第46話〈涙眼の宝冠〉

 俺を産んですぐに、母親は死んだ。俺はこの世に生まれ落ちることで母親を殺したのだ。妻を愛していた父親は、妻の死の元凶となった俺を恨んだ。何度も殺されかけながら育った俺は、ついに十一になった頃に、俺を殺そうとした父親を殺した。


 『人殺し』を『悪』とするならば、生まれついての悪とは俺の事を言うのだろう。でも、俺はそんな自分を不幸だと思ったことは一度も無い。先天的殺人者の俺には、殺人に対する嫌悪感が皆無だったからだ。『愛』を理解する以前の無垢な赤子にとって、その基準を親から受ける感情とするならば、『死』を通ずることでしか両親と繋がれなかった俺には、『死』は嫌悪の対象ではなく愛の形だったのだ。


 そんな、一般的に見れば『異常』であろう俺を理解し、認めて受け入れようとする者はいなかった。どの団にも属さない個人の傭兵として、生死渦巻く戦場に身を置いてもなお、周囲の傭兵達は俺を恐れ、嫌悪した。境遇からか、はたまた俺自身の強すぎる戦闘力からか、人は俺を『死神の子』と呼んだ。それを苦とは思わなかったが、客観的に見ても主観的に見ても、俺は孤独だった。


 本当の死神に出会うまでは。


「『死神の子』だって?それは違うな。何故なら、私には子などいないからね。『死神』である私の子で無いのならば、君は『死神の子』では無い。当たり前だろう?」


 黒髪褐色肌の男は、俺に対してそう言った。何を言っているんだこいつは、と、俺は思った。


 俺の呪われた境遇も、死と愛を同一視する異常性も、全て飲み込むような虹色の混沌とした瞳で、男は俺を見つめて言った。


「君のような者を、私は求めている。私の部下になれ。そうすれば君の人生は、今よりも幾分か楽しく充実したものになるだろう」





 つーッと、一筋の涙が、ペンタチの頬を流れた。それに気づいて訝しげに顔を顰めるエグゼに対して、ペンタチは笑いかける。


「いやあ……嬉しい。嬉しいんすよ。これは、感動の涙っす。こんなにも強烈な愛情(殺意)を、俺に向けてくれる人がいる。この場所はたくさんの愛(死)に溢れてる。俺の中の、どうしようもない虚しさがスッと消えていくような感じっす」


 真っ黒に染まった白目と、その中心の黄色い瞳を潤ませながら満足げに語るペンタチに対し、エグゼは吐き捨てるように言う。


「貴様、やはり狂っている。貴様は、ここで俺が処理する」


「……それ、人を傷つける言葉っすよ。言っちゃダメっす」


 不服そうに言いつつ、また口元に笑みを浮かべると、先ほど目に垂らした小瓶をエグゼに見せつけて、懐かしげに語り出す。


「……これには、俺の元カノ達の思い出が詰まってるんすよ。俺の好みの女の子は、皆大切な誰かを失ってる。心にぽっかりと穴が開いていて、その穴を埋めてあげることで、皆俺の事を好きになってくれる」


 穏やかな、人の良さそうな笑みを湛えた顔で、愛おしげに小瓶の中の液体を揺らした。


「……お互いの愛情が高まったところで、俺は、本当のことを打ち明けるんす。大切な人の命を奪ったのは、俺だって。それを話すことで、俺に対する愛情(殺意)は最高に昂って、その顔は悦び(絶望)に満たされる。そうして彼女たちの瞳から溢れ出た愛の証を集めたのが……この瓶なんす。俺の手によって、愛に溢れたまま死んだ彼女たちが……俺に力をくれる。だから、嬉しいんす。この術を披露できる瞬間が来て。嬉しいんす。その必要がある敵に……君に出会うことが出来て」


