第18話 レベルアップって何だ?
異世界勇者たちのお披露目を見た翌日、俺は出発前に念のため、≪ぼうけんのしょ≫の≪一番≫に現状を記録することにした。
ぼうけんのしょ1 「無責任な夜を越えて」
→「同郷出身者の晴れ姿に指をくわえる」
ぼうけんのしょ2 「ヒモ野郎、彼女に寄生する」
ぼうけんのしょ3 「はじまり、そして追放」
例の部屋には変化は無かったが、妖精の爺さんの服装が継ぎ接ぎがあった粗末な服から、少しまともな服装になっていた。
その事に触れると、例の如く「吾輩が望んだことではない」とそっけない返事であった。
そして改めてステータスを確認してみると、またレベルが一つ上がっていた。
名前:
職業:セーブポインター
レベル:5
HP23/23
MP10/10
能力:ちから6、たいりょく6、すばやさ6、まりょく5、きようさ7、うんのよさ5
スキル:セーブポイント
≪効果≫「ぼうけんのしょ」を使用することができる。使用時は「ぼうけんのしょ」を使うという明確な意思を持つことで効果を発揮することができる。
「……不思議だな。魔物も倒してないのに本当にレベルアップしてる……」
嬉しくなって、ステータスを見せてみたところ、アレサンドラが妙な顔をした。
「えっ、レベルって魔物倒さないと上がらないの?」
「当り前だろ。そもそもレベルって言うのは狂暴な魔物や邪悪なものと戦うために女神さまがくださった加護なんだ。魔物を倒さない者には与えられっこないよ」
「じゃあ、街の人は? 食堂で料理作ってる人とか、行商人みたいな人たちはレベル1なの?」
「まあ、一概には言えないけど、王都みたいに比較的平和な街なら、そういう人も割と多いんじゃないかな。まあ行商人とかなら魔物に遭遇する機会もあるから、レベルが上がってたりすることはあるけど、それでもうちら冒険者みたいには強くないよ」
そうだったのか。
レベル1で、能力値オール1だった俺があんなにも白い目で見られたのは、そもそもが戦闘要員としてみなされなかったからなんだ。
だから街に放逐された。
味方として無用なのは当然だけど、脅威にすらなりえない無害な存在と見なされたんだ。
「じゃ、じゃあこの
「
「なんで?」
「素の能力値に、
色々と初耳すぎて、頭が追い付いて行かない。
じゃあ俺の職業、セーブポインターの加護は何だろう。
「大丈夫。無職でも私はユウヤを見捨てないよ。きっと立派な冒険者に育ててみせる」
無職、無職と連呼されると本当に自分がダメ人間みたいに思えてくる。
「違う、俺は無職のヒモじゃない。本当はセーブポインターなんだ」と説明してみても、その文字が見えないんじゃどうしようもない。
しかも、俺自身、セーブポインターが何なのかわかっていないのだ。
セーブポインターなどという職業なんて聞いたことが無いし、ゲームとかでもなかったような気がする。
「でも、そうなると問題になるのが成長限界だな……」
またなんか新しい概念が出てきた。
「……それはなんなの?」
「文字通り、レベルアップの限界さ。職業とか個人の適性によって、ある一定まで行くと魔物を倒してもレベルアップしなくなるんだ。これがあるから、商人や農民と言った職業を持って生まれた人は最初から冒険者を目指さない。レベルアップ時に上がる能力値も少ないからね」
「……じゃあ、これが最後のレベルアップってこともあるわけか」
「いや、成長限界がレベル一桁ってまずないから。大昔の人が色々と試したらしいけど、農民でも10くらいまでは行くらしいよ。そんなに強くなれなかったみたいだけどね」
なるほど、話を総合すると、強くなるには魔物を倒してレベルアップしなければならず、レベルアップには
それがこの異世界の
「あのさ、ちなみにアレサンドラのステータスはどんな感じなの?」
「私のか? そういえば見せてなかったけど、自信を失ったりするなよ。なんといってもキャリアが違うんだからな。ステータス・オープン」
名前:アレサンドラ
職業:女戦士
レベル:31
HP153/153
MP28/28
能力:ちから25、たいりょく28、すばやさ16、まりょく7、きようさ11、うんのよさ10
スキル:狂戦士化
≪効果≫理性と引き換えに超人的な戦闘能力を発揮する。ただし、敵味方の区別が無くなり、それは効果時間終了まで続く。
おお、すげえ。
俺の貧弱な紙ステータスとは雲泥の差だ。
マジで強そう。
しかもスキルが≪狂戦士化≫って怖すぎる。
アレサンドラを怒らせたらどうなるか想像して、俺は血の気を失ってしまった。
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