90センチメートル(転)

 しかし、クラスメイトは私を嘲った。悪意はないが、言葉の1つ1つに棘が生えていた。私はそれらをただ耐えるように飲み込んでいった。心の内側が棘のついた言葉で満たされ、遂に棘は外へ突き破って出た。そうして心は傷だらけになった。以前手を滑らせて包丁で指を切ってしまったことがある。切り傷から流れ出る血はいつまで経っても止まらず、絆創膏を何度も貼り直した。その血のように、心の奥底に潜んでいた悔しさや恥ずかしさが傷口から流れた。血は足下に溜っていった。私は目を逸らしても避けられない恐怖があるを知った。その時から私の性格は変わった。


 運動をする時に人目を気にするようになった。言葉で揶揄われるようなことは滅多にないが、代わりに誰かが私を見つめているような感覚が常に私を襲った。これ以上心が傷つかないように、周りの視線ばかりを気にした。その圧が、私の目線を段々と足下に向けさせた。そこには流血が溜っていて、水鏡のようだった。


 そこに映っていた誰かも私を見ていた。冷えた血の向こうで、割れたガラスのような目をしていた。

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