第5話-1

追憶の焦点

第2章 陰謀の影


2.見えない犯行


 都内某高級ホテル。モナクライナ皇族の歓迎パーティーが盛大に開かれていたが、新室たちは気が気ではなかった。何も問題が起こらないことを祈ったが、悪災がうごめきだした。

 モナクライナ皇帝のスピーチが終わると、バトンタッチで彼の実娘、ミーシャが壇上に立った。彼女は語学堪能で、習得したばかりの日本語で、パーティー参加者に挨拶スピーチした。初来日のことを心の底から喜び、飾り気のない純粋さが伝わってきたが…


 ミーシャが話している最中、パーティー会場はアクシデントに見舞われた。会場内は突然の停電で暗闇に包まれた。


「皆さん落ち着いてください、予備電源に切り替わりますので…」

 パーティー参加者はホテルスタッフの指示に従って、冷静さを保とうとするが…


「…おい、聴こえるか?…あれ?」

 新室は無線で仲間と連絡を取ろうとするが、何故か彼の声は届きそうになかった。

 新室は仕方なく、単独で行動することを決断したが…


 新室は越吹こしぶきからもらった便利ツールを利用した。彼がかけている眼鏡は特殊で、生物の熱源けはいを感知する機能が備わっていた。おまけに暗視機能もあった。これで暗い空間でも標的を捜索することができる。


「あれは…!」

 新室は壇上の方に目を向けて、衝撃を覚えた。ミーシャに接近する者が確認されて、彼女の警護は気づいておらず…


 不審者の手には光るものがあり、新室はすかさず、立食スペースに置かれたアルミ皿をフリスビーのように放り投げた。


「…!!」

 不審者は新室が放ったアルミ皿で得物を弾き飛ばされて、気が動転した。そして、警護は不審者の存在に気づき、会場内が明るくなったのと同時に取り押さえる行動を取ったが…


 新室は予想外の展開を目撃して、独り唖然ぽつんと立っていた。ミーシャを襲ったのは神流かんなだった。さらに驚愕する事実が解き明かされていき…

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