第53話 冒険者ギルド 後編
『NAME:辺志切景光
TITLE:鬼武者
RACE:人間
AGE:24
SEX:男
JOB:侍
LEVEL:56
HP:587
MP:174
STR:284
DEX:184
VIT:121
AGI:209
INT:10
MND:215
LUK:8
CHA:15
SKILL
示現流(上級)
神変自源流居合(中級)
空歩(下級)
瞬動(中級)
縮地(中級)
神降ろし・八幡大菩薩(中級)
神降ろし・武甕雷(中級)
筋力増大(中)
心眼(下級)
生活魔法
鑑定』
ふむ……。
ゴリゴリの物理アタッカーで、MND値依存のバフ魔法である神降ろしを二種、身体能力増加の八幡大菩薩、電撃のエンチャント及び筋力と速度増加の武甕雷。
空中ジャンプこと空歩と、ロマンキャンセルこと瞬動、和製短距離転移魔法こと縮地。
未来予知こと心眼に筋力増大も乗せて、更に格闘術と刀術を統合し、独自の進化を遂げた示現流と、居合。
ああ、因みに、この崩壊世界での居合使いは、さも当然と言った雰囲気で斬撃を飛ばしてくるからな。
なんか、魔法系スキルじゃないと遠距離攻撃ができないとか、火力が低いとか、そんなことは一切なく、剣術系スキルを伸ばせば斬撃が飛び、一太刀で明らかに斬れないくらいにデカイものも斬れる。
そうだな、上級の示現流でこのステータスともあれば、五十階建てくらいのビル五棟までなら一太刀で真っ二つにできるんじゃねえかな?
そして、レベル56ともなれば、人間の数千倍は強いだろうし、現代兵器は通用せず、発射された大砲の玉すら受け止められるだろう。某海賊漫画の剣豪キャラくらいは強いんじゃない?
ステータスの数値は、レベル以外は、数値と実際の強さに大きな開きがある。
普通の人間のSTRが10だとして、STRが100の人間は普通の人間の十倍強い訳じゃない。
数値は大きければ大きいほど、指数関数的に実際の力が伸びるので、STR100の人間は、STR10の人間の百倍以上強いと言っても過言じゃないだろう。
そんな怖い人に、俺は絡まれてしまった訳だ。
いきなり出てきてなんなんだてめーはよ。
「面倒だ」
俺は、いきなり戦えと言われても、面倒だから断った。
「ないごてじゃ?」
あー?
鹿児島弁は全く分からんが、翻訳スキルが発動してるから分かる。
何故か?だと?
そんなもん決まってんだろ。
「お前と戦って、俺にメリットがあるのか?」
「ねぞ」
無いのか。
まあ、あってもやらんがな。
そもそも論として、資本家が労働者を無意味に傷つける訳ないでしょそれは。
こういう頭が悪そうなのは、我々資本家に良いように使われてくれるし、程度の低い仕事をたくさん任せられる。感謝すべき存在だ。
俺のプライドとか、強さの誇示とか、そんなくだらない理由で街の働き手を殺すことはない。あってはならないんだよ。
そんな俺を他所に……。
「じゃっどん……、抵抗せんとけ、死んぞ」
ぬらり、と腰の刀に手をかける薩摩の男。
ふむ。
権能分化。ステータス隠蔽スキル、五段のうち四段まで解放。上級威圧スキル発動。上級殺意スキル発動。
そう、権能は、複数のスキルが統合されて、進化を遂げたものだ。
つまりは、権能の中には、スキルが入っている。
権能は、例えるなら、携帯電話会社のお得な全部のせプランみたいなもの。権能というパッケージ自体がプレミアムで、パッケージの中には定額アニメ見放題やら、パケット代カットやら、通話料金カットやらが入っている。
そう言う訳で、権能に統合された細かなスキルも、使おうと思えば使える訳だ。
「……!!!」
俺は、周囲に魔力を軽く振り撒いて、威嚇した。
周囲の冒険者は、新人やギルド職員などの低レベル層は泡を吹いて気絶、一般冒険者の殆どは失禁し、上位レベルの冒険者も息を荒くして膝をついた。
魔力察知や精霊の眼など、感知系のスキル持ちの冒険者は、急に噴き出した猛烈な魔力の渦に当てられて、胃の中身のものを全部吐き出している。
