第48話 塚原月兎のこれまで
「えへ、えへへ、へへへ、お仕事しよ……、沢山お仕事して、社長に褒めてもらお」
僕は、塚原月兎。
十八歳。
月の兎と書いて、「るな」と読む。
小学生の頃に、僕を虐めるクソ親をぶち殺して、施設で育った。
施設でも、みんな僕を虐めるから、僕は一人で隔離されてた。
でも、僕はネットのお友達と遊んでたから寂しくないよ。
ネットのお友達と、プログラミングの勉強してたの。
中学校を卒業したら、施設から追い出された。
僕は、困って、ネカフェで寝泊まりしてた。
手切れ金の十万円も、すぐになくなっちゃって、自殺しよーかなー、って思ってたら、社長にスカウトされた。
それから二年間、頑張って働いた。
だって、社長、優しくてカッコいい!
凄いんだよ!
超イケメンで背も高くて、筋肉もあって、「ガイジ」の僕にも優しくしてくれるの!
クソ親も施設の人も、僕を虐めてばっかりだったけど、社長と、社長のお友達の人達は、みんな僕に優しくしてくれたんだ!
社長はね、一緒にお風呂に入ってくれたり、優しくエッチしてくれたりするの!
僕、社長の為に生きるんだ!
なのに、次の日、会社に行ったら、会社は潰れてた。
「は、はっ、はひっ、なんで?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?」
僕は、伸ばしっぱなしの黒い髪を掻き毟る。
電話、電話しなきゃ。
「社長!社長、会社、会社がなくなっちゃった!なんで?社長、どうして?ねえ!」
『ん、おう、月兎か?会社はな、無能な役員共の陰謀で潰れちゃったんだ。ごめんな』
役員……、よく分かんないけど、偉くて凄い社長に文句ばっかり言うゴミカス共!
「社長、ねえ、僕、どうすれば良い?」
『お前の口座に三千万円ぶち込んどいたから、しばらくお休みしてろ。いいか、毎日風呂入れ、飯も出前でいいからちゃんと食え、たまには髪を切れ』
「うん、うん。次のお仕事は?僕は何すれば良いの?」
『何年かお休みだ、うちでネトゲでもしてろ。次の会社を作ったら呼ぶからな』
「ほんと?僕、いらない子じゃないよね?」
『おう、今、俺は千葉県の天海街ってところにいるから、何かあったら来いよ。呼ぶまでは家にいろ』
「うん、分かった!あのね、あの、僕、社長の子供欲しいの、だから、今度はね、エッチ沢山しよ?ね?」
『あー、まあ、エッチは沢山してやるよ。じゃあな』
「はい!ばいばい!」
こうして、僕の四年間のニート生活がスタートしたのだ。
僕が、二十二歳になって、東京のお家で寝てたら。
ある日、爆発音が聞こえた。
「なに?!なになに?!」
僕が驚いてお家から飛び出すと、自衛隊が、なんかよく分からない怪獣モンスターと戦ってた。
「なにこれ?!なんなの?!」
よく分かんないけど、逃げなきゃ。
えっと、精神安定剤と睡眠薬、スマホ持って、逃げよう。
自衛隊が、避難勧告してるから、それを聞いて逃げる。
あ、そうだ、社長!
社長に電話!
……駄目だ、繋がんない!
社長、社長、社長、死なないよね?
社長は僕を置いていなくならないよね?
避難した先は長野県。
僕、学校にちゃんと行ってないから、長野県って言うのがどこなのかよく分かんない。
でも、日本人がいっぱいいるから、多分日本なんだと思う。
避難所では、狭いテントの中で一日中過ごさなきゃならない。
スマホも充電切れだし、ネットワークも使えなくなったらしい。
僕のことはどうでも良いんだけど、社長は?
社長は?社長は大丈夫なの?
