第60話 クリスマス

「「「「メリークリスマス!」」」」


なんだかんだでもう冬だ。


クリスマスなのでパーティーを決行する。


二十五日は家族と過ごす感じにして、今日、二十四日は、友人と集まって大規模なパーティーをキメる。


アーニーがハリアルシティにパーティー会場を抑えてくれていたんで、そこでパーティーをする。


「「「「カンパーイ!!!!」」」」


「俺、一杯目はアサヒスーパードライって決めてるから」


「僕、一杯目はバドライトって決めてるから」


「私はバルティカ」


「ヘフェヴァイスビア」


はい、いつも通り好みはバラバラ!


まあ、個人の自由だから突っ込みはしない。


個人的にビールで一番大切なのはキレで、飲んだ時の爽快感が重視されると思うのだが……。


とりあえず、ビールのジョッキ一杯目を空けたので、それぞれ好きなものを飲み始める。


折角なので俺はシャンパンを出した。


「モエ・エ・シャンドンのボトルを綺麗なキャビネットにしまって『どうぞケーキでも』と言う彼女はまるでマリーアントワネット、ってな」


「ハッ、フルシチョフとケネディも宥める人柄ってかい?古いんだよ君は、おじさんめ」


アーニーに言われる。


「うるせえ、名曲だろうが!」


シャンパンを注ぐ。


「ん、美味いわね」


シーマがそれを引ったくる。


「あっ、この野郎」


「野郎?私は女よ」


そう言いながらお代わりを要求してくるシーマ。


仕方なく注いでやる。


俺も自分の分を注いで一口。


「うん、高いだけはある、か」


流石は高級ブランドと言ったところか。


「おお……、美味いな」


ヴォルフが、その辺にある厚切りハムをかじっている。


「この強めの塩気と肉の旨味がたまらんな」


「そりゃそうだ、俺が作った豚肉のハムだからな」


「成る程、最高に美味いぞ。帰りに一本くれないか?母にも食べさせてやりたい」


「ああ、ここの冷蔵庫に入れておいたから後で持っていけ」


そして、俺は目の前のローストビーフを食う。


「お、美味い、流石は俺」


自画自賛が止まらない。


オニオンソースはガーリックをかなり強めにして作ったんだが、これが匂いが強めのオージービーフにぴったりだ。


野生的な肉の香りに、強いニンニクの香り。


男の料理だな。


安易に霜降りに走るのは良くない、料理ごとに的確な肉があるのだ。


ローストビーフは、脂の少ない肉ほど良いのだ。


「あ、このキッシュ美味しいねえ。ふわっとしてて優しい味だ」


アーニーがキッシュにかじりつく。


いやあ、全く、飯は美味いし酒も美味い。


言うことなしのクリスマスだ。




さて……。


このクリスマス会場には、揚羽の親父、ヴォルフの嫁のフェイ、アーニーの嫁のローラも来ている。


彼らは大人なので、クリスマスもただ飲み食いするだけじゃなく、仕事の話をしているようだな。


え?俺達?


……ぼく、さんしゃい!!!




揚羽の親父、フェイ、ローラが英語で話をしている。


揚羽の親父は英語なんて喋れないので、通訳に大学の学長がついている。


フェイは賢いので英語を話せるそうだ。まあ、一流のビジネスマンが英語わからんなんて言えんわな。


ローラは英語がネイティブだ。


さあ、始まりました、英語による会議。


『では、確認しますが……、うち、天海街からはポーションの類、ハリアルシティからは魔導書の類、ヴァイスベルグからは魔導具の類を出せるんですね?』


揚羽の親父が翻訳越しに言った。


『ええ、基本は物々交換で、為替レートについては下の者と話し合いをして決定しましょう』


クールビューティ、ローラが言った。


『食品は、天海街がイノシシとウサギのモンスター肉、それと魚類。ハリアルシティが牛モンスター肉と麦。ヴァイスベルグが豚モンスター肉とジャガイモを出せるんですね?』


可愛い系、フェイが言った。


『一応、うちも米は出せますし、日本酒も売れますよ。それと果物も取れるので、果物を使った酒もあります』


『あら、ぜひ輸入したいわ。うちは肉と野菜ならたくさんあるけれど……』


『うちはドワーフにせっつかれるので、ビールとウイスキー、アクアビット辺りが今急いで生産されてますね』


実りある会議になっているようだ。


一方で俺達は……。


「メインイベンット!!!!モンスター肉食べ比べェイ!!!!」


「「「イェーイ!!!」」」


今まで狩ってきたモンスターの肉を食べるぜ!!!


サイコロステーキのように小さくカットした各種モンスター肉を食べ比べ!


「まずこれだ!」


「ん……、牛っぽい?けど牛より美味いねこれ」


「肉の味が濃厚で脂身がかなり甘いわね」


「む……、少々脂っ気が多い気がするぞ」


発表!


「これはね、カトブレパスの肉だ!牛のモンスターでも厄介な方のカトブレパス、わざわざ倒して食うだけの価値はあるな!」


「あー、カトブレパスか」


「因みに、色々試したけど、ステーキが一番美味かった」


次!


「鳥モンスターの肉だ!食ってみろ!」


「あ、七面鳥とチキンの合いの子みたいだね」


「本当ね、脂少なめだけど、しっとりとしていてパサつかないからいくらでも食べれそうね」


「む……!これは美味いな、後でくれないか?」


これは何の肉か分かるかなー?


「コカトリスでしょ?僕、前に食べたよ」


「アーニー、正解だ!」


次!


「熱っつ、不自然に熱い!けど美味いね、淡白な白身みたいだけど、色は赤だ」


「昔食べたワニ肉に似てるわ」


「む……、これもイケるな、熱いが」


「これなーんだ!」


「えー、火属性っぽいモンスターでしょ?」


「ファイアドレイクね?」


「はいシーマ正解!」


そして……。


「大トリはこれだ!ドラゴン肉ー!!!」


「「「おおー!!!」」」


さて、お味は……?


「「「「美味い!!!!」」」」


「ちょ、これ、かなり美味いぞ?!」


とアーニー。


「牛とワニ肉の合いの子のようで、肉自身の旨味とワイルドな香りがガツンと来るわ!」


とシーマ。


「むぅ、脂身も多過ぎず少な過ぎずの絶妙なバランスだ……!」


とヴォルフ。


「ドラゴン系の肉は何かに例えられないんだけど、兎に角べらぼうに美味いんだよなあ!」


俺が言った。


「ドラゴン肉は美味過ぎて市場に流せないね」


「狩ってこいとせっつかれるのはごめんよ」


「む……、身内だけで楽しむか」


などと話しつつ、クリスマスは過ぎていく……。

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