賭けに出る

 休日の14時過ぎ。母親から探った叔父の新居。叔父は4歳年下の妻を娶り、2人の娘を持つ父になっていた。賭けに出る。あんたがカギなんだ。


「おお、どうしたの」


豪奢なマンションの一室。少し年齢を重ねた叔父は以前のように微笑んで見せるが、その眼光に途方もない非情さがあることに、14歳のユカは気付いた。


(いける!)


意識の底でそんなことを考える。成長したユカに見向きもしないのではと聊か不安だったのだ。


「近くに用事があって来たんだ。たっくんの顔見に来た」


ニコリ微笑んで見え見えの嘘を吐く。瞬間叔父が見せた淫猥さは稲妻のような凄味があった。

「そうなの。ゆっくりしていきなさい」

叔父も言ってにっこり笑い、初めて会う妻や幼い娘らを紹介した。茶を出されもてなされ幼子の相手をしてと、暫しの時を過ごす。


「あ、もうこんな時間。帰らなきゃ」


急に思い出したといった雰囲気を醸しつつ、叔父とその妻に帰宅の意志を伝える。


「送るよ」


案の定、穏やかな声が耳に届く。

「え、悪いし」

「あらいいじゃない。送ってあげて」

妻が叔父に声をかける。目論見通りの反応に容易さを感じた。

「えっと・・・じゃあ。お言葉に甘えて」

妻の澄んだ瞳が煩わしい。


部屋を出てエレベーターに乗り込む。どちらも無言だ。

1階に下り駐車スペースへ。黒のアウディの前で止まり、叔父は後部座席に座るよう短く指示した。

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