第87話 山梨県芽久里市
山梨県芽久里市。
いや……、本当にもう……、全く訳が分からないのだが、山梨県に忍者が湧いた。
芽久里市は……、風魔忍者の里があった地域で、忍者で町おこしをしていたそうだ。
忍者アトラクションや、スタントマンのレッスンスタジオなどがあり、有名な体操選手も輩出した、忍者の街である。
確か、数年前にやっていた、日曜朝のスーパーヒーロー、覆面ライダー『シノビート』のロケ地にも選ばれたりしたらしいな。
自然が豊かで、忍者屋敷なども現存している。歴史的価値も高い街。
現在の人口は十万人ほど。
現在は、自らを風魔忍軍と名乗る集団が街を守っているらしい。
これは、俺が伝え聞いた、忍者達のこれまでである。
風間蔵人という男がいる。
一言で表すなら、輝く美青年。
三年前の、覆面ライダー『シノビート』の主演俳優に抜擢された、元スタントマンの男だ。
歌って踊れるアイドル俳優、子供達のヒーローにして、奥様方のプリンス。
輝く白い歯と、少し癖のある茶髪、目元の黒子がチャームポイントのイケメン俳優である。
そんな蔵人の家系は、風魔忍者の家系であり、芽久里市最大のアミューズメントパーク、『忍者ランド』の経営者の孫。
だが……、流石に、現代社会において、本物の忍者ってことはない。
いや、なかった。
『NAME:風間蔵人
TITLE:多聞天
RACE:人間
AGE:24
SEX:男
JOB:忍者
LEVEL:56
HP:158
MP:287
STR:130
DEX:181
VIT:107
AGI:245
INT:15
MND:101
LUK:10
CHA:17
SKILL
刀術(中級)
格闘術(下級)
投擲術(中級)
忍術(上級)
幻術(下級)
口寄せ(中級)
空歩(中級)
瞬動(中級)
敏捷増大(中)
生活魔法
鑑定』
子供達のヒーロー、シノビートの風間蔵人は、シノビートの撮影が終わって以来、忍者ランドの方で働いていた。
シノビートは、最終話で主人公がシノビートへの変身能力を失い、普通のアルバイターに戻るシーンが描かれているので、子供達に変身してと無茶振りされる心配はない。
今日も、忍者ランドで、正義の風魔忍者軍団が悪の忍者軍団と戦う内容の劇をしていたところだ。
今は、シャワーで汗を流し、忍者ランドのスタッフとして子供達の相手をしている……。
そんな時に、忍者屋敷の方へ向かってみると、ぷよぷよしたスライムのようなものが見えた。
忍者屋敷の裏側をふと、見てみる蔵人。
すると……。
「なっ?!あ、穴が開いてる!」
目の前でダンジョンができたのだった。
そう、世界崩壊である。
しかし、世界崩壊とまだ気づかなかった蔵人は、好奇心半分、子供達の安全のために、忍者ランド内の不審な洞窟を探索する。
「これは……、スライム?」
蔵人も若者だ。
テレビゲームなども人並みにやった。
目の前のそれが、スライムという雑魚モンスターであることを察した。
「倒せってことか……?やあっ!」
蔵人は、スライムを踏み潰す。
するとどうだろう。
『レベルアップ!』
蔵人の脳内に声が響いた。
「そういうことか!レベル上げるぜ!」
そして、ダンジョンコアを破壊して、忍術スキルを習得した蔵人は、ダンジョンから出た。
それと同時に、世界中でモンスターが暴れていることを知る。
忍者ランドにも、モンスターが侵入して、暴れ始めていた。
「きゃああ!」
「助けて!」
「うわあああ!」
忍者ランドのスタッフである忍者達は、人々を集めて、忍者屋敷などの建物の中に避難させていた。
「なんだよ……、これは……!!!」
風間蔵人はヒーローだ。
人々の助けを求める声を聞いて、弾かれたように飛び出した!
「分かる、分かるぞ、忍術の、スキルの使い方が!」
「た、助けて!!」
逃げ遅れて倒れた子供に、今まさに、ナイフを持ったゴブリンが襲いかかっている!
「『ファンクション:風遁風手裏剣』!!!」
『ギィイヤアア!!!』
モンスターを蹴散らしながら、逃げ遅れた子供を抱える蔵人。
「もう大丈夫だ、助けに来たよ」
「あ……、シノビート!」
その後は、蔵人は、忍者ランドの忍者博物館にある忍者刀や忍者道具一式を持ち出して、街中を巡って、人々を救った。
まさに、蔵人は、本物のヒーローだった。
やがて、忍者ランドのスタッフや、近所のスタントマン育成場のスタントマン達も、忍術スキルを習得し、街を守ったのだ。
その上、変則的なテイムスキルである口寄せも習得し、大蝦蟇を召喚できるようにした。
大蝦蟇に乗って、刀を持って戦う蔵人、シノビートは、今日も人々のために戦う、ヒーロー忍者である。
とは言え、流石のヒーローも、何もないところから食料は出せない。
この辺りは冬も雪が降らないから、どうにか生き残れてきたが……、飢える子供達を見て、暗澹たる気持ちを抱えてきた。
そんな中、運送会社ガーベージの登場で、ダンジョンから豊富に取れる鉱石の類を売り、食料が仕入れられるようになったのだった。
ヒーローはこれを大変に喜び、ガーベージに感謝した。
いい感じに民意を得てきたな。
この調子で頑張るぞー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます