第6話 夜道
2020.7
満腹になった俺は夜道を歩く。
またすこしだけ明るい夜19:00。
美味かったなぁ。
爺さん元気だったな。
少し遠回りして帰るか―。
なんて思っていた時。
「…せーん!…すみませーん!!」
びっくりして振り返る。
同い年くらいの女性が息を切らし止まった。
「…っあの!落とし物…」
手には青いハンカチが握られていた。
漫画か?漫画みたいだな。これが出会いなのか!?
でも漫画じゃない。
なぜなら…
「あの、これ、…すみません。
俺のじゃない…です。」
「えっ。」
そう、俺のハンカチではない。
「ラーメン屋さんから追いかけてきてくれたんですか?」
「はい!私カウンターで食べていて、帰り際席の椅子に落ちていて、
お爺さんに聞いたら預かっておくよって言われたんですけど、
食べてるときにお兄さんの姿見た時そのジャージ同じの持ってるなぁって、
思ってみてたんです!だからわかるかもって言って飛び出してきちゃって、
それで…!」
間髪入れずに彼女がしゃべるため、俺は圧倒されてしまった。
「どうしよう!違う人のだったんだ!返してきます!」
彼女が今にも走り出そうとするので俺は笑った。
「ねぇ、ごめんなさいちょっと…面白くて」
「えっ?何がですか?え?」
彼女はなんだこいつはという顔で見てくる。
「いや…なんでもないす。
あ、じゃあ俺返しておきますか?近所なんで。あのラーメン屋」
「いや…あ!そしたら、今一緒に戻りませんか??」
「あ、え、はい。」
あまりにも唐突すぎる彼女に俺は付いていくしかなかったが、
内心漫画によくある”おもしれー女”なのかもという期待が募った。
来た道を戻ることになったが、
遠回りをしたい俺にはちょうど良かったんだ。
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