第五章 異世界成功者

第91話 リローデッド

ぼうけんのしょ3「はじまり、そして追放」をロードし、再び人生をやり直すことにした。


ぼうけんのしょ1「物置小屋の片隅で、ぼっち」では、もうすでにカミーロと知り合ってしまっているほか、リーザイア行きを回避しにくい状況にあるし、ぼうけんのしょ2「ヒモ野郎、彼女に寄生する」だとアレサンドラと寄りを戻してしまうような展開になってしまう。



それにしても人生って難しい。


セーブとロードを繰り返し、自分が思い描く最高の人生を実現しようと、より良い選択をしているはずなのだが、些細なことがきっかけで、思わぬ展開を引き寄せてしまう。


セーブポインターの力でやり直しができる俺でさえ、こんなにうまくいかないんだから、俺の両脇を抱えているこの兵士たちのような普通の人々の人生は、きっと、もっとハードモードなのだろう。


何が原因でうまくいかなくなったのか、俺の選択がまずかったせいなのか。

これまでの展開を頭で思い浮かべたが、明確な失敗の原因は俺にはわからなかった。


とりあえずウォラ・ギネに出会ってしまうと強引に弟子にさせられ、カミーロと出会ってしまう展開になってしまうので、これだけは避けるように気を付けなければならない。


「こ、こいつ! なんだ? 急に動かなくなったぞ」

「おい、抵抗するな。歩け!」


ああ、ごめんごめん。

ちょっと考え事をしてたんだ。


「大丈夫。ここからは自分で出て行くよ」


俺は兵士二人をこともなげに振りほどき、自ら城門の外に出た。




懐かしい学生服姿に戻り、再び無一文に戻った俺だったが、レベルは45に据え置かれ、取得した解放コマンドもそのままだった。


まさに「強くてニューゲーム」状態なのだが、≪どうぐ≫リストのアイテム類と場所セーブで記録していた≪おもいでのばしょ≫はすべて消えてしまっている。


「はあ、また一からやり直すの面倒くさいなあ……」


テレシアたちとここでパーティを組んでおかないと、おそらく虫魔人との戦いで三人とも殺されてしまう可能性があるし、これは回避すべきではない。


少しの間だけど、ともに旅をした仲間だったし、アレサンドラは結婚寸前までいった間柄だ。

危難に遭うことが分かっていて、見殺しにはしたくない。


俺はまずいつもの通り、学生服を売った金で身なりを整えたが、ザイツ樫の長杖クオータースタッフは購入しなかった。

人気が無い長杖を装備しているとそれだけで人目を引いてしまうし、もしかするとまた何かの縁でウォラ・ギネとの邂逅に結びついてしまう可能性があったからだ。


長杖の代わりに俺が選んだのは、ごくありふれた量産品の「青銅の槍」だ。

槍先は鋳造品のため、尖ってはいるものの触れたら切れるほどの鋭さはなく、長杖に近い使い方ができそうだ。

柄は木製で、全体の長さは長杖より少し短い。


「突かば槍。払えば薙刀。持たば太刀。杖はかくにも、はずれざりけり」


これはウォラ・ギネから教わったムソー流の格言らしいのだが、長杖の技術は様々な種類の武器に応用が利くという意味であるらしい。


「さて、まずは冒険者ギルドだな。冒険者登録して、パーティメンバーの募集チェックをしなきゃならん。ハゲをうまくかわしたり、応募のタイミングとかどうだったか思い出さなきゃないから、マジで面倒くさいな……」

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