第68話 繋がる世界
最近は、仕事もひと段落し、特にやることもないので、色んな国を巡っていた。
北アメリカ、ヨーロッパ、ロシアと西アジアと中国以外のアジア、北アフリカ、オーストラリアは生きている。
それ以外の地域は内乱やモンスター災害で壊滅し、国の体裁をなしていない。
ホットスポットは色々あるが、中国周辺、中東近辺、アフリカ近辺は特に死んでる。
中国は、二次大戦頃のように、軍閥ごとに分裂して内乱状態だ。
それもそうだ、人民解放軍の起源は軍閥だった訳だからな。
そしてそもそも、ダンジョンは人口の多いところに湧く。特に、人口密度の高い場所に。
日本は一億二千万人でダンジョンの数は十万以上。
では、十四億人の人口を抱える中国のダンジョンは?
単純に10倍くらいだとして、百万のダンジョンがあると思われる。
中国の面積は九百六十万平方キロメートルくらいだったか?
だが、さっきも言ったが、ダンジョンは人口の多いところにできる。
中国は、山岳などが多く、人が住める領域は意外にも狭い。だから、あんな、日本なら違法建築まっしぐらな巨大なマンションやビルを建てる訳だな。
東京都の人口が千三百万人に対して、群馬県程の大きさの上海には二千四百万人。岩手県くらいの大きさの北京には千八百万人……、と、国土自体は広いが、狭い地域に人口がたくさん集まっている。
そんな、人口がたくさん集まっている地域は、一体どれほどのダンジョンができたのか……、推して知るべしだな。
北米も同じ理由で、ニューヨークが特にヤバかったらしいな。それでも、ニューヨーク州の人口はあれだけ広いのに八百万人くらいと、北米は、全体的に人口がばらけていたおかげで、強大なダンジョンが発生せずに助かった……、と言ったところだ。
何より、中国は、上層部がそれぞれ勝手に保身に走り、分裂したのがいけない。
日本は、政治家には、自分のものじゃない軍を動かすことはできないが、人民解放軍は中国共産党の私兵である。
そして、私兵であるからして、派閥があり、分裂した訳だな。
そもそも賄賂汚職が横行しているような中国の政治機構が、国家の危機だからと言って一致団結する訳ねえだろうが。
上層部はそれぞれが私兵を使ってどこかに籠城したり国外逃亡したりして四散した。
つまり、この状況で戦力を分散させたんだな。最悪の悪手だ。
そんなこんなで中国は死んでいる。
中東はどうか?
死んでいる。
こちらは、人為的なものでだ。
アメリカも国連も介入してこない、介入する余裕がないから、テロ組織が……。
アフリカ、南米も同じようなものだ。大国の保護を失った発展途上国は脆かった。
全体的にポルポトおじさんがニッコリな状況。すなわちゲンシカイキ。都市部の知識層が死に、田舎で畑を耕すものが生き残って、狩猟民族農耕民族に逆戻り。
世界の総人口は百分の一くらいに減ったかな?
愉快な世界観だな。
モスクワ……。
「「「「死ねーーーッ!!!!」」」」
『ギャオーーース!!!!』
ベルリン……。
「「「「死ねーーーッ!!!!」」」」
『ギャオーーース!!!!』
ロンドン……。
「「「「死ねーーーッ!!!!」」」」
『ギャオーーース!!!!』
マドリード、ソウル、ニューデリー、キャンベラ、オタワ、東京、北京、パリ、ワシントンD.C.……。
「「「「死ねーーーッ!!!!」」」」
『ギャオーーース!!!!』
「タイタンが一番キツかったな」
「いや、ベルフェゴールじゃないかな」
「ウロボロスね」
「む、フェンリルだな」
「いや、タイタンだって。全長千キロメートルって何?ふざけてんの?」
「ベルフェゴール、魔法完全耐性あってキツかったよ」
「ウロボロス、無限再生するから斬っても斬っても……」
「フェンリルの防御貫通がな」
チームクズで駄弁りながら日本へ帰還。
「「「「カンパーイ!!!」」」」
反省会という名目で呑んだくれる。
「殺し合いの後に飲むビールはウメェなあ!!!!」
「いや、殺し合いしなくてもビールは美味い。すなわち、ビールは美味い」
「ビールはウォッカじゃないから酒じゃないのよ」
「む……、労働の後の酒は格別であることには同意する」
………………
…………
……
「あー……、あー?ラーメンウメェ!ラーメンウメェ!」
「あ、ちょうちょ」
「ふぅ〜」
「おおお……、虹色の豚が」
いやー、飲み過ぎた。
でも、これでしばらくは、大規模なモンスター抹殺祭りをしなくて済むだろう。
何故こんなことをしたのか?
急に世界を救いたくなったのか?ノーだ。
答えは簡単。
「それじゃ、『世界を繋げてみる』か」
世界を繋げてみたくなったからだ。
「「「おう!」」」
「『ファンクション:クリエイトワープゲート』」
天海街の駅、天海駅にワープゲートを出して、各国と繋げる。
ハリアルシティ、ヴァイスベルグ、サン=ウリエル、ニトロフスク、エジプトのスエズ、中国の登封市、イギリスのエディンバラ、オーストラリアのニューカッスル、モンゴルのエルデネト、インドのダージリン地方などにワープゲートを開通。
そして挨拶回り。
「すいませぇん!日本の冒険者の関係者なんですけどォ!日本とワープゲート繋がるようにしたんで、ここと繋げて良いっすかねえ?!!!」
「「「「あ、はい」」」」
各国に、喫茶店ディメンションのクッキー詰め合わせセットを叩きつけて、街の代表者を集める。
「えー、みなさんこんにちは、喫茶店ディメンションのマスター、ヨシタツ・ハザマと申します」
「「「「はあ……」」」」
「まあ、今回はですね、天海街にワープゲートを用意したんでね、ここを有効活用してもらってですね。まあ、この辺の空きスペースに両替所とか作ってもらってですね」
「あの、良いだろうか?」
「はい、何でしょうか?ええと、確か……」
「フランスのフォルジュだ」
「ああ、はい、どうしました、フォルジュ辺境伯」
「貴殿は何者なのだろうか……?ワープゲートなどという強力なスキルは初めて見る」
「あー?そうですね、自分は喫茶店のマスターです。副業として錬金術師もやってます。青年実業家です(アラサー)」
「ふむ……、語るつもりはない、か?しかし、ワープゲートはあまりにも魅力的だ……」
「もちろん、このワープゲートは、作ったのは私ですが、私が死んでも消えませんし、消すつもりもありません」
「保証はできるのか?」
「勝手に消えたら、消えたことにより発生する損害を補填しますよ」
ごちゃっと、今まで稼いだ新日本円のミスリル貨と紙幣を机の上に積む。
「なるほど」
そんな話をして、各国と国交を結ぶ。
「最後に一つ聞きたい」
「何でしょうか、フォルジュ辺境伯」
「君が、このように、ワープゲートを繋げた理由は何だね?」
それはね。
「しゅみです」
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