第28話 大事なことを思い出した

グラッド師匠に手合わせ願う前に、≪ぼうけんのしょ≫の部屋に行き、一応セーブしておこう。



「セーブポインターよ。よくぞ参った。吾輩は、記帳所セーブポイントの妖精、名前は……。おい、ちょっと善いか?」


「えっ! 名前、思い出せたの?」


「違う!名前はまだ思い出せぬが、突然、大事なことを思い出した」


「何、大事なことって?」


妖精の爺さんは、胡坐の上の三毛猫を追いやり、一枚板風になっていた広い座卓の上に載っている≪ぼうけんのしょ≫の一番最後のページをめくってみせてくれた。



セーブ特典ポイント:11


ポイント交換リスト


場所セーブ(使用回数制限なし):10ポイント

人セーブ(使用回数制限なし):10ポイント

「どうぐ」解放:5ポイント

「しらべる」解放:5ポイント



「……? 妖精の爺さん、これ何?」


「これは≪ポイント交換リスト≫だ。どうやら、お前がセーブを一回するごとに1ポイントずつ溜まって、それとこのリストのものは交換できるらしい。このページがいつから存在していたのかはわからんが、今、おぬしの間の抜けた顔を見たら急に思い出した」


「そうなの? 何か大切そうなことじゃん。他にも何か忘れていることないよね? 俺、ただでさえこのスキルポインターとかいう、訳の分からない≪職業クラス≫のせいで無職無職って馬鹿にされて、肩身が狭い思いしてるんだよ」


「他に忘れていることなどない!……と思う。それよりどうする? セーブの前に交換していくか? 」


「いや、交換するも何も、これが何なのかわからないじゃん」


上ふたつは、今所持してるポイントのほとんどを使い切ってしまうし、下の二つだってお試しで交換するには高い気がする。


1ポイントのやつとかあれば良かったけど……。


「交換してみればわかる。ステータス欄に、獲得した内容の説明が表示されるからな。ちなみに交換できるものはポイントがたまっていくほどに増えていくようだから、交換の際はよく考えて行うことだな。どうする? 早く決めろ」


いや、その品物が何だか分からないものを買う人がいないように、ポイントに限りがあるなら慎重にならざるを得ないだろ。


「チッ、小心者が……」


「爺さん、今なんか言った?」


リストを眺めていて、見て無かったが確かに妖精の爺さんの声だった気がする。


だが確かに、これで新たな力が得られるなら試してみない手は無いような気もする。


「うーん、じゃあ5ポイントで≪「どうぐ」解放≫と交換してみるかな」


「ほい、毎度ありじゃ」


リストの中の『「どうぐ」解放:5ポイント』の文字が消えて、俺の体が白く一瞬光った。

セーブ特典ポイントも6に減ってしまう。


そして、即座にステータスをオープンさせてみると、このようになっていた。



名前:雨之原うのはら優弥ゆうや

職業:セーブポインター

レベル:12

HP72/72

MP38/38

能力:ちから21、たいりょく21、すばやさ21、まりょく12、きようさ21、うんのよさ12

スキル:セーブポイント

≪効果≫「ぼうけんのしょ」を使用することができる。使用時は「ぼうけんのしょ」を使うという明確な意思を持つことで効果を発揮することができる。


解放コマンド:どうぐ

≪説明≫自らに占有権があるアイテムを≪どうぐ≫の中に収納できる。「コマンド、どうぐ」と有声無声関わらず、意志を持って唱えると使用可能。所持数制限なし。使用回数制限なし。



妖精の爺さんに馬鹿にされるかもしれないが、説明を呼んでもよくわからん。

誰かに見せて、相談しようにも≪職業クラス≫同様、スキル欄以下も俺と妖精の爺さん以外には見えないようなのだ。


しかも今度は≪解放コマンド≫とかいう訳が分からない項目だし、これもきっと見えないのだろう。


まあ、後で自分で試してみるしかないか。


とりあえずセーブだ。


ぼうけんのしょ1 「野外で朝まで燃えた二人」

→「身の程知らず、強者に挑む」

ぼうけんのしょ2 「ヒモ野郎、彼女に寄生する」

ぼうけんのしょ3 「はじまり、そして追放」



セーブを終え、俺はいつのまにか床の間が造られていた≪ぼうけんのしょ≫の和室を後にした。

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