道南群雄記
@uRushou
第1話 日の出①
本作品は完全なフィクションです。
1371年、安東助伴は幕府の命を受け道南に入ると、そこにいた倭人やアイヌの勢力を平定。その際に11の有力家臣や服属した勢力に領地を分け与えた。その後彼らはそれぞれの領地に居城となる"館"を建設し、道南地域には安東氏が建てた大館を含む12の館が出来上がる。
安東に忠誠を誓う言葉を並べる裏で、それぞれの勢力は待ち続けていた。
いつか自分たちが安東氏を討ち、新たなる道南の覇主となる日を…
約100年後
1483年は間違いなく安東一族にとって最悪な一年であった。それまで5代100年にわたって安東氏に支配されてきた道南地方で最大の服属勢力であった松前一族(松前館)が反乱を起こし、瞬く間に大館は陥落した。
一族は皆殺されてしまった。
前文を撤回しよう。ただ一人だけ生き残りがいた。
津軽沖に一艘の密輸船が浮かんでいた。
親や兄弟を皆殺しにされた鶴千代(幼名)を抱え、安東家の家臣、足立遊山は燃える大館を遠くに見ながらただ茫然と立ち尽くしていた。
14年後 十三湊
「鶴千代!剣術の鍛錬の時間だぞう!逃げるな!」
そう叫ぶ男を後目に鶴千代はまた屋敷を抜け出していた。
この男こそが、足立遊山である。
14年前に幼い鶴千代を連れて道南より逃げ延びてその後は持ち前の才能で商人となり、今は十三湊に屋敷を構えるに至った。
松前からの追手が来ないように遊山は名を利嗣に変え、鶴千代は彼の養子とした。
「全く義父上は本当にうるさいものだ!鍛錬より町で遊んだ方が断然楽しい。十三湊は欲しいもの何でもそろっている!
しかし…妙だな…町は以前より活気が少なくなっているような気がする…」
そこで鶴千代は絹売りの商人をつかまえて聞いた。
「町の活気がなくなっている気がする。なぜかわかるか?」
「しらねぇのか?最近この辺りに山賊が現れてな、荷車を全部奪われてちまうんだ。官兵も派遣したが、無駄だったさ。おかげで陸路からの品物は何一つ入って来ねえ。憎いもんだ。」
これを聞いた鶴千代は怒った。
「山賊などこの鶴千代様が葬ってやる!」
そう言って鶴千代は山に続く道を駆け上って行った。
「おいガキ!馬鹿にしてんのか?」
一瞬で鶴千代は負けた。
「さーて金目のものは…ん?この玉は…?」
「やめてくれ!その玉は父の遺物だ」
「なるほど…まさかおまえ、名前を鶴千代というのか?」
鶴千代は黙って頷いた
「やっと見つけた!あなたが鶴千代様ですね⁉︎
すぐに行きましょう!お父上の敵を…」
「え?あ?ちょっ待って何を言っているんですか?よくわからないですごめんなさーい」
言い終わらないうちに鶴千代はそそくさと逃げて行った
「⁉︎待たれよ鶴千代様!どちらに行かれるのですか⁉︎追えー!」
「義父上?帰りましたぞー?」
屋敷は陰鬱としていて人気がしなかった
おかしい…いつもは義父や使用人が飛び出してくるはずなのに…
「義父上?どこですか?」
利嗣の寝室に入ったところで、鶴千代は何かを蹴ったような気がした。
あまりにも暗く、よく見えなかったので鶴千代は蝋燭に火をつけ、それを照らしてみた。
利嗣の首が、そこに転がっていた。
道南群雄記 @uRushou
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