第82話 ガーベージと条件
運送会社『ガーベージ』の出した条件は三つ。
一つ、輸送で発生した利益は運送会社の平均的な利益分の金を徴収する。国には税金を納める。
二つ、半国営企業として国からの補助金を支給してもらう。なおかつ、こちらは、事故が発生しても一切責任はとらない。あくまでも現行法で処理する。但し、ワイバーンの管理維持費はこちら持ち。
三つ、株式は公開せずに、国にのみ四割程度権利を持たせる。経営権はこちらが持つ。
ふざけた条件だが、俺が「嫌ならやめてもいいんじゃよ」と言えば、国は首を縦に振らずはいられない。
なにせ、こうしている間も、遠くのコミュニティに住む人間は、江戸時代以前の暮らしをしているのだから。
お優しいニポンジーンは邦人の保護をしなきゃならねえよなあ?
そのためには、どんなに不利な条件でも、日本各地と貿易網を構築しなきゃならねえよなあ?
いやあ、最高だぜ。
利益だけを分捕れる契約だからな。
おまけに、雇用も確保できるから、無職も減って手下も増える!
あ、ちゃんと利益分から社員に給料は出すつもりだ。タダ働きはさせない。そう言うことをやらせると、巡り巡って自分に不利益になるからな。
俺は六割の株を持つ株主として、社員共が働いた利益を吸い上げる。
社の備品であるワイバーンは全て俺のものだから、社員は俺に逆らえない。ガソリン(エサ)代も国が出してくれる。
因みに、国は膨大な補助金を払えないから、天海街に色々と配慮することで相殺とするようだ。
天海街も潤う、俺の懐も潤う。winwinだな。国はloseしてるが。
まあ、国にも税を納めているので、その分儲かる……、いや、トントンくらいか?
なんにせよ、これぞ正しい形だよな。
何もやらなくても俺に利益が出る、それこそ理想だ。
不労所得で生活することより気持ちのいいことはない。
さあ、会社を動かし始めようか。
……会社動かしたら不労所得じゃねえな。
まあ、極限まで労働を減らす方針で。
運送会社の会計をやっていた村上という男に取りまとめを任せて、俺は上から指示をする。
ワイバーンに鞍をつけて、社員と言う名の生贄を乗せる。
なぜ生贄か?死ぬ可能性が割とあるからだ。他の飛行モンスターに襲われるかもしれないからな。
そうは言っても、高速道路で事故る確率くらいのもんだろ。人間、死ぬときはあっさり死ぬもんだ。そのときは諦めてくれ。死ぬのは俺じゃないから安心安全だな!
その分、ワイバーン便の運ちゃんは給料高めにしてやっている。
ああ、ワイバーンは人間並の知能があるので、背中の上から指示すれば聞くぞ。
まあ、俺がワイバーンに、社員の言うことを聞くようにと命令してあるだけなので、社員を喰い殺せと命じればそうするだろうけども。
そして、ワイバーンにワイヤーでくくり付けたコンテナを持たせて、空を飛ばす。
試験的に、千葉県の天海街から、暫定首都長野、沖縄、北海道帯広市まで飛ばしてみたが、特に問題なく成功。
もちろん、最初は警戒されたが、俺が交渉員として出向いて、話をまとめた。
その時、どんな感じだったか……。
大体こんな感じである。
帯広に行った時の話だ。
「竜の群れだ!」
「冒険者を呼べー!」
「逃げろー!」
ワイバーンの群れを見てパニックになる人々の中に、俺は転移して現れる。
拡声の魔法で、街に呼びかける。
『皆さん、ご安心ください!今回ここに現れたのは、輸送用に調教されたモンスターです!危険はありません!繰り返しますよ、危険はありません!』
いやー、上空から人を眺めるのは楽しいなー。
俺は、滞空しているワイバーン輸送隊に「ステイッ!ステイッ!まだだっ!」と指示。
『街の代表者を呼んでください』
そして、町長のおっさんが現る。
「な、何事でしょうか?」
俺は、拡声の魔法を使ったまま、呼びかける。
『えー、まず、今回は皆さんに政府からの支援物資を配達しに来ました!』
「「「「おおー!!!」」」」
『しかし!支援物資は今回だけです!今後は、このコミュニティで生産された食品や嗜好品……、様々なものを売ってもらいます!そして、その金で、こちらも物資を売ります!つまり、貿易です!』
「貿易だと?」
「うーん……」
『貿易です!世界崩壊から一年!ちり紙は?マスクは?生理用品は?オムツは?酒はどうです?鉄製品は?薬は?必要なんじゃないですか?!』
「確かにそうだ」
「もう、無人の百貨店からサルベージするのも限界だ」
「さ、酒、欲しいぞ!」
『逆に、モンスター素材、魔石、革や骨、木材、海の幸、野菜!余ったものは売ってしまいましょう!特に、今は魔石の需要が大きいですよ!地元冒険者さん達の懐は大いに潤うでしょうねえ!』
「「「「おおーっ!!!」」」」
このようにして、日本各地に出向いて流通網を確立したところだ。
愚民共には感謝され、国からは金を搾り取れる!
搾取階級として適切な行動だったな!
気持ちいいぜ!
……なんだかんだ言って働いちゃった。
でも、最初は働かなきゃ後々きついもんね……。
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