第5話 説明会開催

『シーマ!お前はうちの周りで避難してきた人を集めろ!』


『了解。貴方はどうするのかしら?』


『迫り来るモンスターを始末する!』


俺は鍛治魔法で作った鉾槍……、ミスリルのハルバードを片手に、迫り来るモンスターを始末する。


幸い、現れたのは雑魚ばかりだ。


空間支配を使うまでもない。


鉾槍術の上達の為にも死んで行け!


ハルバードを振り回し、周辺の敵を薙ぎ払い蹴散らしながら破壊を撒き散らす。


今の俺は小さな台風ってところだな。


まあ、特に戦闘において困ることはない。


俺も上級までなら回復魔法が使えるから、四肢欠損くらいならどうにかなるし。


因みに、レベルは全然上がらない。自分より弱いモンスターは、倒してもレベルが上がりにくいらしい。そもそも、レベルは高いほど上がりにくくなる。


で、雑魚モンスターを粗方始末した後は、街の周りに鉄の柵を出していく。


鉄柵で街をぐるっと囲ったところで丁度日が暮れてしまった。


洋館に戻ろう。




「ただいま、大丈夫だったか?」


「ああ、モンスターはこちらには来ていない」


シーマに出迎えられる。


洋館には……、五百人くらい集まってるな。


「あれだね、戦時中の疎開っぽいね」


「ふむ、確か日本は爆撃をされたんだったかしら。そう言われると、当時の人々もこのように避難したのかもしれないわね」


そんな話をしていると、揚羽が走り寄ってくる。


「店長!テ、テレビ見ましたか?!」


「見てないね、ちょっと忙しくて」


「何やってたんですか?!ほ、ほら!見てください!」


そうやって、洋館の中に引っ張られる。


洋館のダイニングに設置した大型テレビ。


そこには、地獄が写っていた。


『撃て!撃てー!!』


『ぐああっ!!』


『畜生!山田一尉がやられた!』


『退け!早く!』


『怪我人の救助急げ!』


自衛隊が戦って、時々喰われて引き裂かれて、怪我人が溢れて、人が死んで。


まあ、俺は、美人が死ぬと心が痛むくらいのもんで特に人が死んだところで別になんてことはないが。対岸の火事ってやつだよね。


いや、日本の、世界の危機な訳だから、対岸の火事とは言えねえか?軒先が爆発炎上してる訳だからな。


でも身内に自衛隊とかいねえもんな、死なれても別に……。まあ、お悔やみ申し上げます、くらいかね。


俺は俺自身と、周りにいる美女が無事なら文句はないんだよなあ。


「店長、どうするんですか?!」


「揚羽、今日の晩飯は家族の皆さんと一緒にうちで食っていけ」


「そ、それどころじゃないですよ!!」


「んー、まずさ、お前が慌てて何か解決するのか?」


「それはっ……!しません、けど」


「取り敢えず、差し迫った問題として、飯だろ。あ、今日は家族の人らみんなで泊まっていって良いからな」


「……はい。そうですね、私達が慌てても、意味はありませんね」


「じゃ、飯作るから手伝え。料理ができる奥さん達も呼んでこい、厨房はあそこだ」


「はい!」


さて、と。


「被災地だし、定番のカレーか?」


取り敢えず、おばさん達と協力してカレー作り。


いやー、複製しておいた学校給食かよ、みたいなサイズの鍋や炊飯器を使う日が来るとは。


ははは!笑えねーな!


さてさて、おばさんが野菜の皮を剥いて、おばさんが肉と野菜を切って、おばさんが鍋を掻き混ぜて、俺が味付けして、おばさんと揚羽が配膳して……。


いやもう、マジで学校給食かよ、って感じ。


女子供から先に飯を食わせて、男共にも飯を食わせて、順番に風呂に入らせて、後は洋館の中で寝袋を配って寝せる。


うちの洋館はもう、何千平米の15LLDDDKK三階建てとかそう言う馬鹿げた屋敷だからな!六億もしたぞ!ハッハー!


「えー、おばさん達は、明日の朝飯も手伝ってもらうんで、六時半にはここに来てくださいねー」


そう伝えて解散。




次の日、予告通りにおばさん達と朝飯作り。


食料の有る無しではなく、手間の問題で、朝飯は混ぜご飯と漬物、味噌汁になった。


それを食って、俺はリビングでコーヒーブレイク。


朝はコーヒー飲みたいよね、本当は朝はコーヒーとパンなんだけど、みんなは米が良いって言うから……。


パン派は日本では迫害されてしまうのだ。


で。


「何か用か、揚羽?」


「何か用か、じゃないですよ店長!何事ですか?!」


「何事って……、何がだ?」


「今の現状とか日本はどうなったのかとか何でこんなに食べ物を溜め込んでたのかとかなんでこの状況でゆっくりしてるのかとかあれとかこれとか色々あるじゃないですかー!!!」


んっんー?


「まあ落ち着けよ、ほら、そこにジュースがあるから飲め」


「はい……」


他にもおっさん共が現れる。


えー、勘弁してよ、爽やかな朝をおっさんの顔で汚さないでくれる?


