第73話 屑籠屋営業中

浮気ネタについて、愛人達に怒られた。


めんどくせーが、次からはバレないようにやろうか。


お互いに老いることがないんだから、どんなに浮気しても最後に隣にいるのはお互いだぞと言ったら癇癪が収まったようだ。


女の癇癪ほど面倒なものはない。


あいつらは授業中だろうが仕事中だろうが現れて怒り始めるからな。


女は笑っていた方が可愛らしいんだから、適当に笑っててくれ。


キーキーとがなり立てられるのはもう嫌だ。


だが、殴って黙らせる訳にもいかんからな。俺はクズの自覚はあるが、殴って言うこと聞かせるのも外聞が悪い。


その点、シーマは俺が何をしても怒らんから好きだな。


だがあいつをメインヒロインにするのは嫌だ。


あの女は頭がおかしい。


……まあ、なんだ?俺からすると、女なんていくらでも代わりがいるし、選べる立場だから、わざわざ今手元にいる女を大切にする意味がないって話だ。




そんなことはどうでもいい。


『屑籠屋』だ。


何でも屋、『屑籠屋』は、連日連夜大繁盛。


既に、ヴォルフ一人では店番が回らないので、ヴォルフを責任者にしてバイトを雇い、シフト制で回している。


ヴォルフはかなりの強面だ。


ぶっちゃけ、初対面の時は、「絶対一人二人ライン川に沈めてるだろこいつ」とアーニーと言い合っていた。いや、今も言ってる。


二メートル越えの身長と筋肉の塊のようなボディも恐ろしい。


殴り合ったら五分以内に張り倒されるだろう。


ひょろいアーニーなら五秒持たない。


そんなヴォルフが睨みを利かせているものだから、窃盗などはされていないようだ。


旧世界のような食品、冒険に役立つアイテム、高品質な武具を売る屑籠屋は、最早、この新世界になくてはならない店舗になっている。


あ、ヴォルフだが、実家で畑を耕すより、世界一のスーパーの店主の方が稼げるからって、本業は屑籠屋店主になったぞ。


本人は、日本との時差の関係で、中々家族との時間が取れないとボヤいていたが、週休二日はくれてやってるんだからなんとか我慢してほしい。


俺は働きたくないし。


ヴォルフに丸投げするわ。


まあ、実際は、ポーション作りや魔導具作りをしてるんだが。


でも、本業は喫茶店のマスターだ。


俺もう二度と社会人はやらないって決めたから。


一人じゃ会社は回せねえ。だが、部下は使えねえ癖に取り分を要求してきやがる。社長なんて貧乏くじだ。やはり役員、役員だな。


とにかく、俺は自由にやらせてもらう。


さあ、そんな屑籠屋だが……。


オープン時間は朝十時から夜の八時まで、年中無休(年末年始を除く)って感じだ。


いつもはヴォルフを警備員代わりにしているが、ヴォルフの休みの日にはアーニーを配置している。


その他にも、俺は喫茶店がある日は無理なのだが、たまに俺と、年中暇してるシーマが時々現れる。


世界最強の集まる店で暴れるアホはそうそういない。


そう言った、身の程知らずのゴミは、この一年で死滅したように思える。


夢見がちな、自分を最強だと思い込んだ一般人は、ダンジョンの現実に叩きのめされ、死んだか引退。


今、ダンジョンに挑んでいるのは、気合の入ったダンジョン滅殺ガチ勢か、日銭を稼ぐために戦う現実見えてる勢のどちらかになっている。


俺達?エンジョイ勢かな。


さて……、そんなこんなで、今日は俺が店番の日だ。


屑籠屋に行こう。




「おはようございまーす」


「「「「おはようございます」」」」


俺は社会人じゃないが、社会人として挨拶は欠かせない。


屑籠屋のバイト達に挨拶をして、業務開始だ。


と、言っても……、俺は警備員なので、その辺をふらふらしてるだけでオーケーなのだ。


屑籠屋は大きく三つの部門から構成されている。


食品、アイテム、武具の三つだ。


食品。


これは、冒険者向けに、密閉容器に入った様々な食品を売る。


材料は、街の農家や畜産業者から買い取り、それをバイトに調理させて、ゴムパッキンのついたプラスチックの密閉容器などに食品を入れて販売している。


その他にも、瓶詰め、缶詰、水筒入りのスポーツドリンクなどを販売している。


あくまでも、冒険者向け保存食の類である。


味は保証するが、食事を楽しみたいのならば、俺の喫茶店に来た方がいい。


まあ、それでも、この崩壊後世界の食品とは違い、崩壊前の出前料理くらいのクオリティはある。それなりに美味いぞ、ってこったな。


俺のオススメは防腐の魔法付きサンドイッチセットだな。


だが、実際に売れているのは、おにぎりシリーズである。


俺はパン派だからな……。


ご飯って冷めると美味しくないじゃん?硬くなるし。


大体にしてファンタジー世界になったのにおにぎりはねえだろ……、いや、和風ファンタジーならアリか?


まあ、なんにせよ、冒険者は基本的に燃費が悪い。


俺も、ヤサイブタマシマシ!みたいなラーメンを平気で食えるほどに腹が減ってしまうようになっている。


普通の冒険者も常人の倍、前衛なら数倍は食わなきゃ動けない。


冒険者は皆、山口多聞かな?ってレベルの健啖家になってしまうのだ。


だから、食料は大事だ。


飯が美味いかどうかは士気に関わるから、長期間ダンジョンに潜る冒険者は、この店の美味い飯を出来立てのまま時間停止アイテムボックスにしまい込み、現地で食べるようだ。


そしてアイテム。


ポーションはもちろんのこと、一定時間武器の切れ味を増加させる『シャープネスオイル』や、一定時間相手の回復魔法を阻害する『逆十字ナイフ』なんてものもある。


低級冒険者の強い味方である『重さ軽減鞄』や、高ランク冒険者の相棒『時間停止アイテムボックス袋』などがある。


そして、長期探索のお供である、特定の範囲内を一晩安全地帯にする『聖域化チョーク』なんてのもダンジョン探索には欠かせないアイテムだ。


その他にも『水産み水筒』や『無尽岩塩』なんかも欲しいな。


そして武具。


武具は……、まあ、色々ある。


銃刀法?薬事法?ああ、そんなもの、とっくの昔に改正されてなくなったよ。


そう言う訳で武具がたくさん。


コモンからアーティファクト級までよりどりみどりに取り揃えている。


コモンの鋼鉄製武具は一つ十万円から販売。仕入先は、各国の鍛治魔法スキル持ちから買い上げて仕入れている。


アーティファクト級は、チームクズ謹製だ。


今の一流冒険者にはミスリル製品が人気!


チームクズ謹製の品々を品定めする冒険者を横目に……。




強いゼロの酒を飲む俺。


警備員が飲酒とは、クビ間違いなしだが……。


俺よりレベルが低い冒険者相手なら、泥酔してても負けないからな。


さて、今日は屑籠屋に現れる冒険者でも見て回るか!

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