第14話 挑戦

 リスナーの試験に挑戦するため、魔物の捜索を始めると、すぐにこちらに向かって歩いてくるゴブリンを一体発見した。


 :アンデッドマン慎重にいけよ

 :いいとこ見せようとしなくていいんだからな

 :物陰に隠れて近づいてくるのを待て

 :戦闘の際は、まずは落ち着いて背後を取ってください。くれぐれも正面に回らないでくださいね

 :戦闘の基本は不意を突くことだということを忘れるなよ


 相変わらずウチのリスナーには指示厨が多い。色々とアドバイスしてくれる分には非常に有り難いのだが、過保護気味なコメントには少々うんざりしていたりする。

 俺はもう、最弱王と呼ばれた【不死みん】ではないのだ。


 :つーかアンデッドマン武器は?

 :こいつ丸腰じゃねぇか!?

 :うそだろ!?

 :何考えてんだよ!

 :一旦引き返してください!

 :おい、コメントを見ろ!


 うるさいなーと思いながら、俺はゴブリンに標準を合わせるように手のひらを突き出す。それから素早く3つのスキルを発動した。『スライム生成』『強度調整』『特質変化』これらのスキルを組み合わせたオリジナルスキル『釘』を発動する。『操作範囲拡大』の効果で手のひらから放たれた『釘』が、ゴブリンの頭部を粉砕した。


 :( ⊙⊙)!!

 :‎(⊙_⊙)

 :(⊙д⊙)

 :Σ(⊙д⊙)

 :Σ(๑⊙д⊙๑)

 :Σ(  Д )ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙


 相変わらず芸が細かいリスナー達だな。

 驚くにしたってもう少し驚き方ってものがあるだろ。わざわざ顔文字合わせてきているところが何か嫌だ。


 :いや、あの、マジで今の何?

 :気のせいかな……スキル? 魔法? 使ってなかった?

 :なんか手のひらからパシュッ! って出てたよな?

 :手からスライム出してませんでした?

 :鉄だったような……?

 :これ、中身本当に最弱王か? 

 :別人説あるんじゃね?

 :いえ、でも声は完全に一致していますよね?

 :ですです

 :不……あいつがスキルや魔法を使えるわけ無いだろ。みんなあの忌々しい呪いの存在を忘れたわけじゃないよな?

 :なら、今のは何?


「君たちは何か勘違いしているようだが、私はとっても強いのだ! さて、残り四体を探すとしようか」


 俺の、アンデッドマンの強さにコメント欄がざわついている。今まで逆パターンばかりだったから、何だかすごく新鮮な気分でニヤニヤが止まらない。フルフェイス着用しててよかった。


 それから10分と経たずに残り四体の魔物を討伐した俺は、無事にリスナーから出された試験を突破することができた。


「ラッキー」


 モンスターを倒すと稀に魔石と呼ばれる石をドロップすることがある。いわゆる換金素材というやつだ。魔石にはとてつもないエネルギーが宿っているらしく、ダンジョン協会が高値で買い取ってくれる。浅い層ではめったに手に入らない貴重なアイテムだ。


 何はともあれ、これでリスナー達も三階層に進むことを許可してくれるだろう。


 :アンデッドマンめちゃくちゃ強くないか?

 :相手が雑魚モンスターだからだろ

 :その雑魚に苦戦してたのは誰だよ

 :弱いよりはいいじゃないですか

 :それはそうなのだが、なんか釈然とせんな

 :独身に同感

 :おい貴様、私のことを独身と言うな!

 :は? そういうコテハンにしてんのはお前だろ。嫌なら変えろ

 :私のコテハンは華の独身貴族だ。ちゃんと〝華の〟と〝貴族〟を付けろ! 独身だけだと私が売れ残りみたいに見えてしまうだろ!

 :だる。これだから婚期逃したおばさんはきついんだよ

 :なっ!? 私への誹謗中傷は許さんぞ! こっちは出るとこ出ても構わんのだぞ!

 :まじになんなよ、お・ば・さ・ん♡

 :◯す!

 :コメ欄汚すな

 :レスバならよそでやれ

 :皆さん仲良くやりましょう

 :そんなことよりアンデッドマンがめっちゃ目立ってるぞ

 :なに!?

 :うわ、めっちゃ怪しまれてるな

 :そんな恰好でダンジョンを歩き回るから……

 :みんなドン引きしてますね

 :新種のモンスターと間違えて警戒してるやつもいるぞ

 :草

 :そりゃこんな変な恰好したのが突然現れたら焦るだろww

 :街中だったら即通報されてたなw

 :攻撃されなくてよかったです


 リスナー達はひどい勘違いをしているようだ。彼らのリアクションは、イベントでヒーローと対面した時の、感動に打ち震える子供たちのそれなんだよな。今の俺は、戦隊モノで後から加わる強キャラみたいでかなりかっこいいもんな。


「とう! せや! びしゅっ!」


 :あれ、何やってんだ?

 :なんかポーズ取り出したけど……

 :誰か解説頼む

 :恐らくですが、アンデッドマンさんはファンサービスをしているのかと

 :ファンなんてどこにいんだよ!

 :羞恥心はどこにいった!

 :ノリノリだな

 :こういう一面もあったんですね。なんか可愛いです

 :可愛いのか、これ?

 :すまん。おっさんにはヤバい奴にしか見えねぇわ

 :おっさんだけじゃねぇよ。みんなどんどん距離を取り始めてるし

 :いや、普通にこえーもん

 :面白がって動画回し始めてるやつもいるな

 :あー、これは晒されるの確定だな

 :話題のダンジョンに現れた変態ってか?

 :バズったりしてな


 5分後、気づいたら俺の周りから人が消えていた。

 なんで……?


「……」


 :あ……

 :ぴえん

 :皆さんいなくなってしまいましたね

 :(´;ω;`)仮面の下はこんなんじゃね?

 :(இωஇ`。)こっちだろw

 :(;´༎ຶД༎ຶ`)これかもwww

 :お前らセンスありすぎ

 :容赦ねぇ


「歩きやすくなったし、まあいいか」


 何事もポジティブに考えることが大事だ。


 :さすがの鬼メンタル

 :マジで見習いたいわw

 :根性だけはすげぇんだよな

 :あっ、ここって

 :だな


 やっと前回、ドラゴンブレスを受けた場所まで戻って来ることができた。羽川さんの話だと、ここから少し行ったところに三階層に続く階段があるらしい。

 三階層にはこれまでのモンスターの他に、新たなモンスターも出てくるらしいので、少し楽しみだったりする。『墓荒らしの簒奪者』によって得られるスキルも増えるかもしれない。


「よし!」


 :随分と張り切ってんな

 :初の三層ですからね

 :過度の期待は良くないんだろうけど、嫌でも期待しちまうよな

 :あるといいな

 :必ずあるよ

 :報われろよ





――――

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