第45話 集まる仲間たち

「どうかしたのか?」

「あ、いや、なんでもない……」


 今は厨二病全開の剣聖様より、警察官殺しの犯人だ。やつを捕まえなければ、あのスッポン刑事がうちにやって来るのも時間の問題だ。


「おっ、噂をすれば何とやらだな」


 おーい! と手を振る響の視線の先には、【黄昏の空】のメンバーと、みみちゃむ、それに鬼助さん達の姿もあった。


「あっ、貴様!」

「なんでいつも不死みんと一緒にいるのよ!」


 みみちゃむとエルミアは相変わらず犬猿の仲で、顔を合わせると威嚇するように喉を鳴らしている。


「こいつは最弱王の不死みんじゃねぇか? オレはてっきりお前がアンデッドマンと一緒にいるもんとばかりに……」


 鬼助さんは俺の顔を見るなり、不安そうな表情で頭をかいていた。


「相変わらず鈍いやつだな」

「あン? 藁しべ小僧がなんか言ったか?」

「誰が藁しべ小僧だ! この飲んだくれ!」

「なっ! 藁に隠れてママぁーって泣いてたのはどこの誰だったけな?」

「泣いてないわッ! 勝手に脚色するな! 僕のイメージが悪くなるだろ! あと、許可してないのに僕を映すなっ!」

「勝手に映り込んでんのはお前の方だろ!」

「何をッ!」

「っんだよッ!」


 二人の関係も相変わらずだな。


「こんな時に揉めてる場合じゃないだろ?」

「まったくだ。拙者らは凶悪犯を追わねばならんのだぞ。お主ら、相手がモンスターより厄介な殺人鬼だということを忘れているのではないだろうな?」


 やれやれとため息交じりに最上さんが言い、国東さんがそれに続いたことで、僅かに場の空気が引き締まった。


「30までニートだったおっさんに言われたくないな」

「それに関しちゃ同感だ」


 二人の意見が珍しく一致する。


「おおっ! 清酒は元ニートなのか! 主人公適正有りというやつだな!」


 エルミアは国東さんに羨望の視線を送っているが、ニートを褒められた本人は戸惑いを隠せず、むしろとても恥ずかしそうだった。


「……なんでニートが主人公なのよ?」

「貴様は世情に疎いのだな」

「どういう意味よ?」


 アニメを世情というのは少し、いやかなり違うと思ったのだけど、できるだけ関わりたくないので、黙っていることにした。


「それより、早く探した方がいいんじゃないですか?」

「捕まえたらギルドから金一封出るみたいなんで、他の探索者シーカーたちも参戦してるみたいですし」


 とは、【黄昏の空】のメンバーの柳麻里奈と白銀沙也加だ。


「それもそうだな」



 話し合いの末、単独行動は危険だという結論に至り、響たちは【黄昏の空】として三人で行動することになった。鬼助さんは国東さんと、みみちゃむは最上さんと共に行動することに決まった。


 みみちゃむは最初、俺と一緒に行動したがっていたが、今の俺はFランクの最弱王。よって、エルミアに地上まで送ってもらい、外で待機することを伝える。


 一瞬、響とみみちゃむが複雑そうな表情を見せたのが気になる。まさかとは思うが、Fランクの俺も捜索に加わった方がよかったのだろうか。そんなことはないよな。


「そりゃ構わねぇけどよ、エルミアはどうするんだ? というか、二人は知り合いだったんだな?」

「私なら問題ない。宗介を地上に送り次第、アンデッドマンと合流する」

「そりゃ頼もしい」

「やはり彼も来ていたか」

「当然と言えば当然よね。濡れ衣を着せられているんだから」


 エルミアは、万が一何かあった時にすぐに連絡を取れるように、みんなとSNSのアカウントを交換していた。


「宗介は交換しなくて良かったのか?」


 と聞かれ、俺は苦笑いしながら、


「ややこしいことになるから」


 と答えた。



 その後、エルミアと地上に向かうフリをして、周囲に誰もいないことを確認してから、俺は素早くアンデッドマンに変身した。次に、自動追尾カメラも起動させ、LIVE配信を開始する。

 これで俺が犯人ではないことを全世界に証明できる。


 :アンデッドマン!

 :絶対に配信すると思ってたぜ!

 :俺なんて昨夜から正座待機してたわ!

 :容疑者Xの生配信、こんなの見ないわけないよな

 :ハイ、仕事サボりましたww

 :同志いたw

 :私も早退しました(`・∀・´)エッヘン!!

 :天使ちゃんあれ仮病だったの!?

 :おい、天使! 貴様明日覚えていろよ!

 :↑の三人どういう関係だよw

 :一日古参て知ってるかwww

 :んなことより同接五万キタ――――

 :まだ開始一分なんですけどww

 :こりゃ爆伸び間違いなしだな

 :神回待ってました!

 :みんな落ち着けって!

 :アンデッドマン……最初に一つ聞かせてくれ。……俺たちは信じていいんだよな?


 一斉に止まるコメント。

 彼らのことは顔も名前も知らないけど、瞼を閉じると彼らの姿が浮かんでくる。

 きっと画面の前で、俺の言葉を固唾をのんで待ってくれている。

 そんな彼らに、俺は自らの口で伝えなければならない。


 息を吸い、ゆっくり吐き出してから、俺は宙に浮く小型カメラに視線を向けた。


「私は亡き両親に誓って、潔白だ!」


 すると次の瞬間、


 :しゃぁああああああああああっ!!!

 :キタ――――――!!

 :そうだと思ってたぜ!

 :正義の使者が人殺しなんてするわけないもんな!


 凄まじい勢いでコメントが流れ始めた。


 :その言葉を聞ければもう十分だ!

 :俺たちはお前を信じるぜ、アンデッドマン!

 :彼を犯人呼ばわりしたクソ共見てるか!

 :当然、今から無実を証明するんだろ?

 :真犯人を捕まえるんだろ?

 :どうなんだ、アンデッドマン!


「もちろんだ!」


 俺は力強く頷いた。


 :そう来なくっちゃ!

 :みんな拡散よろしくだぜ!!

 :もうしてるww

 :全世界にお前の諦めない不屈の精神をみせてやれ!

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