第238話 いざ、魔王城!
レベルが99から、100になったからといって、俺自身には特に大きく変わったと思えることはなかった。
能力値が上がった分、おそらく身体能力やその他
気になったので、さりげなくマルフレーサやウォラ・ギネにレベル上限について尋ねてみたのだが、そもそもレベル99の人間という存在そのものが伝説などで語られるような稀有な存在であり、二人ともそういった人物を目の当たりにしたことは無いのだという。
マルフレーサのレベルは77。
そして、ウォラ・ギネは89だそうで、こちらはすでに≪成長限界≫を迎えているのだとか。
マルフレーサによれば、伝説の≪
まあ、とりあえずに
考えてもわからないことは、考えても仕方ない。
「それじゃあ、みんな、行って来るよ」
俺は身支度を整えて、ついに魔王が住むという魔王城に足を運ぶことにした。
まずは俺ひとりで行ってみて、安全の確保ができた状態で、亀倉たちを連れて行く。
≪ぼうけんのしょ≫に、直前のセーブがあるので、うまくいかなかったら、何度でもやり直しができるし、まずは直球勝負で行ってみよう。
「おい、ユウヤ。その≪ヒノキの長杖≫では、いささか心もとなかろう。これを持っていけ」
旅立とうとする俺に、ウォラ・ギネが自分の長杖を差し出してきた。
「これは?」
「朽ちて倒れた世界樹の幹から切り出して作った、この世にたった一本しかない長杖だ。儂がつくった長杖の中でも最高傑作。ぜひ、これをお前に持って行ってほしい」
「そ、そんな貴重な物、受け取れないですよ」
「いいのだ。儂がそうしたいと思ったのだからな」
「どうして、そこまで俺にしてくれるんですか? この展開では、俺と知り合ってまだ
「出会ってから日が浅かろうとも、お前が使うその技、肉体の動きが儂との
「……ウォラ・ギネ。そして、マルフレーサにも、実は謝らなきゃいけないことがあるんだ。俺は伝えなきゃない真実を二人にだけ伝えてない」
「真実? 何のことだ」
「それは……、遠くない未来。最低でも、今日から930日くらい経ったその日にこの世界は終わる。誰も助からない。マルフレーサも、ウォラ・ギネも原因不明の死を迎えることになる。それなのに、俺はそのことを二人に伏せていた。協力を得られなくなるんじゃないかって考えたんだ。俺は卑怯者だ。本当にごめんなさい」
俺の突然の告白に、マルフレーサとウォラ・ギネは互いの顔を見て、そして吹き出し、笑った。
「嘘じゃないんだって! これは本当に起こることなんだ」
「違う、違う。そうじゃないよ、ユウヤ。私らは、お前のその話を疑ってやしないよ。ただ、そう……そんなことはとっくに知っていたんだ。そこのミノルとかいう若い男からすべてを聞き出していた。特訓中に、私の魔法を使った尋問でね」
「ぼ、僕ですか?」
ミノルは、突然、名前が挙がったことに驚き、そして自分の細長い顔を指さした。
「ああ、すまないが、一番精神が弱そうな感じだったのでな。状態異常魔法が効きやすそうだと思ったのだ。そして、尋問のあと、記憶は消しておいた。悪く思わないでくれ」
「二人とも、知っていて、今まで協力してくれてたの!?」
「まあ、そういうことになるな。マルフレーサからそのことを聞いたときは正直、儂は戸惑った。だが、仮に世界が滅びてしまうとして、それがお前たちに協力しないという理由にはならんだろう。まあ、どのみち老い先短い儂の命だ。仮にお前が異なる世界に行ってしまうとしても、ムソー流杖術はこの先も継がれていくわけであるし、この命を、ユウヤ、お前にくれてやっても構わんかなと思った次第だ」
「マルフレーサは? このまま、世界が滅びて、俺たちだけが助かる感じになっても納得できるの?」
「納得できるも何も、そういう
「はあ……、マルフレーサらしいや。それで、いままで若返った格好だったわけね」
「だから、われらのことなど気にすることはないぞ」
「ありがとう。そう言ってくれると気が少し楽になったよ。俺もできるだけ世界の破滅を回避できるように、ギリギリまで頑張るつもりだよ。そのためにも、まずは俺一人で魔王のところに行く。確かめたいことが、いくつかあるんだ」
俺は、みんなに見送られ、魔王城があるという旧ゴーダ王国の都に向かった。
今の俺の能力なら、ひとっ飛び。あっという間だ。
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