春神罪

ふかひれソーダ

プロローグ

暗い空間の中、そこには二人の姿があった。


一人は余裕の表情を浮かべる紫髪。もう一人はあわてて紫髪に近づく金髪。彼女らはあるものを監視していた。


「全く………アイツに勝負を挑まれるなんて、主も不運だなぁ……今頃主はどうなっているかねぇ……ククク」


紫髪はようやく近づいてくる金髪に気づく。動揺する金髪を見ても取り乱さない紫髪に恐怖を感じる。


「はあ……はあ……ヤバいよメドラちゃん!」


メドラと呼ばれる紫髪の女は少々驚いた顔で相槌を打つ。


「あら、どうしたの?イラリス……そんなに慌てて…」


「それが…このままじゃ主が殺られちゃうんだよ!」


「あら!負けるとは分かっていたけど死んじゃうか!」


メドラは「そう来たか」と言わんばかりの顔で返事をする。この態度には流

石のイラリスも怒り出す。


「どうしてそんなに冷静でいられるの!?」


「あなたの能力が有れば大丈夫でしょうに……」


「確かに私は傷を回復する力はあるけれど流石に致命傷は回復出来ないよ!」


二人の間に沈黙が走る。メドラも予想外の返答に唖然とする。


「そういう事は早めに言いなさいよ…これだから貴女は…はぁ」


間髪入れずにメドラは能力を使う準備に入る。イラリスは本当に自分に全部任せるつもりだったのかと呆れる…。しかしメドラの能力はとても危険なモノだということを思い出す。


「メドラちゃん!それは…!」


「主が死ぬよりはマシでしょう?さあ準備するぞイラリス!!」


「まぁ死ぬよりかは……まぁ」


能力が炸裂する。それは花のように美しく、ブラックホールのように全てを飲み込んでいく。


「ここから先は主に頑張ってもらうしかないね。」


「主……大丈夫かなあ」


二人のいた空間は闇に包まれる。


そして主は目覚める。


主と呼ばれた男は森の中で目覚めた。知らない森だ。


「……うーん…なんか…頭が…すげぇ…痛い……」


頭が痛いという概念も、知らないはずだ。主は漠然とした森で一人───


俺って誰だ?─────────────









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春神罪 ふかひれソーダ @fukahiresoda

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