第2話 クズ無職、友を呼ぶ
もしも、自分が超能力者になったとして、それを悪用しないで一生慎ましやかに過ごす、なんて奴はいるのだろうか?
いや、いねえな。
透視能力があれば嫌ってほど覗きをするだろ?
俺?
俺はまあ。
「よし、フランス料理三つ星店の料理の複製完了、日本各地の和牛複製完了、築地丸々複製完了、高級寿司複製完了、高級中華複製完了、ゲームソフト複製完了、図書館巡りで本の複製完了、映画DVD複製完了、酒とタバコ、薬、兵器、車、重機、日用品、ガソリンなど資材、プラモデル、美術品、城塞都市の城壁、レアメタル……、あとは何かあった時のために発電所や浄水施設でも複製するか?」
バリバリ悪用してる。
完全複製でありとあらゆるものを複製し、それを一瞬で空間支配による異次元ポケットに収納。
俺は、世界中のものを見て、俺が価値のあると思ったものを複製した。
認識できる範囲は全てスキルの射程範囲だから。
一本数百万のクソ高い酒も、一台何億のスーパーカーも、一機何百億の戦闘機も、全部複製。
何せ、見るだけで良いんだ。
俺セレクション、世界の価値あるものは思いつく限り複製済みだ。
移動も楽だな。
空間支配のスキルは、自分の認識内ならどこでも、空間に関することならなんでも、というスキル。
そして究極地図は、自分の認識範囲を世界中に広げるスキル。
シナジーってやつだな。
つまり、飛行機代ゼロで移動し放題、入国禁止の中東だろうとどこへでも自在って訳だ。
因みに、これらのスキルは何を消費してるのかと言うと、多分魔力的なものだと思う。
けど消費は軽く、発電所一つ異次元に仕舞って1パーセントも消費しない。
色々試したところ、破壊するのが一番消耗することが判明。
日本からブラジルまで転移したところ、5パーセント程消費するのに対し、1メートル四方の空間を完全に破壊したところ10パーセント程消費した。
でも、使っているうちに最適化されてきて、今では殆ど燃費について考えることはなくなった。
それに、単に殺すだけなら、軽く空間を捻ったり切断すれば、敵は捩くれて真っ二つになり死ぬ訳だし。
空間の完全破壊なんて物騒なもん、使うときは来ないだろう。
そして、究極地図を見ていると。
「ん、ダンジョンか」
ダンジョンの出現地も分かる。
ダンジョンは二、三ヶ月に一つくらいのペースで世界中にランダムにできている。
そんで、確認できたのは、ダンジョンには一番奥に大きなクリスタルがあって……、これをまあ、俺は、ダンジョンコアって呼んでるんだが、これを破壊すると、ダンジョンクリアになる。
ダンジョンをクリアすると、ダンジョンの中からダンジョンで生まれた生物以外がいなくなった瞬間、ダンジョンは消滅する。
そして、コアを破壊した瞬間、破壊した人間にスキルが付与される。
俺は先日、『鑑定』という中級スキルを得た。
この鑑定ってやつがまた便利で、人物や物品のステータスが分かる。
食べ物とかに使うと、食えるかどうかとかが分かるし、人間や動物に使うとステータスや保有スキルが見れる。
俺自身に使ったところ……。
NAME:羽佐間義辰
TITLE:ファーストエクスプローラー
RACE:人間
AGE:26
SEX:男
JOB:旅人
LEVEL:26
HP:35
MP:42
STR:26
DEX:26
VIT:24
AGI:28
INT:20
MND:22
LUK:18
CHA:20
SKILL
経営(中級)
料理(中級)
格闘術(中級)
プログラミング(中級)
空間支配
完全複製
究極地図
ダンジョン生成
魔力増加(微小)
毒耐性(小)
麻痺耐性(小)
鑑定
経営、料理、格闘術、プログラミングは元から持っていたスキルらしい。
魔力増加(微小)は空間支配で遊んでたら少し前に習得した、初級スキルだ。多分、ダンジョンに頼らなくても、訓練である程度のスキルは得られるってことだな。
毒耐性(小)と麻痺耐性(小)はダンジョンコアの破壊で手に入れた。どちらもレアリティ的には下級なスキルだ。
最初に最上級スキルを得たのは幸運だったってことか。
暇な時間に街の人々を鑑定して回ったが、どうやら常人なら、レベルも各能力値も10〜20と言ったところ。
レベルが上がると、各数値が1〜3くらい増えることも確認。
しかし、幸運と魅力は増えなかったし、知恵も少ししか増えてない。その辺は経験でどうにかなるものじゃないってことかね?
