第186話 とびら
リロードしてから93日目。
この日はまだセーブ可能日であったため、俺は久しぶりに≪ぼうけんのしょ1≫にセーブすることにした。
ぼうけんのしょ1 「物置小屋の片隅で、ぼっち」
→「世界を救う者たち(笑)」
ぼうけんのしょ2 「ヒモ野郎、彼女に寄生する」
ぼうけんのしょ3 「はじまり、そして追放」
多くの人間の協力を取り付けることができたことに俺は満足していたし、これだけの規模で世界の破滅に立ち向かう体制を整えるのは、それはもう大変なことであったので、できればやり直しを避けたかったのだ。
無償奉仕の地道な治療行為や世界滅亡に関する説明を何度も繰り返すのは正直、もうウンザリしていた。
レベルが一つ上がり、スキルと交換できるセーブ特典ポイントは15に増えた。
ちなみに、ポイント交換で可能なスキルのリストは以下の通りだ。
人セーブ(使用回数制限なし):10ポイント
「とびら」解放:5ポイント
「はなす」解放:5ポイント
「つよさ」解放:5ポイント
どうやらリストに現れるスキルは四つで、何か一つのスキルを取得すると、ラインナップがランダムで変わる仕様のようだ。
今はポイントが15あるから、どれでも取得は可能だが、手に入れてみるまでその効果がわからないため、慎重にならざるを得ない。
コマンド「まほう」のようにイメージしやすいものならば、決断もつきやすいものだが、「とびら」、「はなす」、「つよさ」という単語にいまいち魅力を感じていない。
「人セーブ」もなんだか意味不明だし、何より他のスキルよりも倍もポイント消費してしまうため、二の足を踏んでしまう。
「でも、どれか取得しないと別のスキルが出てこないんだよな」
散々迷った挙句に、俺はコマンド「とびら」を5ポイント使って解放することにした。
普通に考えれば、扉を開けるだけのスキルなんだろう。
だけど、セーブポインターのスキルは規格外なものが多いから、予想の斜め上を行く可能性は十分にある。
扉を作って、壁や床を通り抜けれる能力だったらわりと使えそうだし、他にも敵の肉体に扉を作って、それを開けたら、内臓がまろび出るとかなら、戦闘時において強スキルとなり得る。
気持ち悪いから多分使わないと思うけどね。
名前:
職業:セーブポインター
レベル:46
HP:865/865
MP:531/531
能力:ちから67、たいりょく67、すばやさ67、まりょく46、きようさ66、うんのよさ67
スキル:セーブポイント
≪効果≫「ぼうけんのしょ」を使用することができる。使用時は「ぼうけんのしょ」を使うという明確な意思を持つことで効果を発揮することができる。
スキル:場所セーブ
≪効果≫任意の場所を三か所までセーブできる。「場所セーブ」を使うと≪おもいでのばしょ≫の一番から三番まで指定してセーブが可能。セーブした場所はロードすることによって、いつでも訪れることができる。仲間など、視野内の認識可能な複数対象にも効果を及ぼすことができる。使用回数制限なしだが、対象人数に応じてMPを消費する。
解放コマンド:どうぐ
≪説明≫自らに占有権があるアイテムを≪どうぐ≫の中に収納できる。「コマンド、どうぐ」と有声無声関わらず、意志を持って唱えると使用可能。所持数制限なし。使用回数制限なし。
解放コマンド:しらべる
≪説明≫対象のアイテムがどのようなものなのか調べることができる。「コマンド、しらべる」と有声無声関わらず、意志を持って唱えると使用可能。使用回数制限なし。
解放コマンド:まほう
≪説明≫下記の≪まほう≫を使用できるようになる。対象を決め、その≪まほう≫を使用するという確固たる意志を持つことで発動可能。各≪まほう≫に応じたMPを消費する。
≪まほう≫一覧
≪
解放コマンド:とびら
≪説明≫この世界に存在する「有りとあらゆる扉」を開けることができる。いかなる鍵や封印も無効。
うわ……、やっぱりそっちか。
常識的な方の想像どおりだった。
なんとなく効果は想像できたけどハズレ引いてしまった感が強い。
鍵がかかった扉なんて、力づくでこじ開けたらいいし、こんなスキルが必要になるのは鍵屋か、空き巣ぐらいなものだろう。
あとは持ち家がある場合に鍵を失くしてしまって、扉を壊さずに開けたい場合とかには便利かな。
このコマンド「とびら」を解放したことで、更新されたポイント交換リストはこんな感じだった。
セーブ特典ポイント:10
人セーブ(使用回数制限なし):10ポイント
クラスチェンジ(条件達成済み):300ポイント
「はなす」解放:5ポイント
「つよさ」解放:5ポイント
俺は、新たにリストに載った項目を見て思わず目を疑った。
消費ポイントが300……。
条件達成済みというのは良いが、これはセーブできる日が限られている中、あと290日もどこかの日でセーブしなければならないことを意味する。
しかもアップじゃなくて、チェンジという語感がどこかギャンブル感があって勇気がいる感じだ。
元のセーブポインターに任意で戻れたり、変更前に内容確認できたりするならいいけど、これまでの感じからすると、そんな親切な設計にはなってない気がする。
ま、まあ、別にセーブポインターに不満があるわけではないし、これは必要ないよね?
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