第35話〈おいしいおいしいモルトの野菜〉

 時は少し遡る。サヴァイヴ達がゴルダの町近くの宿でガルザヴァイルと戦闘を行っていたのと同時刻に、フォルトレイクの港に停泊していたソフィー号内で、事件は起きていた。


 細身ながら筋肉質の、背の高いプラチナブロンド短髪の男がB2階層からB1階層へと上がる螺旋階段を歩いている。腕には金属製の腕輪のようなものがついており、その腕輪から伸びる鎖の先端は薬品で溶かされたように歪んで千切れていた。


 そんな彼の眼前に、立ちはだかる者が二人。灰色天然パーマの気だるげな青年と、筋骨隆々とした赤毛の快活な青年だ。


「ヘルシング・バザナード……どうやって脱走したのか知らないけど、また牢に戻ってもらうよ」


「ここから先へは、行かせませんよ!ええ!私達がいる限りはね!」


 灰色パーマのニコラ・アルジェント、赤毛のジョー・カッパ。いずれもソフィー号を守る船員だ。ニコラは懐から二本のナイフを取り出して、ジョーは何も武器を持たず、拳を構えて相手を見据えた。


 ヘルシング・バザナードは、どこか上品さのあるその顔にニヤリと笑みを浮かべつつ、二人を見ていた。


「やめときなよ。君達では俺は止められない」


 言いながら、両手の人差し指と中指を独特な形に曲げて鳥の嘴を思わせる形の拳を作った。それから強く地面を踏み込んで、一瞬で二人の間合いへと侵入する。


 バザナードの鋭い拳を紙一重でかわしたジョーが、反撃の拳を敵の腹へとお見舞いする。バザナードの口からうめき声が漏れた。その隙を突いて、ジョーの背後から、ニコラがナイフを投げる。バザナードは上半身をのけぞらせて二本のナイフを避けた。


「殺意満々だなあ~。ここの船員は、不殺がモットーなのでは無かったのかい?」


 嗤うように言うバザナードへさらに懐から出したナイフを投げながら肉薄しつつ、ニコラがボソッと言った。


「あんたの殺害許可は、船長からもらってる」


 投げナイフの回避に気を取られるバザナードの隙を突いて、ジョーがもう一発、拳を背中へ打ち付ける。それにより体勢を崩したバザナードの腹へ向けて真っ直ぐに、ニコラが蹴りを入れた。


 直後、バザナードの口から血が溢れ出る。ニコラの足に仕込まれていたナイフが、バザナードの腹へ深く突き刺さったのだ。足を離して距離を取るニコラ。腹の刺し傷から鮮血が噴き出した。バザナードはよろめきつつも、その口元には不気味な笑みを浮かべる。


「なんだあ、案外強いんだな、この船の船員って」


 腹の傷を抑えていた右掌を見る。真っ赤なその掌を見つめたバザナードは、歯を剥き出して笑うと、声を張り上げた。


「悪いけど……!俺には隊長から言われた任務がある。君達に時間を取られるわけにはいかないのだよ!だから……少しだけ、本気で行かせてもらおう!」


 直後、腹部に激痛を感じたニコラは、その場にひざまずいて自身の腹を見る。真っ赤な鮮血が彼の腹部から溢れて衣服を濡らしていた。彼の隣に立っていたジョーもまた、腹と背中に強烈な打撃を受けたかのようによろめいてその場に倒れ込んだ。


「な……何をした……っ?」


 自身の状況を理解できないと言った様子のニコラは、虚ろな目でバザナードを見上げる。ニコラのナイフで裂かれたバザナードの服の奥に先ほどまで見えた刺し傷は、痕すら無く消えており、代わりに黒い痣のようなものが出来ていた。


「黒死術『遺脂返しヴァンジャンス』」


 呟くように、バザナードは告げる。


「あんたらに貰った傷は、全てお返ししたよ」


 地に倒れる二人にそう言い残すと、バザナードは上層へと進んだ。やがて、B1階層のある一室へとたどり着く。それは、隊長から教えられていた場所、この船の医務室であった。扉を開けると、金髪碧眼の美少女、シーナ・ドリュートンが椅子に座って机に向かって何やら書いていた。部屋に入ってきたバザナードに気づいて、声をかける。


「どうしました?どこかお悪いんですか」


「……そうだね。怪我をしているのだ」


 そう言って、バザナードは腕にある火傷のような痕を見せた。手錠を薬品で溶かした時に手にはねて出来た傷痕だ。それを見たシーナは、薬品棚の引き出しを開けて言う。


「治療しますから、そこに座って下さいね」


 シーナに促されたバザナードは、ニヤリと笑って医務室の扉を閉めると、木製の小さな椅子に腰かけた。





「シーナちゃん、大丈夫かな……」


 モルトの元にお世話になり始めてから五日目の朝、マクロの町にある市場へ向かう道中、野菜がたくさん入ったカゴを背負い運びながら、アリスが呟くように言う。同じくカゴを背負いアリスの前を歩くエグゼが、彼女の言葉に反応した。


