第86話 事件発生!
その事件は≪壁画の間≫を出て四日後の深夜に発生した。
実力をつけるため≪壁画の間≫に残って、その周辺で修行することになったテレシアたちと別行動をとることになった俺は、カミーロと共にさらに地下の探索に向かった。
話の通り、
それでもやはり戦闘職ではないので、頑強なこれらの魔物たちを倒すための攻撃手段に乏しく、ほとんど俺が倒すことになった。
傷を負うことも無いので、元
それでも、足手まといにはなっていないだけ助かったし、俺はさっさとカミーロが満足する場所まで到達させて、地上に帰りたかった。
四日で地下六階に到達できて、そのフロアの入り口にあたる部分には再び≪壁画の間≫と同じような広間があった。
だが、広さは≪壁画の間≫の半分ほどで、その壁に書かれた絵は、少し趣が異なった。
それはまるで地獄絵図のような凄惨さで、不気味な絵だった。
地上に溢れ出した魔物たちが人々を襲い、大地の裂け目からは火柱が噴き出ている。
天は荒れ、雷雨は大地を穿ち、それはさながら人類の終末の光景のようだった。
まるで、この先に足を踏み入れることに対して警告でもしているかのような威圧的かつ脅迫めいた作風であった。
カミーロによれば、≪世界を救う者たち≫が到達したのはここまでだったらしい。
当時の目的は、魔王と戦う力を得るためのレベル上げが目的だったため、禁忌に触れることを恐れ、この先には足を踏み入れなかったらしい。
その後、カミーロは一人で、このリーザイアに舞い戻り、長年調査を行っていたのだが、≪壁画の間≫の先に単身で進むのは困難であったため、地上部分の発掘などを中心に研究するしかなかったらしい。
カミーロは再びこの場所まで来れたことに感激し、俺の強さに感嘆するとともに、何度もお礼の言葉を述べていた。
その日は一旦、ここで野営をし、翌日、改めてこの地下六階の調査に取り掛かることにした。
見張りを交代ですることにし、まずは俺が先に眠ることになった。
そして、事件は起こってしまったのだ。
深夜、乳首のあたりに生暖かいものを感じ、目を覚ますとそこには全裸のカミーロが覆いかぶさって来ていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと! カミーロさん、あんた何してるんですか!?」
カミーロは両方の手首を掴み、さきほどまでどうやら俺の乳首に舌を這わせていたようだった。
「すまない。君のかわいい寝顔を見ていたら、どうにも抑えきれなくて」
「いや、あんた、聖職者でしょ? こんなことしていいはずが……」
「元・聖職者だよ。それに聖職者だって人だ。性欲はある。それにこれはそうした
髪も髭も伸ばし放題のカミーロは、腋毛も伸ばし放題だった。
今も鍛錬を続けているのか、引き締まった肉体に加齢臭を漂わせ、身体といきり立った肉棒をぐいぐいと押し付けてくる。
そしてキスしようとしているようだった。
「カミーロさん、やめてください。俺は別に男同士の恋愛を否定はしませんが、こういうのは良くないですよ。無理矢理、寝込みを襲ってくるとか……」
「大丈夫。目を閉じていてくれれば、すぐに終わるよ」
ぐうっ、駄目だ。カミーロの唇が、俺の唇にタッチダウンを決めそうだ。
「やめてくれって、言ってるだろっ!」
その時はもうただ必死で、頭が真っ白になってしまっていた。
何とか引き離そうと、俺は、≪ちから≫65の全力でカミーロを突き飛ばしてしまったのだ。
カミーロの長身は、あっけなく壁まで吹き飛び、凄い音をたてて激突した。
室内が大きく揺れ、壁画には亀裂が入り、カミーロの頭がぶつかったらしい場所には血が付いていた。
壁に打ち付けられたカミーロは、そのまま跳ね返り、まるで糸が切れた操り人形のように、うつ伏せになって倒れてしまった。
そして、後頭部からはどくどくと血が流れ、ピクリとも動かなくなっていた。
「カミーロさん、ごめん。ちょっと、やり過ぎた」
俺は慌てて駆け寄ると、カミーロを仰向けにした。
顔面血だらけになったカミーロは白目を剥き、そして心臓と呼吸は止まっていた。
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