第8話

 シュシュを弟子に取ってからというもの、日々の剣術修行がさらに身が入るようになった。

 流れで家に置くことになってしまったが、今では仕方なかったことだと言い聞かせている。なんやかんやで役に立つキャラだし、ものすごい慕ってくれてるしな……。


 シュシュがうちにやってきて二日経った頃、俺はとうとう決意をした。


「う〜っし。魔剣奪りに行くか!!!」


 この世界に転生して真っ先に決めたものをとうとう始動させるのだ。


「え!? し、しかし魔剣は危険なものではないですか師匠」

「んー? まぁ、大丈夫だろ」

「師匠がそういうのであれば……」


 光と骸のシンフォニアでの魔剣は、装備しようとすると特殊な呪いデバフがかかったりしてしまう。

 それをなんとかする通常の方法は、特殊な魔術や魔道具を使用して調伏するなどだ。他には相反する魔剣同士を装備して相殺させる、『毒をもって毒を制す』的なことをするのだろうな。


 ……ま、ウシュティアには殆どの魔剣を魔術や魔道具無しで調伏できるだろうな。〝特異体質〟のおかげで。


「今晩、魔の森に住んでる義賊が俺の家に襲ってくる。そいつらは魔剣を一つ所持しているから、奪いに行くぜ……!!」

「承知しました! 私は何処までもついていきますっ! ……しかし、師匠はなぜそんなことを知っているのですか?」

「えっ?」


 数日後に控える剣舞闘技祭にて、ウシュティアは返り討ちにした義賊を使って主人公に嫌がらせをするのだ。


 『光と骸のシンフォニアをやり込んでだから知ってるぜ!』と言っても訳がわからんだろうな……。まぁ単純に考えればなんで義賊の情報知ってんだって話になるしなぁ。

 適当なこと言っとくか……。


「あー……あれだ。予知夢的なやつだ」

「師匠は予知までできるのですかっ!!? さすがです師匠!!!」

「わっはっは! まぁそういうこった! んじゃ行くど〜〜つ!!」

「おーっ!!」


 シュシュを連れて、早速魔の森へと飛び出した。

 ジジイは俺を引き止めるのはもう諦めているので、難なく屋敷を後にすることができた。



###



 魔の森を歩くこと数分。

 件の義賊の拠点である洞穴前へと到着した。


「あそこがそうなんですね」

「ああ。だがまぁ腐っても義賊だ。無闇な殺生は避けていこう」

「はい。では九割九分九厘殺しで行きます……!」

「おう、せめて半殺しくらいにしてあげろ」


 俺の名や過去の悪行は義賊どもに知られているだろう。だから話し合いは無謀なものになり、必然的に戦闘が起こる。

 ならば先手必勝だっ!!!


「ヒャッハー! 義賊どもォ! 魔剣よこしやがれェ〜〜ッ!!!!」

「き、キャーッ!! 蛮族よーー!!?」


 一応令嬢である俺が世紀末世界の住人のような奇声を上げながら襲い掛かり、義賊が乙女のような悲鳴を上げた。


 その後、義賊たちは全員世紀末お嬢様(俺)とシュシュに蹂躙され、数分足らずで制圧が完了する。


「拍子抜けですね。この程度で師匠を襲おうと考えていたとは……。甚だ滑稽で不愉快です。私の師匠に……貴様ら程度の有象無象が挑むなんて……その考えを消すために今、私がここで……!」

「シュシュ? さっきから何ブツブツ言ってんだ?」

「いいえ、なんでもありませんっ♪」

「そ、そーか? ならいいが……」


 殺し屋の目つきをしていたが……大丈夫だよな? シュシュはそんなキャラじゃなかっはずだし……。メンヘラとかヤンデレとか皆無な天真爛漫キャラだったし……。大丈夫、だよな?


 ニコニコと笑みを浮かべているシュシュが少し怖くなり、俺は考えるのをやめた。

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ラスボス系悪役令嬢に転生した俺、気ままに魔剣を収集するつもりがヒロインたちに言い寄られて困ってます 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1

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