第12話 喫茶店ディメンション、再開

「羽佐間さんに、敬礼!!!」


「「「「ありがとうございました!!!」」」」


特殊作戦群の訓練は二ヶ月で終了。


ステータスやスキルの具合から、およそ五十レベルのモンスターまでなら何とかなるだろう。


平均レベルは四十、スキルは五つほど。いい感じだ。


だがまあ、東京23区にはそれぞれ、レベル八十程のダンジョンが乱立してて、俺でも手古摺るモンスターがわんさかいる。


友人達を集めて突貫しても、全ダンジョンの破壊は難しいだろうってレベルだ。そんなことをやってやる義理もないが。


そんな訳で調子に乗れるほどではないぞと忠告しておく。


大体、ダンジョンの長さはレベルと比例するから、空間支配で反則的なショートカットができる俺以外では、レベル四十を超える長さのダンジョンはそうそう攻略できないだろうな。


レベル一桁で一キロいかないくらいなんだが、レベル八十を超えると一階層数百キロを何十階層とかだからな。真面目に高レベルダンジョンを攻略するとなると、大陸横断とか地球一周とかってレベルの距離を歩く羽目になるから。


まあ、高階層の高レベルダンジョンはその分見返りも大きいから、挑戦すること自体は悪くないんじゃないかな。


道中で希少な素材が得られたりとかするもんな。


レベル四十くらいのダンジョンで、大体、人の足なら一、二週間ってところだ。それ以上のダンジョンは補給線の問題とかで攻略不可能だろう。今は致命的な物資不足だし。


因みに、一部のモンスターには話が通じたりもする。


ゴブリン辺りは、知能が猿並で話が通じないが、高位のモンスター……、フェンリル、サンダーバード、テュポーン、ドラゴン、グリフォン……、その辺りは話が通じる。


しかし、基本的に人類を食料とか虫けらくらいにしか思ってない。まあ、戦う気はないと意思表示するか、逆に叩きのめすかすれば友好的な関係も築けるかもね。


実際、俺が戦ったことがあるドラゴンは、所謂武人タイプで、俺達が強いのを知ると果し合いを望んだ。最後は、命乞いもせずに介錯してくれと頼まれたので、言われた通りに殺したが。


でも、そういう高位モンスターでも、ダンジョンに住むものは、自分の縄張りに入ってきたとして問答無用で襲いかかってくるから、基本的には戦うものと見ていいんじゃないのかね。


それと他にも、ワーウルフやリザードマン、コボルト、ハーピィ、ラミア、ケンタウロス、エルフ、ドワーフ、ハーフリングなんかは話が通じる。


人間とあまり変わらないように思える。


こいつらはモンスターとは違い話が普通に通じるので、俺達は亜人と定義している。


亜人はたまにダンジョンに住んでたりする。


亜人や高位モンスターは、ダンジョン外生物の扱いらしく、ダンジョンを破壊しても、ダンジョンの破壊に巻き込まれて死滅することはない。


この差が何なのか分からないんだよなあ、要検証ってところだ。


さて……。


特殊作戦群……、いや、最早規模は群ではないが、兎に角、特殊作戦群の人達はそれなりのステータスを得た。


例に、メレータイプの特殊作戦群隊員のステータスを表示しよう。


『NAME:来栖志郎

RACE:人間

AGE:27

SEX:男

JOB:侍

LEVEL:41

 

HP:104

MP:56

 

STR:110

DEX:101

VIT:97

AGI:165

INT:18

MND:50

LUK:12

CHA:15

 

SKILL

刀術(中級)

居合(下級)

柔術(中級)

銃術(中級)

火砲術(中級)

投擲術(下級)

空歩(初級)

敏捷増大(小)

心眼(初級)

生活魔法

鑑定』


と、まあこんなもん。


気のせいだろうか、侍を意識したかのようなスキル構成になっている?


あ!ってか、職業が侍になってる。データ不足で分からないが、職業?ジョブ的な?そういうのがあるんだなやっぱり。変化する条件とか全然分からんけども。


スキルの習得については、その人の人格というか特性というか、そういうのが出る気がするな。


アーニーなんかは、子供の頃からディスティニーランドの魔法に憧れていたから、今は魔法使いになれたんだ、諦めなければ夢は叶うんだ、などと言っていたが。


そう言えば、俺もかつては、星の距離を動かして……、などと考えていた時期があったな。SFが好きでさ。ガキの頃の妄言だった筈だが、心のどこかで思い続けていたのかもな。


スキルとは、その生き物の願いであり、意志であるのかもしれない。




まあ、そんな感じで仕事を終わらせる。


天海街の住民、現在四千人くらい?が、冬を越えるのに必要な燃料を政府から対価として送られた。


ギャラをもらったので余計な話をせずに帰る。


そして喫茶店ディメンション、再開店。


めちゃ美味なコーヒーを出す、飯も美味いがマスターがクズな謎の店。


それが喫茶店ディメンションだ。


……イカれた名前だが、これは俺のスキルが空間系だからって訳じゃない。好きなSF映画に出てきた宇宙船の名前からとっているだけだ。


さあ、今日も天海街端っこの洋館で臨時開店だ。


「んー、んまい」


コーヒーんまい。


………………。


もう五月か……。


「しかし誰も来ない」


お菓子もジュースもあるのに女子高生と女子大生が来てくれない。


可愛い女子高生と女子大生を眺めつつコーヒーを飲むのが俺の楽しみなのに。


「何故だ?」


つーか揚羽もいねえ。


あの野郎、サボりか?


