第5話 スキルツリー
【スライムの死骸を確認致しました。スキル:墓荒らしの簒奪者が発動されました】
「え……?」
突如、脳内で鳴り響く謎の音声に戸惑いを覚えていた。
「『墓荒らしの簒奪者』って……『器用貧乏』の代わりにあった
スライムを倒したことにより、
説明欄には『貴方は死者から力を奪い取る』と記されているが、死者から奪う力が具体的に何を指すのか理解できない。そもそも死者から力を奪ったところで、それが具体的にどのような影響を及ぼすのかも分からなかった。
「これは……!?」
『ボーンアタック』の消費MPを確認するためにステータス画面を開いた俺は、自身のステータスが先程確認したときと異なっていることに気がついた。
【不死川宗介】
レベル:1/10
HP:15/32
MP:5/18
SP:3
経験値:15/30
種族:スケルトン
腕力:5
耐久力:10
魔力:7
敏捷性:4
知性:4
運:2
スキル:『ボーンアタック』『スライム生成』
魔法:なし
墓荒らしの簒奪者:貴方は死者から力を奪い取る。
「どういうことだ?」
スライムを倒したことで経験値15を獲得しているものの、レベルは相変わらず1のままだ。それにもかかわらず、ステータスが上昇している。
たしか、前回確認したときのステータスはこんな感じだったと思う。
【不死川宗介】
レベル:1/10
HP:15/15
MP:10/10
SP:0
経験値:0/30
種族:スケルトン
腕力:3
耐久力:4
魔力:3
敏捷性:3
知性:3
運:1
スキル:『ボーンアタック』
魔法:なし
墓荒らしの簒奪者:貴方は死者から力を奪い取る。
『HP』最大値が17も上昇している。『MP』最大値も8増えているし、その他のステータスも明らかに増加していた。
――それに。
「スキルが増えている」
これまでスキルを習得したことがないため、詳しくは知らないが、受付の羽川さんいわく、スキルや魔法はレベルが上がることで貯まる『SP』を消費することで、職業別能力解放画面――通称スキルツリーから取得できるらしい。
もちろん、俺はスキルツリーから『スライム生成』とかいうスキルを取得した覚えはない。第一、先程まで『SP』が0だったのだ。無意識に行ったということもまずありえないだろう。
――となると。
やはり、先程脳内で流れた音声が関係しているのだろう。
【スライムの死骸を確認致しました。スキル:墓荒らしの簒奪者が発動されました】
あれは、スライムの能力を奪い取ったことを知らせるアナウンスだったのか。
だとしたら、この
通常、ステータス値はレベルアップでしか上がらないはずだが、魔物を倒すだけで上昇するなら、これから俺のステータスはどうなるんだろう。
試しに体を動かしてみると、何となくだが、先ほどより体が軽く感じられる。
剣を振り上げてみるが、これは少し早かったようだ。
「ボーンアタックを使うとMPを5も消費するのか」
これまでスキルを取得したことがなかったので、これが多いのか少ないのかすら分からなかった。
「あと一回か」
MPやHPは基本的に時間が経つか、休息を取ることで回復する。ちなみに後者の方が前者よりも早く回復する。
MPのMAX値が18なので、最大で連続3回の『ボーンアタック』が発動可能ということだ。
これはかなり心強いのではないだろうか。今の俺の腕力値ではまともに剣を振ることすらできないので、しばらくは『ボーンアタック』に頼ることになると思う。
「最低でも腕力値をあと3は上げたい」
そうでなければ、おそらくロングソードを振ることは困難だ。
病院で待つ妹のためにも、できれば早くレベルを上げて、少しでも人間らしい姿に近づきたいのだけど、焦りは禁物だ。
スライム相手にピンチに陥ってしまうようでは、ゴブリンと出くわしてしまえば最悪やられてしまう可能性だってある。
「万全の状態になるまで、待ったほうが良さそうだな」
アンデッドだからか、体力的にはまったく疲れを感じなかったが、『HP』ゲージと『MP』ゲージの残量がどうしても気になってしまう。万が一に備えて休息を取りつつ、スキル『スライム生成』も試しておこうと思う。
先程はぶっつけ本番だったが、あのような戦い方をしていては命が幾つあっても足りないだろう。
骨だけど……。
スキル:『スライム生成』
効果:スライムを生成することが可能となります。
「うげぇ、なんだよこれ?」
もしや召喚系のスキルかと期待したのだけど、全然違った。
スキルを発動すると、手のひらからドロドロとスライムが無限に湧き出てくる。MP消費量は、スライムを生成した量によって変化するらしい。大体バケツ1杯分、約10リットルで1MPという計算だ。
しかし、これは一体何に使うのだろう。
スキル『スライム生成』は、単にスライムの死骸を生み出しているようにしか見えない。まったく使い道のなさそうなスキルにがっかりし、これは掃除が大変だなとため息をついた瞬間、スライムが自発的に一箇所に集まりはじめた。
「な、なんだ!?」
スライムは四方に広がることなく、まるで凝固したかのように一箇所に留まり続けていた。
――まさか。
と思った俺は、スライムに向かって「伸びろ!」と声をあげた。
すると案の定、スライムの塊がスーッと天井に向かって伸びはじめた。
「そういうことか!」
これはスライムの死骸ではなく、体の一部なのではないだろうか。通常のスライムには人間でいうところの脳――核が備わっている。その核こそが、スライムを動かす司令塔としての役割を果たしていた。
では、俺がスキル『スライム生成』で生み出したスライムの核、司令塔はどこにあるのか。それは生み出した俺自身ということになる。つまり、俺がスライムの核であり、司令塔ということなのだ。
「けど、それがわかったところで……だよな」
試しにスライムを剣の形にしてみたが、不格好な上にぶよぶよで、おまけにすぐに形が崩れてしまう。さすがに強度までは変えられないようだ。これではモンスターとの戦闘時に使用することはできない。
「自由に強度を変えられたら最高なんだけどな」
――そういえば……。
俺はこれまで一度も開くことがなかった職業別能力解放画面――通称スキルツリーの中に、そういった類のスキルがあるかもしれないと思い、開いてみる。
「種族別能力解放画面に名前が変更されている」
どうやらモンスター仕様とのことらしい。
枝状につながれたツリー表の初期位置には、スキル『ボーンアタック』が表示され、そこから『→』が示す方角には『ボーンブーメラン』の習得が可能と表示されていた。
習得に必要なSPは3。
『墓荒らしの簒奪者』でスライムから奪い取ったSPがちょうど3だったので、早速スキル『ボーンブーメラン』を習得しようと思ったが、伸ばしかけた手が止まってしまう。
「ん……なんだこれ?」
スキルツリーの右端に、小さく【種族別能力解放画面変更】と書かれていた。気になって押してみると、画面が切り替わる。
「うそだろ!?」
ツリー表の初期位置には『スライム生成』が表示され、隣には『強度調整』と書かれたスキルが表示されていた。
「これってスライムのスキルツリーだよな」
俺はスケルトンでありながら、別モンスター、スライムのスキルツリーから新たなスキルを習得することが可能のようだ。
これも
俺は倒したモンスターの能力やステータスだけでなく、彼らのスキルツリーまでも奪い取れるということか……?
なんだか自分がどんどん人から遠ざかっていくような気がする。
いや、スケルトンの時点で十分過ぎるくらい人から遠ざかっているのだが……。
落ち込んでいても仕方がない。
「今は新たなスキルを習得だ」
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