「……おいの負けじゃ、殺せ」
しかし、この男は、俺の威圧を受けても膝をつかずに立っている。
まだまだ全力の威圧ではないが、これを受けても立っていられるとは思わなかった。
ここまで強い奴がいるものなのか。
ダンジョンの早期攻略というアドバンテージがなければ、この男とは立場が逆になっていたかもしれないな。
まあそうはなっていないので俺が上だが。
「か、景光っ、に、逃げて、う、うおえええっ!」
ふむ、ここで両膝をついて胃液をぶちまけているのは……。
『NAME:益口命
TITLE:夢想神楽
RACE:人間
AGE:24
SEX:女
JOB:巫女
LEVEL:51
HP:309
MP:598
STR:101
DEX:123
VIT:98
AGI:147
INT:250
MND:122
LUK:7
CHA:16
SKILL
弓術(下級)
神楽舞・鍾馗(中級)
神楽舞・大蛇(中級)
神楽舞・天神(中級)
神楽舞・大江山(中級)
霊視(中級)
神降ろし・少彦名(中級)
知力増大(中)
生活魔法
鑑定』
ああ、霊視スキル持ちの女か。
霊視スキルは、相手の魔力量や周囲の魔力が視覚で捉えられるという感知系のスキルだな。
俺のぶっ壊れ魔力を見て、感知限界を超え、精神にダメージを受けたみたいだ。
「かげ、みつっ!駄目、そいつは、駄目……!!!」
胃液で服を汚しながらも、薩摩の男に縋り付いて腕を引っ張る女。
素晴らしいな、ここまで精神的にダメージを受けながらも、仲間も連れて逃げようとするとは。冷静だし、聡明だ。愛もあるのかもしれない。
どっちにしろ、素晴らしい冒険者であると言えるな。
俺は、紙とペンを創り出し、「明日までにうちの洋館に売った魔導具の金を届けて欲しい」と書き留めて、それを気絶している買取カウンターの受付のお姉さんの目の前に置く。
そして、薩摩の男に。
「今後もお仕事を頑張ってください」
と、言い残して、ギルドを出て行く……。
「はっ、おとろしか。こげなことははいめっじゃ」
俺が恐い?
まあ、それで働いてくれるんなら、何でも良いよ。
この街の利益は、俺の利益にもなる訳だから。
冒険者諸君には、是非頑張って働いて欲しいんだ。
俺は、魔導鞄の中に入れておいた、特大の魔導鞄を二つ開く。
そのまま、それを両手に持ち、更に背負っている魔導鞄とで、実に100kg近い積載量を確保していた。しかも、冷蔵機能のある高級モデルだ。
何のために100kg分の鞄を用意したのか?
そう、喫茶店の買い出しである。
喫茶店の三日分の買い出しを済ませるのだ。
いや、調味料やらスパイス、コーヒーの豆なんかは俺が錬金術で作るが、天海街で買えるものは極力買っている。
俺は相当儲けている。
……が、経済的に考えて、俺だけが金を持っていてもどうしようもない。だから、俺はなるべく金を使うようにしている。
天海街そのものに金を出して、それが税金として使われて、冒険者ギルドに国営の依頼が出される訳だ。
国債も買っている。
このご時世に国債ってのも面白いな。
だがまあ、稼ごうと思えばいくらでも稼げちゃうからな……。
蘇生薬でも売り捌けば、どんなに法外な値段でも買い取ってもらえると思うぞ。
何せ、まだこの世界には、蘇生魔法の使い手はいない、ということになっているからな。
まあ、俺達はできるんだが。
あー……、まあつまり、俺は国に投資してるってことだな。
日本が復興するか、それは分からないのだが、人間って生き物はしぶといからな。
もしも、このままの生活を続けていて、自然に滅んだなら仕方がないと諦めるが……、俺は何だかんだで生き延びて復興する確率の方が高いと思っている。
復興した時に、俺が今やっている先行投資分楽をできれば最高だな。
さあ、食品を買い込んで……。
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