第6話 クズには近所の女学生くらいしか信用できる人がいない

『そっちはどうだい、タツ?』


『どうやら、田舎の方には雑魚が多いらしい。レベルは十前後のやつが百体くらい攻めてきたな。俺一人で殲滅した。そっちは?』


『僕もタツみたいに、郊外の小さな街に洋館を建てておいたから、そこに身内を避難させたよ。こっちは割と都会の方だから、レベル二十くらいのモンスターが二百体くらい湧いたね。まあ、全滅させたけど。銃や弾薬もバッチリで、洋館では男の人や軍隊上がりの人達が警備してくれてる』


『……無事か?』


『お、ヴォルフ、そっちはどうだ?』


『む、母と、街の人達は無事だ。タツが柵を設置してくれたおかげで、弱いモンスターは入ってこれない。俺の街も田舎の方だから、強いモンスターは出ていない。備蓄もバッチリだ』


『シーマはどうだい?』


『義理立ての為に一応ロシアに戻ったってよ。そっちでモンスターを間引いて、自分の育った街をある程度安全にしてきたとさ』


『勘違いするな。ロシアに未練はないが、あそこはマーマとの思い出がある街なの。そこを化け物共に汚されるのは忍びないと思っただけよ』


『はいはい。じゃあ次は、住民に仕事を与えること、だね。なんだかシムな都市のゲームをやってる気分だよ』


はい、会議終了。




朝食後、俺は庭に出て、人を集める。


メガホンで話す。


『えー、皆さん、働いてください。街の周りには柵を張っておきました、一旦家に帰って下さい』


ざわざわし始める人々。


『スキルで見たところ、モンスターは柵から入ってこようとはしません。ここから一番近いダンジョンでも三キロメートル先です。取り敢えずは安全です。当面の食料はここにあるので、必要分を持って家に帰って下さい』


「本当に安全なのか?」


『さあ?』


「さあ、って……」


『一応、街の周りを見て回りましたが、急に音速を超える速度で移動できる飛行モンスターなんかが人を掻っ攫っていったら、お手上げですね』


「そんな馬鹿な!」


『不安な人は武器も支給しますんで、取りに来て下さい』


「そこの鎧の女は何なんですか?」


シーマを指して言う人々。


『いやぁ、この女は俺にもよく分からないっすからねえ……。仲間だと思いますよ、多分』


因みにフル装備状態の俺達は、アーニーがキングキャタピラーの繭の服とドラゴン革のローブと帽子にユグドラシルの枝にフェニックスの嘴の槍、ヴォルフがアダマンタイトのフルプレートアーマーと創造した盾、そしてフェンリル牙の魔斧、シーマがドラゴンの革の鎧とマント、そして自分で創造した魔剣二本。俺?八十レベルダンジョンでとれたマグナコットン製のシャツとズボン、ドラゴンの革の外套、そして鍛治魔法で作ったドラゴン爪の魔鉾槍。


色々試したところ、全員の装備がグレネードランチャー並の攻撃でも傷一つつかないことを確認してある。万一傷がついても生活魔法の『リペア』で直せるからな。完全複製で予備も作って渡してある。


「働くって言ったって……、何をすれば良いんだ?」


『ふむ、時に、貴方はおいくつで?』


「俺ァ……、今年で56だ」


『おお、俺の倍ですね。で、逆に聞きたいんですけど、56にもなって他人から指示されないと動けないんですかね?』


「それは……、だ、だけどよ、俺は肉屋なんだ、商品が入荷しねえと働けねえよ!」


『じゃあ、他の人を手伝うとか、商品が入荷した時のために店を綺麗にしておくとか、そう言うのあるんじゃないですかね?それでも仕事がないって人は、武器を持って柵の見回りをして下さいよ。見回りについては、このロシア人の女、シーマに聞いて下さい』