「あ、店長!」


「揚羽テメー、バイトだろうが。俺はお前に会いたいがために店開いてるんだぞ」


「えっ……♡」


「女学生を眺めたくてオサレで安めの喫茶店やってんだよ俺は」


「そんな理由だったんですか?!!」


「前職はベンチャー企業の経営者で、機械学習を用いた解析ツールの開発と販売をしてて、一年で十億くらい稼いでたんだけどな、なんかもうめんどくさくなって会社潰したんだよな。やっぱ俺の天職は女学生を眺めることだわ」


「そして明かされる衝撃の過去?!!え?社長さんだったんですか?!」


「二年間だけな」


「す、凄いですね……」


「だが最近は、うちに女学生が来ない。これはおかしい」


「って、それは当たり前ですよ」


「何故だ?」


「みんな働いてますから!」


んー?


「あー」


そういや働けとか言ったかもしれんな。


俺はただ、下々の者達が汗水を垂らして働く平日の昼に、女学生を眺めつつコーヒーや酒を楽しみたいと思って言ったのであって、女学生が来てくれないなら意味はないな。


「みんな、その日の仕事をやるのでいっぱいいっぱいですからね……。ここでサボるなんてできませんよ!」


ふむ、確かに無料というと来づらいのかもしれないな。日本ではタダより高いものはないと言われているし、警戒されているのかもしれない。


そうなると、こうだな。


「貨幣制度を復活させよう」




俺は洋館の奥に籠り、鍛治魔法を使いまくる。


ダンジョンでは、割とレアメタルが手に入りやすい。


実際、オリハルコンやアダマンタイト、ミスリルのような、真の意味でレアなメタルの方がより貴重ということもあるが、それはそれとして。


まあ、銀でコーティングした武器なんかはワーウルフや吸血鬼、アンデッド系なんかに効くしね。


そんな訳で、この壊れた世界においては、金銀銅の値段はそこまで高くない。


金銀銅くらいなら二十レベルのダンジョンで採れるからな。


紙幣やただの硬貨じゃ駄目だ、国の信用が崩壊した今では、カネなんざケツを拭く紙にもなりゃしねえ。


そういう訳なので、昔の小判のように、硬貨そのものに価値がある状態にすればいい。


あーいや、価値はないんだが、一般市民から見れば「うわあ!金銀だ!これは高価だなあ!」ってなるだろ?ミスリルでもなきゃ価値ねえだろ!なんてのは俺くらいのもので、一般市民の気持ちになって考えるとやっぱりまだまだ金銀に信用はあるんだよ。


はい。


金貨、銀貨、銅貨を発行する。


鍛治魔法なら、寸分の狂いもない同じ硬貨を量産することも可能だ。材料と魔力さえあれば。


というか、金銀銅そのものの価値が重要なので、雑に鋳造とかしちゃっても全然いい。「とりあえず」のものだからな。


そうして発行した硬貨を、街の人に渡して取引に使うように指示した。


シーマとも協議して、経済的観点から色々と……、税金やら何やらと決めさせてもらった。


俺は腐っても経営者だった男だからな、経済関係はある程度は理解している。


もちろん、貨幣経済が今は復活させたばかりのため、いきなりたくさん税金を取ったりはできないが。


こういうのはあらかじめ少額でもいいから税の枠組みを用意しておいて、その金額を後々に増やすのが賢いやり方。日本政府という同業者もそうしているらしいよ?


そもそも貨幣経済がお遊び程度でも始まってもらえないと、みんな仕事しないんだよね。


殆どの奴らが、自分のことを「守られるべき避難民」なんて思ってやがる。とっとと現実を見てほしい、働かなきゃ死ぬんだぞお前らは。


そんな訳で、うちの喫茶店も安めだが値段を設定して、女学生を待つ。


さて、すると、だ。


「こんにちはー……?」


おっ、来た来た。


三ヶ月ぶりの客だ。


しかも、見たところ女学生。


良きかな。




学生達は午前に最低限の勉強をして、午後に仕事をしているそうだ。


昼と六時以降は休みで、その時に喫茶店兼定食屋となったうちの店舗で(臨時開店の洋館から街の店の方に戻った)何か食べていく、と言うのが基本になってきている。


揚羽も、暇を見つけてはうちの手伝いをしてくれるようになった。


ふむふむ、まあ、そうだな。


及第点かな?

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