「外道が」


 嫌悪感を露わにしてエグゼが呟く。周囲の憲兵達も今の話を不快げな表情で聞いており、吐き気を催したかのように口を押える者もいた。


「……もう何も喋る必要は無い。貴様の深く黒い、深淵の如き罪を全て、斬り裂く。貴様の命と共に」


 血のように赤い陽炎をその身に纏い、右腕を弓のように引いたエグゼは、そのまま強く踏み込んで体勢低くペンタチに肉薄した。左手を引くと同時に胴体を捻り、右手の掌底をペンタチへ突き出す。


 しかしペンタチは、最小限の身の動きでそれをかわすと、左手に槍を持って空いた右手に拳を作り、エグゼに向けて撃ち込んだ。エグゼは即座に反応して地を蹴り両掌でその拳を受け止め、宙に跳んで拳のダメージを殺した。


 しかし、跳んだ先に向けてまるで狙いを定めるように、槍の刃先が突き出される。布に包まれた大剣、処刑刃『ルイゼット』でガードしたエグゼであったが、その威力は強大で、体ごと突き飛ばされて地面に叩きつけられた。


「グァッ‼」


 エグゼの口から呻き声が漏れた。そんな彼を見下ろしつつペンタチは言う。


「おふざけは終わりっす。ここからは本気で、遊びましょう」


 ペンタチの構えは、先ほどとは打って変わって突き特化の形となっていた。右手に持つ槍を筒のようにした左手に通して、狙撃手のような、射貫くような視線をエグゼに向けている。


「俺の術は……この眼は君の未来を視るっす。未来の君を狙い撃つっす」


「未来……だと?」


 エグゼが眉を顰めて睨み上げた。そんな彼に槍を定めつつ、ペンタチは続ける。


「まず君は……今から、俺の繰り出す突きを避けるっす。そのまま立ち上がって、すぐに俺に向かってくる」


 そう話しながら、地に腰を落とすエグゼに向けて、槍を突く。エグゼはそれをかわして立ち上がると、そのまま右手の掌底を構えてペンタチへと向かって行った。


 ペンタチは突きの構えを崩さずに剣先をエグゼの方から外すことなく、そのまま後退してエグゼから距離を取る。


「この状態だと……接近された時に反応が遅れるんすよ。だから、俺は君から離れるしかない。でも、君は向かってくる。だから、俺は槍でまた君を突く。数回くらいね。それでも君はすばしっこいから、槍を全部避けて、避けて、近づいてくるっす」


 後退してエグゼから一定の距離を保ちつつ、素早く鋭い突きの連撃を食らわせる。しかし、それらをエグゼは風に舞う葉の如き軽やかな動きでかわしながら、ペンタチへと距離を詰めていった。そんなエグゼを黒い眼で視たペンタチはニヤリと笑った。


「……人の動きには、どうしても『癖』ってもんがあるっす。相手の癖を見極められるかどうか……それが勝利の鍵となるんす。そして、君の癖は見切った!君は……ここぞと言う一撃を放つ際に、まるで弓でも引くかのように腕を後ろに振りかぶる!そこに隙が生まれるっす!」


 その予測通りに右腕を引くエグゼに向けて、ペンタチは蹴りを食らわせる。しかし、まるでそれを待っていたかのような絶妙なタイミングで、エグゼはその蹴りを避けた。


「……ごちゃごちゃと、うるさい奴だ」


 ペンタチに肉薄したエグゼが再び掌底を構えて唸るように言う。


「そのように手の内を話してしまえば、こちらに対処されるのも当然と気づかないのか?貴様のその無駄なお喋りが、俺の持つ隙を、隙でなくした。それが、貴様の敗因……‼」


「……と、言って近づいてくるのを待っていたっす」


 エグゼの顔が衝撃に歪んだ。ペンタチが縦回転させた槍の石突が、下からエグゼの顎を打ち上げる。その衝撃にのけ反ったエグゼに向けて、風切り音と共に切っ先を突き出した。


「この突きも、君は避けるっす。でも……」


 血が舞った。寸前で体を捻ったエグゼであったが、ペンタチの刃はその脇腹を切り裂いた。エグゼは忌々し気に目を細め、舌打ちをした。


「ッ……クソが!」


 そう言いながらもエグゼは体勢を。

「体勢を立て直して、一度距離を取ろうとするっす」


 そこへペンタチが迫る。先ほどよりも速度を上げた突きの連撃で、エグゼを追い詰める。腹の傷を手で抑えつつも、エグゼはまた。

「またギリギリでかわし続けるっす。でも、反撃の余裕はない。そして、やがて動きも鈍って行って……」


 刃が、エグゼの肩を斬った。苦痛に顔を歪めるエグゼに、真っ直ぐに刃を向けて、突き出す。


「終わりっす」


 切っ先がエグゼを突き刺さんとするその瞬間。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらあああああああああああ‼」


 一人の男が、絶叫しながらペンタチに突進して体当たりを食らわせた。その衝撃により槍の方向が反れて、刃はエグゼの右方の何も無い空間を突いた。


「隊長‼」


「た、隊長⁉」


 周囲の憲兵達が口々に叫んだ。思わぬ妨害にペンタチも少し驚いた様子で、その黒い眼を一瞬だけ男へ向けた。


 憲兵隊隊長のその男は、剣を構えて高らかに叫ぶ。


「私は‼マクロ駐在第十八憲兵隊隊長、ザガリアス・ブライアン・エイブラムス‼貴様のような身勝手な無法者を……これ以上は放っておけない‼その少年を殺させはしない‼」


ペンタチは、少し拍子抜けしたような、興ざめしたような表情でエイブラムス隊長に言う。


「えーっと……邪魔しないでもらえないっすか」


「いいや‼邪魔をする‼」


 そう答えると、隊長は手に持つ剣でペンタチに斬りかかる。


「何故なら‼私はこの町の平和を脅かす者を許さない‼私は、このマクロの町を守護する憲兵なのだから‼」


 そう叫んで向かってくる隊長に対し、ペンタチはまるで『眼』を使う必要も無いとでも言うように、その視線をエグゼへと向けながら剣を軽々避ける。やがて面倒くさくなったのか、隊長の剣を真っ直ぐに蹴り上げて、宙へ飛ばした。


「ぬあっ⁉」


「さよなら」


 そう呟いて槍先を隊長へ向けたペンタチの元へ、エグゼが近づいて掌底を突き出す。しかしずっとエグゼを視ていた事からその行動も呼んでいたペンタチは、槍を回してエグゼを打ち、その流れで隊長も蹴り飛ばした。


「言ったっすよね。俺は君の未来を視ている。不意打ちは意味無いっす」


 地に伏したエグゼをジッと見つめて、ペンタチは言う。その黒い眼を見上げつつ、エグゼは小さく笑った。


「なるほど……分かって来たぞ。貴様の術の仕組みが……」


 ペンタチは、怪訝そうな顔でエグゼに槍を向ける。その直後、上から回転して落ちてきた剣が、ペンタチの伸ばした腕をかすめて地に突き刺さった。ペンタチは少し驚いたように眉を上げ、エグゼはまた笑う。


「そもそも『未来』など……この場に存在しない。ここにあるのは『今』それだけ!故に、貴様が未来など視ることが出来るはずもない!」


 ペンタチの腕に出来た傷は、『裂傷の呪力抗体』により即座に回復した。エグゼはさらに続ける。


「貴様の眼が視ているものは、俺の体の動きだ。骨や筋肉、関節、そのような、俺の体を動かす全ての機能を明確に読み切る眼‼『今』の俺の動きから、その方向を読み取り、未来を『予測』している。……そうだろう?」


 エグゼの言葉に対し、ペンタチは何も答えずに、ただ口元に笑みを浮かべた。


 ……間違っている。


 そういう意味の笑みであった。


 厳密に言えば、エグゼの見立ては不正解では無い。だが、それが全てと言うわけでは無かった。彼が見出したペンタチの能力の『仕組み』は、実際はその『一部』に過ぎないのだから。


