して、亀倉たちと共闘しても何の打開策にも結び付かなかったので、俺は両脇を固める兵士たちの為すがまま、大人しく城の外に連れ出された。
何回も、何回も茶番に付き合わせてすいませんね。
何も知らず、真面目に何回も職務を遂行している彼らに内心そう呟きながら、その場を去る。
学生服を手早く金に換えて、身支度を整え、ザイツ樫の
そして、今回はそれに加えて、大きな紙の束とペン、そしてそれにつけるインクを買った。
その足で、早々に宿を確保し、部屋のテーブルにそれらを広げたのは、これまでにあった出来事や気がついたことを時系列順にできるだけ詳細に書き込むためだ。
見逃していることはないか、まだ俺にできることは残されていないか。
いったん頭の中を整理して、それらを見つけ出したかった。
もし、何も思いつかなければ、今度こそ諦めるほかはない。
日が暮れる時間帯までびっしりと文字が書き込まれた紙と睨めっこしていた俺は不意にあることに気が付いた。
俺以外に地球から連れてこられた異世界勇者のうち、一人だけまだ会っていない人物がいる……。
その人物とは、タクミという名前の男で、展開によっては登場したり、しなかったりする不安定な存在だ。
俺や亀倉たち十人のあとに召喚され、そのままゼーフェルト王国の王太子の座についてしまうことになるのだが、俺がイチロウを倒さなければ、たしかロード後の400日前後ぐらいのタイミングで暗殺されてしまったりする。
その性格は評判を聞く限り最悪で、ひたすらハーレム作りに
そうしたこともあって、これまであまり積極的には関わって来なかったのだが、今回はこのタクミに会ってみようと思った。
なぜ今さら、「ハーレム作りにしか興味が無い色情魔」などと噂されていたこのタクミに注目したのかと言うと、ちゃんとした理由がある。
タクミは、世界を救おうと表立って活動していた俺ともども、バルバロスの標的になっていたという経緯があり、しかもわざわざ
殺害の理由は、純粋にゼーフェルト王国の国益のためということもあるかもしれないが、その裏に何か別の理由があったとは考えられないだろうか。
邪眼刀に宿る邪神ジブ・ニグゥラの話では、バルバロスの背後には正体不明の神、ここでは仮称で
複数の時系列を並べて整理した、多くの事柄が書き込まれた紙を眺めながら、考察しているうちに、そのXが仮に、あのニーベラントを滅ぼし、≪
ジブ・ニグゥラを倒してしまうと、終末の到来を早めてしまう原因になってしまうのが、何故かまではわからない。
だが、ジブ・ニグゥラ、イチロウ、バルバロス、そしてX。
これらを一本の線で結ぶと、途中の経緯はどうあれ、ジブ・ニグゥラの消滅がスイッチとなって、Xが動き出すという流れのようなものが見えてくる気がした。
そして、次に着目したのは、ニーベラントの惑星崩壊の速度だ。
おそらくだが、これには俺が倒してしまったグラヴァクの存在が大きく影響したのではないかと思っている。
Xとグラヴァクは、何らかの理由で対立していて、その邪魔が入った場合には、Xによる惑星破壊が遅れると考えるとどうだろう?
そして、大地が次々と≪
あれが勘違いでなかったなら、タクミという異世界勇者には、Xが邪魔に思うだけの何か特別な力などがあるのではないだろうか……。
可能性はかなり低そうだが、ワラにも
「ははっ……。こんな奴のことしか確認することが無くなるなんて、これはいよいよ諦めなきゃなくなるときも近いかな」
何か急に情けなくなってきて、俺の視界が涙で滲んでくる。
「……なんで、俺がセーブポインターだったんだろう。もっと、頭が良くて、優秀なやつがなってたら、こんな絶望的な状況になってなかったかもしれないのに……」
俺は、すっかり暗くなった室内で、ひとり
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