果て
「で、叔父さんが苦手としているお祖母さんに関係をばらして、お母さんと叔父さんの人生を終わらせてやろうとしたと」
そう、この子の言う通りだ。不発に終わったけれど。
半年もかけた計画は失敗した。祖母に辿り着く前に叔父に全てを潰された。
叔父の妻はユカの打ち明け話を全く信用しなかった。
母親は腹を抱えて笑った。
「そんなことで私を黙らせられると思ったの?」
4年前、「どこにも行きたくない」と訴えたユカの気持ちを、親戚の誰にも会いたくないと言っていると母親は曲解していた。ユカの言葉を祖母にどう伝えたのか
「ユカちゃんがそんなに嫌なら」
と、孫に会うことを遠慮していた。住まいは知っていても連絡先は知らなくて、電話一本満足にかけられないことがこんなにも足を引っ張ると、ユカは気付かず行動に移したのだった。
それならばとあの時の医師に掛け合おうとしたが、徒労に終わった。ユカがモタモタしている間に叔父は鉄壁の牙城を築いていて、それに気付いたときには手も足も出せなくなっていた。
「精神に欠陥があると思う。専門医に診てもらった方がいい。妄想が酷い」
身に覚えのない話は一瞬にして、身の回りにいる大人全てに伝わっていた。
エリートと呼ばれる叔父の大人としての威力に、中学生のユカが対抗できるわけがなかったのだ。
「お祖母さんに会えないままだったね」
あの祖母からどうしてあんな生物が2つも生まれたのかと首を捻りたくなるほど、貞淑で上品な人だった。ユカのことをとても可愛がってくれた。顔を合わせることがなくなったから、祖母の温もりは既に忘れてしまっていたのだけれど。
ユカが事故死したと知って倒れそのまま病院に担ぎ込まれた祖母は、今も病室で朦朧としている。この子が見せてくれた映像はユカにとって衝撃的なものであった。
「安易に考えすぎなんだよ。叔父さんが悪戯してたことお母さんは知っていたでしょ?お祖母さんはきっと君の味方になってくれた。逃げ道はあったんだよ、ちゃんと」
「相談したら、お祖母ちゃん聞いてくれたかな」
「さぁね」
男の子は後ろ手を組んでユカを後方に見る。
「試してもいないことを今になって考えたってさ。お祖母さんは君に頼ってもらえなかったことを猛烈に悔やんでいるよ」
「子育てに失敗して、拠り所は君だけだったんじゃないかな」
「お祖母ちゃん、あいつの本性知ってた?」
声を絞り出す。その子は微かに頷いた。
「君に手を出すとは、考えていなかったようだけど」
「娘がパンパンだなんて誰にも言えねー」
「アソコを武器にするとはねぇ。さすが私の娘」
あの日、母親はユカを侮辱した。
発作的に窓から飛び出した娘の背中も。
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