90センチメートル(承)
大会当日、私は90センチメートルしか飛べなかった。運動が好きだからといって、運動ができる訳ではない。自分の自己ベストに届かなかった悔しさがないわけでもなかったが、それ以上に楽しかったと思えていた。少なくとも自分の中では満足していた。
数日後、大会の表彰式が行われた。場所は昼時のランチルームだった。私のいた小学校は、給食を食べるための広い食堂のようなスペースがあった。何故そこでと聞かれるとわからないが、ランチルームは全児童が集まるので、そういった催しは度々あった。
表彰には私も呼ばれた。元々、私の種目は3人しかいない競技だったため呼ばれるのは当たり前だった。90という数字が人に誇れる程ではないことは幼いながらもわかっていたので、読まれた時は目線が下に向かないようにぐっと堪えた。背中には大勢の視線を感じていた。それが少し重く感じた。
賞状を貰えたことは嬉しかった。好きでやっていたとしても、それが評価されることは嬉しかった。
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