第5話-3

追憶の焦点

第2章 陰謀の影


2.見えない犯行

 

 神流の供述によれば、彼女はミーシャを襲った時のことを一切憶えておらず、気がつくと警護に取り押さえられていたとのこと。

 電気室に侵入したホテルスタッフの男もまた、神流と同じような供述内容であるため、有力な捜査情報を得ることはできなかった。

 また、神流とホテルスタッフの男は面識がなく、共謀した可能性は極めて低い。主犯格の手掛かりは掴めず、捜査は難航の一途を辿っていた。


 モナクライナ皇女の暗殺は防げたが謎だけが残り、仲間が容疑をかけられて、藍井班は手をこまねく事態に追い込まれたが…


「とにかく、こんな状態では任務続行はできない、ひとまず解散だ」

 もどかしい集会は終わり、チームメンバーは散っていくが…


「どうした?」

 アジトの一室には新室と藍井が残った。新室は藍井をじっと目を合わせており、無言のままであったが…


 新室はふと推察した。自分は利用されているのではないかと脳裏に過っていた。もし、藍井が黒幕と繋がりがあったら、皇女暗殺で得するのは誰か、見返りは金か有益な情報か、彼はあらゆる角度から解決の糸口を模索していったが…


「…いや何でもない、じゃあな」

 新室は何も語らず、藍井と別れた。この先どうなるか、一筋縄ではいかないことが頷けた。

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