第37話 遭遇、遭遇!

なるほど、こりゃ便利だ。


解放コマンド≪しらべる≫を使えば、似たような草であっても容易く判別が可能だ。


癒し草は専用の鎌を使って上の部分だけを刈り取れば、その強い生命力から数日後には再び生えてくる。


俺は背負い籠いっぱいの癒し草を採集できたので日暮れ前に王都に駆け足で戻ることにした。

商品輸送の仕事のおかげで馬にも乗れるようになったが、正直、走ってもそんなに差はない。

日帰りできる距離であれば、馬を借りる手間とお金が浮くと考えたのだ。


群生地のある森から街道に出ると、遠目で馬車がゴブリンに襲われているのに気が付く。


「おっ、ラッキー。ついでに討伐依頼こなしておくか」


俺は≪どうぐ≫のリストの中から、ザイツ樫の長杖クオータースタッフを取り出し、馬車に向かって駆け出した。


ゴブリンの数は、馬車の影に隠れている奴がいなければ、十六匹。


馬車の護衛は冒険者たった一人か。

見た目はおっさんだが、ベテランというわけでもなさそうで動きが鈍い。


ハルバードを勇ましく振り回しているが、空振りばかりしている。


俺は走る勢いのまま、一番近くにいるゴブリンの頭をひと突きにし、流れる動きで次々と屠っていく。


こんな雑魚、本気を出すまでもない。

軽く、流すか。


「おお、同業者か。助かる」


ハルバードのおっさんが声をかけてきたが、無言で頷き、次の標的を杖先で殴る。


手間取っていると、牽き馬が殺されてしまう。


「多勢に無勢。助太刀するよ!」


何処から現れたのか聞き覚えのある女性の声に、思わずぎょっとしてしまった。


その女性は、荷のついた馬から降りると、大剣を軽々振り回し、ゴブリンを狩り始めた。


赤い髪をなびかせ、半ば露わなおっぱいも揺れている。


それは紛れもなくアレサンドラだった。


俺とアレサンドラの共闘でその場にいたゴブリンのほとんどは倒され、残りは這う這うの体で逃げ去っていった。

ハルバードのおっさんがそれを追っていったが、そっちは放っておこう。


「君、若いのにやるね。武器も変わってるし、面白い戦い方だった。名前は?」


「あっ、名乗るほどのものではないです。馬車が襲われていたのが見えたんで……」


なんで、アレサンドラがここにいるんだ。

前の記録では、出会うのは翌日のギルドの酒場だったはずなのに……。


俺は、討伐の証拠となるゴブリンの耳の回収をあきらめ、そそくさとその場を離れた。


相変わらず美人だったし、何よりあんな屈託のない笑顔を久しぶりに見た気がする。


ほんの少しだけ寄りを戻したい誘惑にも駆られたが、それを上回る後ろめたさが俺をその場から去らせた。



冒険者ギルドに急いで戻った俺は、癒し草の納品を済ませ、メリルにパーティ応募の件を尋ねた。


どうやら先方も少し前にここに顔を出したらしく、明日面接してもらえることになった。

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