第134話 ピロートーク
「本当に良かったのか?」
亀倉たちと別れた日の夜、裸で仰向けになり寝台の上でくつろいでいた俺に、傍らのマルフレーサが訊ねてきた。
「えっ、何が?」
「
「仲間じゃないよ。たまたま偶然、そこに居合わせただけ。そもそも俺はこの世界では落ちこぼれみたいで、いの一番に城を追放されたから、あいつらとはほとんど言葉も交わしていない。他人だよ」
「ずいぶんと薄情なのだな。あのまま、王城に向かったとて、おそらく捕縛され、悪くすれば逃亡の罪で死罪となるやもしれぬぞ」
「……知らないよ。俺には関係のない話だし、マルフレーサはなんであいつらにそんなにこだわるの?」
「ふふっ、なぜであろうな。あのカメクラという男の決意にかつての自分たちが重なって見えたのか、はたまたきまぐれか。自分の心だというのに、おかしなものだな。いつも最大の疑問は、己の心の中にある。なんとなくだが、あの者たちを見ていると力を貸してやりたい、そう思ってしまったのだ」
「ふーん、それじゃあここで別行動する?」
俺は寝返りを打ち、マルフレーサに顔を近づける。
「本当にかわいい顔して、ベッドの上では意地悪だな、おぬしは!」
マルフレーサがふざけて、鼻の頭を噛んできた。
「力を貸してやりたい……ねえ。実際にこの異世界に連れてこられて、元の世界に帰れたという人がいるっていうなら、望みはあるけど、そういう伝承とかって残ってるの?」
「私が記憶している限りでは無いな。それはあまりにも
「ふーん、よくわからないけど、結構色々な人が、こっちの世界に来てたんだね」
「まあ、だれかの創作の可能性もあるが、実際に、ユウヤやカメクラたちを見るとかなり信ぴょう性が出てくるな」
「……ねえ、マルフレーサ。俺は元の世界に戻りたくないわけじゃないんだよ。ただ、亀倉たちみたいに苦労をしてまで戻りたい理由が見つからないだけなんだ。元の世界では、何かに一生懸命に取り組んだり、人と積極的に交わって来なかったから、何というか……すべてが希薄だった。ただ何となく生きてるっていうだけ。将来の夢とか目標とかもなかったし、それを人に聞かれるのもすごく嫌だった。自分には何も取柄なんか無いように思ってたし、容姿も人並み。家族とは別にうまくいってなかったわけじゃないけど、それだってそんなに特別、仲良し家族だったわけじゃない。上手く表現できないけど、俺の心を引き留めるようなものが元の世界にはないってだけなんだよね」
「では、もしもの話だが、今、目の前に元の世界に戻れる出入り口が突然現れたらどうする?」
「案外、あっさり帰っちゃうかもね。気分で……」
「それは寂しくなるな。また、長い夜を一人で過ごさねばならん」
マルフレーサは、その神秘的な瞳で俺を見つめたまま、拗ねたような顔をした。
「あれ? 今日はやけに素直だよね。そんな顔されちゃうともう一回したくなっちゃうな」
俺はいきなりマルフレーサを抱き寄せるとその上に覆いかぶさった。
「よ、よせ。今日はもう三回もしたではないか。お前の体力で、そう迫られては私の体力が持たん。明日、起きれなくなるぞ」
「いいじゃない、もう一泊すれば。どうせあてがある旅じゃない」
俺は、抵抗をあきらめたマルフレーサに優しく口づけし、そのまま強く抱きしめた。
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