朝一で揚羽に会えたのは嬉しかったんだけどおっさんはNG。


「私からも聞きたいことがあるのだが」


「あ、お父さん」


「え?ああ、揚羽のお父さんか。いつもお世話になってます、揚羽は働き者で助かってますよ」


「いやいや、あんなに沢山バイト代を出して下さってこちらが助かってますよ。揚羽は昔から手のかからない子で……」


「お父さん!」


「あ、ああ、すまない、そうだったな。羽佐間義辰さん、でしたな?私は温泉旅館、しろがね屋の館長をしております、聖川浩一郎と申します」


「ええ、揚羽から聞いていますよ、自慢の温泉旅館だと。それで、実家が温泉旅館だから洋風なことをやってみたいと言ってうちに来ましたからね、そう言えば」


さて、取り敢えず、揚羽の親父を座らせる。


「飲み物は?俺のブレンドしたコーヒーがオススメですよ」


「あ、ありがとうございます。……おお、普段はコーヒーはあまり飲まないのですが、これは味わい深い……」


ふむ、美味いコーヒー淹れるのは特技の一つだ。


褒められて悪い気はしねえな。


「さて、そうですね……、貴方は質問がある。この俺に質問をしに来た。何から聞けばいいか分からないが質問をせずにはいられない!……違いますか?」


「その通りです、聞きたいことがたくさんあります」


「だが……、ごちゃごちゃした話は時間の無駄だ。それはお互いのためにならない。だからこうしましょう」


俺は紙とペンを出す。


「紙とペンがあります。貴方達は、俺に何を質問するか、それを話し合って決めてください」


「そうですな、聞くことを我々の内で整理しておきます」


「昼過ぎ……、そうですね、三時頃にまたここへ来てください。そこで答えます。揚羽もそれで良いな?」


「ええ」


「はい、分かりました!」


俺はそう言ってから、自室に篭ると見せかけて、転移でドイツへ飛ぶ。


昼飯は冷凍うどんがあるから茹でて食べて欲しいと伝えてある。卵とネギ、揚げ玉もあるし、缶詰もあるから適当にやってくれ。


まあ、ドイツでは、ヴォルフがなんとかやっていけているようだから、鉄柵の設置をしてやって、また時間があるときに城塞を築きに行く約束をして別れる。


……あいつ大丈夫か?防御特化タイプだからな。何だかんだ言って完全複製がある俺が一番楽してるな。


飯はハンバーガーを異次元に仕舞っておいたのを空間支配で出して食った。アイテムボックスと変わらない効果だし、今後はアイテムボックス機能と呼ぼう。




「それで、質問を受け付けましょう」


三時のリビングには沢山のおっさんと、揚羽、羚、昌巳とその親がいた。


俺の隣にはシーマがいる。


揚羽の親父は、紙を数枚持っている。


「えー、まずですね。現状、日本で何が起きているのか、分かりますか?」


問われる。


「原因不明のダンジョンの爆発的増加と、それに伴うモンスターの大量発生。これが世界中で起きている」


答える。


「ダンジョンとは?」


「モンスターが湧く異次元空間のことですね」


「モンスターとは?」


「テレビで見たでしょう?人間を殺そうとしてくる化け物ですよ」


「……何故、その、ダンジョンの爆発的増加?が起こるのを知っていたのですか?」


「答えは簡単、『予測していた』。数年ほど前からダンジョンは世界各地にちょこちょこできていましたが、最近はダンジョンができるスパンが短くなっていた。それを聞いた仲間が、俺達の手に負えないほどのダンジョンの集団発生を示唆し、それを危惧した俺達は、ありったけの資材や食料を集め、避難用の土地を購入し、インフラ、ライフライン周りを整備しておいた」


「で、では、貴方は、ダンジョンとモンスターの存在は知っていた、と?」


「ええ」


「それを知っておきながら、仲間以外には話さなかった、と言う訳ですか?」


「そうですね。信用ができる仲間以外には話しませんでした」


「何故、警察や軍隊に知らせなかったのですか」


「ははは、勘弁してくださいよ。ゲームの世界みたいにダンジョンができて、そこにモンスターがいるなんて言ったら、精神病院送りでしょうに」


「……では、このような事態になることをなんとなく予想して、このような館を?」


「あ、いえ、館は趣味で作りました。でも、食料や電気ガス水道下水道などの整備は、こうなることを予測しておいたので、しっかりできてますね」


「……何故、ダンジョンとモンスターの存在を知っていたのですか?」


「偶然ですよ。たまたまダンジョンを発見し、そこを攻略し、ダンジョンの出現を感知できるスキルを得ただけです」


「ダンジョンの出現を感知できるスキルというのは、どのようにして身についたのですか?」


「ダンジョンの一番奥にあるダンジョンの核を破壊すると、スキルという一種の超能力を得られます」


「では、貴方は超能力者だと?」


「そう思っていただいて構いません」


だが、具体的に何ができるかは話さない。


良いように利用されたくないからな。


「現在で世界にはどれくらいのダンジョンが?」


「世界で二百万くらい、日本には二万ちょいですかね」


「食料などの貯蓄はどれくらいあるのですか?」


「ここにいる人全員で五年、くらいですかね」


「貯蓄は、その、分けてもらえるんですか?」


「良いですよ。欲しければお裾分けします」




そんな感じで質問を受けて一時間くらい話したかな。


話すのってめんどくさいよね。


メールで済ませて欲しいが、この世界ではもはやネットワークは繋がらない。


さあて、どうしようか?

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