それで、だ。
このレベルアップやスキルと言った法則は、俺以外の奴にも適応されるのだろうか。
と、言う訳で、今回のダンジョンには、他の奴を連れて行ってみようと思う。
俺には、信用できる……、いや、信用……、まあ、信用はしてないが口は堅い友人が三人いる。
親友って奴だな。
そいつらを、今回のダンジョンの発生地、アメリカの山奥に集める。
俺はアメリカの大学に留学して、三人の友人を作った。いや、作ろうと思ってできたと言うより、気がついたら付き纏われていたみたいな……。
まあ……。
『お前らの顔は見たくなかったんだけど……、思いの外俺に頼れる人がいなかったって言うか……。ってか、ムカつく顔してんなー、お前ら』
『え?何で久々に会った親友に煽られてんの僕?』
『……お前も、相変わらずだな』
『と言うより、会社を潰してどこに行っていたんだお前は。私がどれだけ探したと思っている』
はい、こいつら。
全員、大学の同期、同い歳。
まずこいつ、いけ好かないメリケン金髪野郎。
もうね、出てるよね、いけ好かないオーラが。
いけ好かないって辞書で引いたらこいつの名前出てくるんじゃね?みたいなハンサム男。
まあ俺も負けてねーけど?!俺もイケメンだけど?!!
このイケメンは、アーノルド・ガルシア。
ベンチャー企業の社長をやっているいけ好かない金髪イケメン野郎だ。
次はこの無口なヒットマンみてえな男。
このゲルマンヒットマン。
目つきが鋭い茶髪の大男。
ドイツのとある大企業で活躍中。
ヴォルフガング・ラインハルト。
あんまり喋らねえから怖いんだよな。しかも俺より強いし。あ、今はダンジョンでのレベルアップで勝てると思うけど。
最後、この露助の女。
どっからどう見てもマフィアの女ボス。
長い金髪で咥えタバコ。
背も高め。
俺の会社にいたけど、会社を潰した時に追い出したはずだが……。
セラフィーマ・ポチョムキナ。
……まあ、良い女なのは認めるけどな!この女とはちょっと因縁があるんだよ!!
『でもまあ、わざわざ貴重な有給を俺の為に消費してくれたことは嬉しい、ありがとう、友よ』
『……気にするな』
『それで?ここで何を?キャンプかな?いやー、良いね!僕もコンクリートジャングルに住む生き物だから、たまには森に帰りたくなるんだよね』
『しかし、キャンプ用品は見当たらないが』
俺は全員にショットガンを渡す。
『『『……遂に強盗を?!!!』』』
『違うわボケ!!!……信じられないかもしれないが、ここを見ろ』
『洞窟……?不自然な洞窟だね?』
『入るぞ』
『えっ、えっ、なんかハンティングとかそういうの?』
『ある意味ではそうだな』
さて、このダンジョンはー?
『ギャッギャッ』『ゴギャガギャ』『ゲギャギャ』
ゴブリンか。
『見ろ、ゴブリンだ』
『え?……は?』
『………………』
『これは、何とも……』
『やれ』
『な、何をかな?』
『殺れ』
『い、いやいやいや、もしかしたら友好的な種族かも』
「おらクソゴブリン共!この金髪野郎を食い殺しちまえ!!!」
『『『『ギャガーーー!!!』』』』
一瞬で囲まれるアーノルド。
『う、うわ、あ、あー、や、やあ!人類以外の知的生命体とのファーストコンタクトだなんてとても光栄だよゴブリン君!ええと、あー、ぼ、僕はアーノルドうおわあああ!殴ってきた!!!』
『はよ殺せ、死ぬぞ』
『ああこの、クソ!死ね!!!』
ショットガンをぶっ放すアーノルド。
『お前らも撃て。死ぬぞ』
『……む、分かった』
『しょうがないわね、こうなったらやるしかないわ』
そして、全滅するゴブリン。
『『『……なんか、レベルアップとか聞こえたんだが』』』
『レベルアップだよ』
『それは、あれかな?最後の幻想とか龍の探求とか、そんなノリかな?』
『そんなノリみたいだな』
『は、ははは、まさか、そんな馬鹿なことが……』
『ふむ、俺が知らず知らずの内にヤク中になっていた、って線はこれで消えたな』
さあ、進むか。
次は、こいつらがスキルを得られるか、だな。
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