「それで?俺の力の秘密が分かったところでどうするんすか?対策のしようがあるんすか?」


 その顔面に余裕を浮かべたまま、ペンタチが問う。エグゼは彼の表情を忌々しげに睨みつつ答えた。


「ある。単純だ。視えこそすれど対応できないほどに、素早く多彩な動きを繰り返せば良い」


「……つまり、ごり押しっすか」


 ペンタチは勝利を確信してほくそ笑んだ。単純なのは君の頭の方だ、と言おうとして口を止めた。わざわざ忠告してやる必要も無い。ペンタチの能力は、相手の体の動きを見切るだけでは無い。そもそも、今の筋肉や骨の動きを見ただけで二、三手先の動きまで読み取れるわけが無い。


 蹴り飛ばされて腰をついていた隊長が、立ち上がってエグゼに言う。


「私も協力しよう‼」


「……いや、結構だ。下がっていろ」


 エグゼは言い聞かせるように丁寧に答えた。


「貴様は、この町の今後に必要な人間だ。万が一にでもこのような所で命を落とすようなことがあってはいけない。……だが、その熱意は受け取っておく」


 そう言ってエグゼは、先ほどペンタチに蹴り飛ばされた隊長の剣を拾い上げた。それを見たペンタチが意外そうに呟く。


「あれ、武器使うんすか。素手で戦うことにこだわっていたのに」


「貴様、何か考え違いをしているな」


 剣を片手に構え、ペンタチを睨みつけながら、エグゼは言う。


「処刑のため、貴様を生け捕りにする必要があったから、武器を使用しなかっただけのこと。貴様を捕らえるのに素手では難しいため武器を使用する必要があると判断したまでだ。我ら処刑人は規則を遵守するが、それによって思考の柔軟性が欠けていると見くびられるのは心外だ」


「ふーん。でも君、剣の扱いには慣れているんすか?付け焼刃で攻略できるほど、俺は甘くないっすよ」


 エグゼは小さく舌打ちした後、何も答えずに剣を片手でくるりと回し、逆手に持ってペンタチへ向かって行った。ペンタチはその呪眼でエグゼを見据え、にやりと笑う。


「捕らえた。……君は、まっすぐにその剣を振って俺に向かってくるっす。そこへ俺は槍を突き出し、それを君はかわす。そして空いた俺の胴体めがけて剣を振って……」


 その通りに、エグゼは動いた。予測済みのペンタチは剣を軽々かわし、槍を回して、エグゼの体に打ち付ける。


 しかし、エグゼは手に持つ剣を片手でくるりと回転させて逆手から順手、つまり通常の剣の持ち方に戻すと、その刃で滑らすようにペンタチの槍を受け流す。それから自身の体ごと回転させて、ペンタチを切り裂いた。


「ッつ……⁉」


 ペンタチは小さく呻いて後方に跳び、エグゼから距離を取った。エグゼはまた剣を回転させて逆手へと戻す。ペンタチは、警戒心を強めた表情で槍をエグゼに向けて、注意深く睨みつけながら小声で問う。


「あれ……?君は……誰っすか?」


「『誰』だと?」


 エグゼはその口元に笑みを浮かべると、くくくっと声を漏らす。


「なるほど……やはり、俺の読みは正しかったようだ」


 そう呟いた後、またエグゼは無言となってペンタチへと向かって行った。エグゼの『読み』とは何なのか。それをわざわざペンタチに話して聞かせる必要は無いので、口を閉じたのだ。


 エグゼが読み取った、ペンタチの能力。それは、敵の戦闘の形を記憶し、そこから正確な未来予測を計算し導き出す演算能力。相手の動きを見極める眼は、そのためのツールの一つに過ぎない。


 つまり、今の相手の動きからその先を読み取るのではなく、過去から今時点までを含めた、相手の全ての戦闘データを記憶し、そこから相手の戦闘スタイルとその傾向を導き出すことによって、次に相手がどのような手で来るかを予測するのである。死者の涙を点眼することによる発動方法や、『涙眼の宝冠ティアリー・ティアラ』という能力名、更には黒く染まった眼や、未来を『視る』という言葉などから誤解しやすいが、この能力の真価は眼ではなく脳の動きにあった。