避難所をいくら探しても、社長はいなかった。
精神安定剤も睡眠薬もなくなって、眠れない。
探しに行こう。
探しに行かなきゃ。
あの時は、社長が僕に手を差し伸べてくれた。
なら、今度は僕が社長を助ける番だ。
待っててね、社長。
すぐに行くから。
僕は、避難所のキッチンから包丁を三本盗んでから、近くのダンジョンに向かった。
モンスターを倒せばレベルが上がる。
ダンジョンコアを壊せばスキルが手に入る。
なら、やってやる。
街外れのダンジョンに入る。
ここは、ゴキブリのダンジョン。
「キモい、キモい、キモい、キモい!!!」
でかいゴキブリを踏み潰してレベル上げ。
そして、ボスのゴキブリを蹴り殺す。
僕は、運動音痴だけど、ゴキブリを踏んだり蹴ったりくらいはできるよ。
そして、ダンジョンコアを破壊。
スキルは「悪食」だった。
悪食、なんでも食べるってことかな。
僕は試しに、そこら辺の石をかじる。
……美味しくはないけど、食べられる。
よし。
じゃあ、社長がいる、千葉県の天海街ってところを探そう。
よく分かんないけど、関東ってところにあるらしい。
僕は、ジャージのまま歩き回って、そこら辺の建物や看板、コンビニの中のジュースや缶詰なんかを食べながら移動した。
ダンジョンは十九回挑戦したけど、そのうち六回しかダンジョンの攻略はできなかった。
そして、手に入ったスキルは、鑑定、土魔法(中級)、鈍器術(下級)、盾術(中級)、自動防壁(中級)、耐久増大(中)だった。
悪食で、そこら辺のコンビニやスーパーから食料を調達して食べる。
ダンジョンで手に入れたアムドライトのメイスとカイトシールドを背負って、更にホームセンターで手に入れた登山用の服とリュック、丈夫な靴に履き替えて、モンスターを殺しながら進む。
いつも隣にアイアンゴーレムを二体、護衛として召喚しておく。
それを見た人は、寄生しようと思って近寄ってくるので、全員殴る。
なんか知らないけど、街まで護衛しろとか、アイゴーとか言ってくる人がしつこく付きまとってくるから、アイアンゴーレムに殴らせる。
兵庫ってところに着いた。
兵庫には、日本語を話す人が少ない。みんなアイゴーアイゴーと言っている。
多分、ここは外国なんだろう。
あれ?日本って島国なんじゃないのかな?
まあ良いや、こっちじゃないなら来た道を戻ろう。
毎日、手帳にメモをして、日にちを数えている。
今日はこれで五ヶ月目になる。
危うく東京に入りそうになったり、レイプしようとしてくる奴がいたり、モンスターに襲われたりしつつも、やっとの事で天海街に着いた!
『NAME:塚原月兎
RACE:人間
AGE:22
SEX:女
JOB:重騎士
LEVEL:50
HP:180
MP:150
STR:125
DEX:85
VIT:180
AGI:97
INT:38
MND:51
LUK:5
CHA:17
SKILL
プログラミング(上級)
土魔法(中級)
鈍器術(下級)
盾術(中級)
破城槌(下級)
強化魔法(中級)
自動防壁(中級)
耐久増大(中)
挑発
庇護
悪食
鑑定』
こんなステータスまで鍛えた!
その辺の冒険者より、ずっと強い!
社長、生きてるよね?
僕を褒めてくるよね?
あ、社長だ!
「あ……、しゃ、社長、その、あの」
「月兎(るな)じゃん、お前生きてたのか」
「は、はい!しゃ、社長が、社長に、その、会いたくて、頑張って、その、え、えへ、えへへへへ」
「月兎、取り敢えずお前風呂入ってこい、洗ってない犬の匂いがする」
「す、ごめ、すみませっ!社長、すみませっん!僕、臭くてごめんです!き、嫌いにならないで!」
「分かった分かった、ほら、頭洗ってやるからついてこい、な?」
「は、はいっ!」
「あと、俺はもう社長じゃねえよ、名前で呼べ」
「え?え、じゃ、じゃあ、たーくん?」
「それで良いから、ほら、風呂だ」
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