第67話 廃墟都市リーザイア
ウォラ・ギネの古い友人カミーロに案内され、廃墟都市リーザイアにやって来た。
高台から見下ろした時は、その都市のあまりの広大さに驚かされたのだが、こうして近づいてみると、今度は城壁や城門、その向こうに見えるひとつひとつの建造物の大きさと歴史がかった独特の雰囲気に思わず驚嘆の声を漏らしてしまう。
中でも一番目を引くのは、都市の中央にそびえ立つ巨大な女神リーザの像だ。
像とはいっても、東京スカイツリーとどちらが高いのかというほどの超高層建造物だが、内部は塔のような形状になっていて、地上の入り口から、中を昇っていける構造になっているらしい。
このような建造物を作れる時点で、かなり高度な文明であったと思うのだが、滅びてしまったのはなぜだろうか。
「さあ、まずは僕がいつも調査の拠点として使っているあの女神像まで向かおう。あの南門からだと巡礼者たちの目についてしまうから、中に入るのは少し先の城壁が崩れた場所からにしよう。別に都市の中に入っていくところを見られても問題は無いけど、下手に目立ちたくはないからね」
カミーロが言った通り、三十人ほどの集団が南門から少し離れた場所に集まっており、そこから見える女神像に向かって、祈りを捧げたりしている。
テレシアによると、この廃墟都市リーザイアは女神リーザを信奉する者たちにとって三大聖地になっており、各教会では希望者を募って定期的に巡礼のツアーのようなものが組まれているらしい。
信心深い富裕層などがそれに参加しているらしく、建物の修繕費などの貴重な財源になっているのだとか。
リーザイアに住み着いた魔物たちは都市外には決して出てこないので、女神像を正面から見ることができるこの南門前が絶好の見物場所になっているらしい。
「ふーん、たしかにあの女神像は見ごたえあるもんね。でも、そんなに重要な聖地ならなんで魔物だらけのまま放置しているんだろう? 」
「あなた本当に何も知らないのですわね」
テレシアが呆れた様子で俺の顔を見た。
ラウラに比べると少し大人びていて、可愛いというより美人といったタイプだが、その性格と行動の残念さから、どうにもちぐはぐな印象を受ける。
女性としては短めの金髪に、青い目。
聖職者であることから、髪も帽子で隠し、露出がほとんどない服を着ている。
「よろしいですか。リーザイアの魔物はいくら退治しても、決していなくなることは無いのです。我らリーザ教会も、過去、聖地奪還を目指して何度もこの都市の魔物を一掃しようとしましたが、際限なく湧き続ける魔物の強さと多さに、ついには断念し、そして今日の状態のまま放置することを余儀なくされたのです」
「ふーん、諦めちゃったんだ。信仰心というのも大したことないんだね」
「何を言うのです! この地を奪還すべく、どれだけ多くの先人たちが殉死することになったか……」
着衣の下のおっぱいが揺れたのがわかるほどのすごい剣幕でテレシアが詰め寄って来た。
やっぱり大きさはアレサンドラだけど、柔らかそうなのはテレシアかな?
「まあまあ、喧嘩はしないで。テレシアさんの言うとおり、このリーザイアを奪還するのはなかなかに至難だよ。かつて僕ら≪世界を救う者たち≫も試みたことがあるが、成し遂げることはできなかった。このゼーフェルトの歴代の王たちも悲願として掲げ、幾度となく軍を差し向けたが同様の結果だったんだ。」
カミーロが仲裁に入り、説明を付け加えてくれた。
「そうなんですね。軽率な発言でした。テレシアもごめん……」
謝ってみたものの、俺にはどうにも魔物が湧き続けるという現象がいまいち理解できていなかった。
ゴブリンやウルフ、あのイナゴモドキや虫魔人でさえ生物であるようにしか思えなかったが、この廃墟都市リーザイアの魔物たちはそれらと違うのだろうか。
エッチもしないで子孫を増やせるわけもないし、見渡す限り廃墟しかないこんな場所で食料や水などはどうしているのだろう?
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