 戦闘が長引けば長引くほど、ペンタチの中に蓄積される相手の戦闘データが増えていき、予測の正確性が増していく。この能力を攻略する方法は一つ。予測の通じない全く異なる戦闘スタイルを用いること。すなわち、他人になることだ。しかし……。


「そんなことは、ありえないっす」


 自分自身を納得させるかのように、ペンタチは呟く。『他人になる』とは、そう生易しいことではない。武器や戦い方を変えるだけでは駄目なのだ。そういったものを変えたとしても、それはあくまで『武器や戦い方を変えた自分』でしかなく、『他人』になったわけではない。


 しかし、今のエグゼの動きは、先ほどまでのエグゼのそれではなく、全く異なる他人の動きであった。片手に持った剣を回転させて逆手、順手に入れ替えながら戦う変則的なスタイル。動きのリズムも、規則性も、全てが先ほどまでのエグゼと異なっており、まるで会ったことも無い誰かと戦っているような錯覚を、ペンタチに起こさせる。


「何なんすか……誰なんすか……?その動きは……!」


 何か不気味な、幽鬼か妖怪にでも遭遇したかのように、気持ち悪そうな声を上げて、ペンタチが問う。また手元の剣を回転させて構えたエグゼが、低い声で、言う。


「……俺達処刑人は……忘れない。貴様らのような罪人とは違い、忘れない。自分が裁いてきた罪の数を、処刑してきた罪人たちの姿を形をその名を声を……俺達は、決して忘れない。買った恨みも、受けた呪いも、忘れない。受け入れる。そして糧とする。……俺達処刑人は……自分自身の罪から目を背けない……‼奪ってきた全ての命と真正面に向かい合い、その全てを背負って生きる……‼」


 燃え上がるような深紅の陽炎が、エグゼの体から湧き上がる。その勢いのままに、剣を回転させてペンタチへと斬りかかる。


「俺の中には、これまで処刑してきた八十四人の罪人たちの『記憶』がある……‼その戦い方も含めて全て……‼」


 深く、鋭い斬撃が、ペンタチを斬り裂いた。左肩から右脇腹まで、斜めに一線、その線に沿って赤い飛沫が飛んだ。


「……さっきも言ったっすけど……」


 黒い眼が、勝利を確信して輝いた。槍を短く持ち、刃の付け根部分を掴んでリーチを通常のナイフ台にまで短くしていたペンタチが、目の前のエグゼの腹部に刃を突き刺した。


「……君は、ここぞと言う一撃の際に隙が生まれる……‼たとえ全く他人の動きをしようとも、結局君は君でしかない‼変わらない癖ってもんがあるんすよ‼」


 口元に笑みを湛えて、刃をさらに奥へ押し込む。しかし、その手応えに何か違和感を覚えたペンタチは、眉を顰めてエグゼの顔を見た。


「貴様に殺された者達の想い……無念……恨み、苦しみ、感じるぞ」


 鬼神の如き赤く燃える眼を見たペンタチは、即座に刃を引こうとするが、エグゼの掴む手がそれを許さない。ペンタチは小さく舌打ちをした。


「内臓を上げて、肋骨に隠して、刃をかわした……致命傷を避けたんすか‼」


 エグゼは何も答えず言わず、片手で剣をくるりと回し、逆手に持つ。


「全ての悪を滅ぼすまで……貴様のような罪人を殲滅するまで……この俺が、死ぬわけが無い……‼」


 エグゼに突き刺さったままの槍を手放し、離れようとするペンタチに、エグゼの剣が襲い掛かる。


「俺が……俺が、俺がァ‼『正義』だ‼」


 叫び声と共に、エグゼの刃が、ペンタチの頸動脈を深く裂いた。

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