第21話 ノークラスなのに、ダブル?
「ア、アレサンドラ! ちょっと、いいかな。これ見てよ」
名前:
職業:セーブポインター
レベル:6
HP27/27
MP13/13
能力:ちから8、たいりょく8、すばやさ8、まりょく6、きようさ8、うんのよさ6
スキル:セーブポイント
≪効果≫「ぼうけんのしょ」を使用することができる。使用時は「ぼうけんのしょ」を使うという明確な意思を持つことで効果を発揮することができる。
あの不思議な≪ぼうけんのしょ≫の部屋から現実の世界に戻った俺は、ふと体の調子が異様に良いことに気が付いた。
商隊が出発準備をする手伝いをしていたのだが、身体が軽く感じ、重い野営道具などを荷馬車に仕舞うのがとても楽だったのだ。
気になってステータスを確認してみたところ、レベルが一つ上がっていた。
俺は嬉しさのあまり、その場で飛び上がってしまい、思わず喜びの声を上げた。
そうして飼い主に尻尾を振って駆け寄る犬のような落ち着きの無さで、アレサンドラの元へ駆け寄り、声をかけたわけである。
「レベルが上がってる……」
俺のステータスを見たアレサンドラは驚きを隠さなかった。
口をぽっかりと空けて、目の前に現れた俺のステータスボードに見入っている。
「いや、朝起きた時はレベル5のままだったんだけどさ。さっき確認したらいきなり上がってたんだよ。俺のレベルアップってさ、みんなよりも遅れてくるのかも!」
「いやいや、そんな話は聞いたことも無いよ。こっそり野営を抜け出して敵を倒しに行ってた様子も無かったし……」
そう、昨晩はクラッセ商会が焚き火に放り込んだ魔物除けの香のおかげで、夜間の襲撃は無く、戦闘は行っていない。
「それに変なのはレベルが上がったことだけじゃないよ。こんな能力値の上がり方、少なくとも私は見たことが無い。全能力値が満遍なく上がって、しかも一度に2ずつ上がってる能力が複数ある。魔法使えないはずなのに魔力も上がってるし。
アレサンドラによれば、レベルアップ時の能力上昇は、自らの
アレサンドラの
ふたつ同時に上がれば運が良く、大抵どちらか一つと他の能力が上がるなどと言った感じで、一度に2上がることなど経験がないとのことだった。
これがさらに無職だと、レベルだけ上がって、能力が何も上がらないことすらあるらしいのだ。
「ま、まあレベルが上がったのは私も嬉しいし、今日もレベル上げがんばろう。商隊もそろそろ出発するみたいだし」
目的地であるプレメントの街までは荷馬車で三日かかる。
俺は毎朝、慎重に≪ぼうけんのしょ1≫に最新の記録をセーブし、護衛任務とレベル上げに勤しんだわけだが、このような奇妙な現象は連日続いた。
魔物退治をしても俺のレベルは一向に上がらず、翌朝、≪ぼうけんのしょ≫の部屋から帰還するとレベルが上がっているわけである。
プレメントの街に着くころには俺のステータスはこうなっていた。
名前:
職業:セーブポインター
レベル:8
HP37/37
MP20/20
能力:ちから12、たいりょく12、すばやさ12、まりょく8、きようさ12、うんのよさ8
スキル:セーブポイント
≪効果≫「ぼうけんのしょ」を使用することができる。使用時は「ぼうけんのしょ」を使うという明確な意思を持つことで効果を発揮することができる。
「もうどうなってるのか、私にはさっぱりわからない。完全に無職の能力値じゃないよ。だって、≪ダブル≫が四つもあるんだもん」
そう困惑の声を上げたのはアレサンドラだ。
≪ダブル≫というのは、二桁の能力値をそう呼ぶらしく、一般職と戦闘職を見分けるひとつの指標にもなっているらしい。
「あ、あのさ、俺なりに推理してみたんだけど、こういうことは考えられないかな。俺のレベルアップって、人よりも遅れてくるじゃない。その遅れてくる時間の分だけ、利子みたいなのが付いて来るんじゃないかな」
「色々とおかしいことだらけで、私なんかじゃもうさっぱりだよ。でも、よかった。元気なかったけど、ようやく笑顔が戻ったね」
アレサンドラは俺を引き寄せるとおでこにキスをくれた。
女の子の唇ってどうしてこんなに柔らかいんだろう。
額から伝わってくる感触が、俺の心を幸せでいっぱいにしてくれた。
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