第95話 冒険者対BIG4 後編

私、五条院椿は、『黄昏の魔女』である。


しかしそれは、BIG4の前では、何の意味もありませんでした。


最強、無敵。


一つや二つではきかない程の、格の違いを見せつけられた私達。


恐ろしい……。


本当に、恐ろしい人達です。




次の生贄は、風魔忍軍の四天王の一人、『増長天』の霧隠永徳さん。


風魔忍軍の四天王と言えば、『多聞天』の風間蔵人さん、『広目天』の加藤宗玄さん、『持国天』の服部浅利さんと、『増長天』の霧隠永徳さんの四人ですわね。


大蝦蟇に乗り、遁術を自在に操る風魔忍軍の頭領、『多聞天』。


狒々に乗り、無双の剣術を操る『広目天』。


蛟に乗り、幻術を得意とする『持国天』。


そして、大虎に乗り自己強化の忍術を得意とする『増長天』。


忍者というJOBはAGIが恐ろしく高いですから、私のように、詠唱を必要とする術師タイプには滅法強いでしょうね。


しかし……、相手はあの『アルマトゥーラ』、ヴォルフガング・ラインハルトさんです。


最高のタンクだそうですが、その実力は……?


「ぐはははは!よろしく頼むぞ!」


永徳さんは、スキンヘッドの、金剛力士像のような立派な体格の殿方です。お顔も、太い眉毛と大きなギョロ目が少し怖いですね。


「む、よろしく」


一方でヴォルフガングさんも、茶髪のオールバックに、まるでハリウッド映画に出てくるヒットマンやマフィアのような鋭利な顔つき。そして、2mを超える身長と鍛え抜かれた肉体を持つ殿方です。


さあ、どうなるか……?


まず仕掛けたのは『増長天』、永徳さん。


「『ファンクション:酸鉄砲の術』!!!」


永徳さんの胸が、風船のように膨らんだと思うと、永徳さんの口から強酸の水鉄砲が放たれました。


その酸の飛沫がかかった地面は、一滴溢れただけでも拳大のクレーターを作るほどの、あり得ない強酸でした。


しかし……。


「無駄だ」


あれは……、最上級レアスキル、自動防壁!あらゆる攻撃に対して、自動的に障壁が張られるスキルですね!


障壁は強酸を弾きました。


その次の瞬間、障壁が力場となって、永徳さんに襲いかかる!


「ぐぬおおおお!!!」


バレーボール程の力場が、音速で永徳さんに迫る!それを、永徳さんは、腕を交差させて防いだ!


しかし、その勢いは強く、二、三メートルほど後退させられる永徳さん。


「やるなあ!」


「そうか?」


「『ファンクション:口寄せの術』!!!」


『ゴアアアアッ!!!』


体長六メートルはありそうな大虎がドロンと煙と共に現れました。


「行けぇ、虎丸ゥ!!!!」


大虎が思い切り地面を踏みしめて、体当たりをする。


トラック並みの体格の虎の体当たりとなると、常人なら、肉体はバラバラになるでしょう。


「む」


しかし、その体当たりを片手で受け止めるヴォルフガングさん。


しかも、あれだけの一撃を受けておきながら、一ミリも後退していない。


物理的にありえない現象ですね。


ですが、魔法というか、魔力がそれを可能とします。


もう、この世界では、物理法則は通用しません。


「ならばぁ!!!『ファンクション:超力巨体の術』ゥゥ!!!!」


うわ……、永徳さんの肉体が膨れ上がって、二十メートル程の巨体になりました。


物理法則、やっぱりありませんね。


あれ、幻術とかではなくて、本当に実体があるらしいですから、もう本当に狂っています。


「そしてぇ……、『ファンクション:爆轟拳力殺』ゥゥゥー!!!!」


巨大化した永徳さんの両腕が黒く染まり、鋼鉄と化しました。そして、その金剛の両腕を思い切りヴォルフガングさんに叩きつけ……。


「ふはははは……、あ?」


「む……、中々だな」


ヴォルフガングさんは、またも、片手で受け止めていました!!!


「終わらせる。『プロビデンス:ラ・カンパネラ』」


金色の巨大な力場の壁が、ヴォルフガングさんを中心に広がる!


「ぐわああああーーーっ!!!!」


『ギャオオオオオ!!!!』


永徳さんと大虎は弾き飛ばされて闘技場の壁の防壁と金色の力場に挟まれて気絶しました。




その後も、BIG4の方々と天海街の世界最高レベルの冒険者との戦いは続き……。


冒険者達が、完膚なきまでに叩きのめされ、全員倒されてから解散となりました。


……恐らくは、最近増えてきた、私達のような外部の冒険者に対する示威なのでしょうけれど。


私は、最初から、彼らに逆らう気は全くありませんでした。


大前提として、戦わずして百パーセント負けてしまうな、と予想ができたということもありますが……。


……それ以前に、私は、この天海街の統治システムや権力構造に文句がありませんから。


最初から、争う気も、逆らう気もないのです。


まあもちろん、何かあった時に表立って恨まれるのは天海街の統治者である「元老院」で、元老院を裏で操っているというか、元老院が逆らえない存在である羽佐間さんが裏にいる……という構造は、普通にまともではないとは思いますが。


でも、それでもこの街は、今世界で一番上手く回っています。


歪な権力構造は良くはありませんけれど、羽佐間さん自身、ある程度の社会の存続を欲していますから、圧政や支配に興味はおありでないようですし……。


今回の催しも、武威を示して、天海街への侵略や支配を企てる他国の冒険者に警告をしている訳で……、結果的に、この街が安定すると言えはするんですよね……。


難しいところです……。


因みに、BIG4対上級冒険者のトトカルチョは、元締めがBIG4で大儲けしていた模様。


何というか、本当に抜け目がないと言うか……。

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