さて、こんなもんか。


解散、と。




解散したところ、揚羽、羚、昌巳が集まってきた。


「何?」


「何、じゃないですよ……!どうなってるんですか、これは!」


「昨日説明したよな?」


「それはっ!そうですけど……。私達、どうなっちゃうんでしょうか……」


不安そうにする揚羽。


ふむ……、それを言ったら戦力が足りないな。


スキル保有者を増やした方が良いだろう。


別に世界が滅ぶとかはどうでも良いが、世界が滅んだら俺の隠居生活が危ぶまれる。


俺が他人に施すのはそこに尽きるんだよな。完全に誰もいない世界で一人遊びしているのも虚しい、と。故にこうして、ある程度周りの人々の支援をしている訳だ。


で、スキル。スキルを身につけさせるなら若者の方が良い。長持ちするからな。


それも、裏切らない奴。


レベルアップでステータスが増えるんだから、男女に差はないとして……。


裏切らない、俺に惚れている女三人。


んー、言い方は悪いが、利用させてもらおうか。


「あー、家族を守る方法があるぞ」


「それは……?」


「お前らがダンジョンを攻略するんだ」




ショットガンを持たせて、ダンジョンを攻略させることにした。


この街の中にあるダンジョンは六つ。


それぞれ、レベルは、三、五、七、十三、十七、二十五。


人間の平均レベルが十くらいだから、この辺はヌルいな。まあ、油断すればレベル三ダンジョンでも十分死ねるが。


街の外にはそれこそ、十や二十じゃきかない程の沢山のダンジョンが近くにある。天海街から半径三十キロメートル内には、五十を超えるダンジョンが存在している。


今回は、レベル三のダンジョンを潰していきたい。


「そ、その、ここは?」


「ダンジョン」


「た、戦うんですか?!私が?!」


「ああ。まあほら、喫茶店にも店の周りを綺麗にする義務があるだろ?ゴミ掃除の延長だと思え」


「いやいやいやいや!無理ですって!」


「ほら」


「……これは?」


「フルオートショットガン。出所は秘密」


「むーりーでーすー!」


「俺もついていってやるから安心しろ、怪我しそうなら助けてやる」


「でも……」


「スキルを得るためには必要なことだ」


「私じゃなくって、警察官とか……」


「お前達が一番信用できるからだ」


「一番、信用できるから……?」


「こんな状況だ、下手な奴が強力なスキルを持つと大変なことになる。例えば、極論だが、放火魔が火を出すスキルを手に入れたら悪用するだろう?」


「それは、そうですけど」


「だから、強い力を持たせても大丈夫そうなお前らを連れてきた。分かってくれたか?」


「……はい」


納得された。


ショットガンを持たせ、ダンジョンに入る。


モンスターは……、スライムか。


楽勝だな。


「わあ、可愛い!」


「モンスターだから殺しにかかってくるぞ。弱いけどな」


「え、は、はい!」


ショットガンの撃ち方を教えて、後ろから抱きしめてやりながら、引き金を引かせる。


『ピギャ』


破裂して死ぬスライム。


「あっ、なんかレベルアップって聞こえました!」


「よし、その調子でレベル上げてけ。お前らもな」


「「はい」」


揚羽、羚、昌巳はショットガンを撃ってレベル上げに勤しむ。


やがて、レベルアップの恩恵もあり、貧弱な羚も俺の支えなしでショットガンを撃てるようになった頃、ボスのラージスライムと戦闘に。


所詮レベル三のダンジョン、移動距離は一キロもない。


「離れて、同じ方向から一斉にショットガンを撃て」


「「「はい!」」」


『ピギャァァァ!!!』


指示通りに動いて粉砕。


最後にダンジョンコアを揚羽が破壊すると。


全員が短い頭痛に呻いた後に。


「光魔法(中級)でした!」


「風魔法(中級)……」


「気功術(中級)っスね!」


ほう、引きがいいな。ガチャならSSRとは言わないがSR、星4つってところだな。


中級のスキルなら、鍛え方にもよるがまあ、レベル六十までのダンジョンで通用する。


そしてどうやら、ダンジョンの攻略をして、最上級の激レア有用スキルをボーナスとしてもらえるのは、最初の四人だけだったみたいだ。つまり、最初から最高のスキルを得られたのは、俺、アーニー、ヴォルフ、シーマの四人だけで、これからダンジョンを攻略していく人類はそんなにレアなスキルは手に入らないようだな。


あ、因みに同行していた俺もスキルをゲットした。


剣術(下級)だった。


俺の称号にファーストエクスプローラーがあるが、これは手に入るスキルが良いものになるスキルとは別枠の特典らしい。


他にも、セカンド、サード、フォースのエクスプローラーの称号があり、これらも手に入るスキルのレア度が上がる。


つまり、俺とその親友三人でダンジョンを攻略するのが一番良いスキルが手に入るってことだな。

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