「大丈夫、とは?」


「サヴァイヴが言っていたでしょ。船の牢を脱走したフギオン・S・C・レイヴンが、シーナちゃんを狙っているって。だから……」


「そんなことか」


 エグゼは興味なさげに言う。そんな彼に、アリスは少しムッとしたような表情をした。


「……心配じゃ無いの?」


「シーナ・ドリュートンは、貴様が思うほど弱くは無い」


 アリスの方へ振り向くことなく言う。アリスは彼の背中へ向けて尋ねた。


「強いの?傭兵に勝てるくらい?」


「勝てるものか。奴は、虫一匹殺せないような人間だ。他人に傷をつけるようなことは絶対にしない、戦いに向いているわけでは無い。だが、強い」


 アリスは、エグゼの言っていることの意味が分からないといった様子で、首を傾げた。そんな会話をする二人へ、前方から声がかかる。


「おいおい、そんな話をしとる場合じゃないぜい。見な、市場が見えて来た。今日も賑わっとんねえ」


 ミルクのたっぷり入った大きなツボを背負いつつ二人の前を歩いていたモルトが、前方を指す。彼の指す先には、様々な食材や日用品を売買する人々で賑やかな市場が見えた。


「さあ、今日もよろしく頼むぜアリス!」


 モルトに言われて、アリスは小さく気合を入れる。この五日間、彼女はモルトの売り場における看板娘の役を担っていたのだ。


「昔は、家内がやってくれていたんだがな。あいつ、首都の良いトコ出のお嬢さんでさ、しかもすんげえ美人だろ?俺にはもったいねーくらいの良い嫁さんさ。だから若い頃はあいつのおかげで飛ぶように売れていたんだが……今は、昔と比べると、な。時の流れは残酷だで。古馴染みの客は多く来てくれるが、新しい客を掴もうと思ったら、やっぱ若い娘でねえと……」


「貴様、それ以上は言うな。妻に聞かれたら殺されるぞ」


 エグゼが呆れ顔でモルトを睨む。モルトは絶対に告げ口しないよう、アリスとエグゼの二人に強く頼み込んだ。


 モルトとエグゼは、所定の売り場に今朝採れた野菜やミルクなどの商品を並べた。全て並べ終えたところで、モルトがアリスに目配せをする。モルトの妻が夜なべしてこしらえた特注のフリル付きエプロンに身を包み、これまたモルト妻お手製の牛の顔を模した髪留めでその銀髪を二つ結びにまとめたアリスは、モルトの店の前で、彼作詞の宣伝ソングを歌い出した。


「おいしいおいしいモルトの野菜。甘くてまろやかモルトのミルク。朝採り、新鮮、あらお得。騙されたと思ってお一つどうぞ。たくさん売れたらウハウハで、家の牛達も大喜び」


 軽く体を揺らしながら歌う彼女に、色々な意味で目が離せなくなった人々が、続々と店にやってくる。


「な、なんだこの奇妙な歌は……!」


「歌ってる子は可愛いけど、歌詞も変だし、なによりすごく棒読みだ……!これは本当に『歌』なのか?『朗読』の間違いでは?」


 そう言って首を傾げつつも、道行く人たちは野菜やミルクを買って行った。


「おい貴様、もっとまともに歌えないのか⁉」


 客対応をしながら、エグゼが小声でアリスに訴える。アリスは不服そうな目を彼に向けた。


「……まともに歌ってる」


「どこがだ⁉」


「まあ、良いでないの!こうして売れてんだから」


 モルトが笑って言った。そんな会話をする彼らの元へ、近づく少年が一人。


「おいしそうですね!ミルクを一つ下さいな」


「へい、まいど!」


 そう言って、モルトは満面の笑みでミルクを小さな瓶に入れて少年に渡した。


「ありがとうございます!……それで……」


 少年は受け取ったミルクをその場で口にしつつ、言い合うアリスとエグゼに声をかける。


「……二人とも、何してるの?」


 アリスとエグゼは、頭に鳥を乗せたその少年の顔を見て声を上げた。


「……貴様っ!」


「サヴァイヴ……」


 驚く彼らの元へ、さらに別の店を見て来たらしい包帯男も近づいてくる。


「やあ、合流出来て良かったよ。アリスちゃん、似合っているね」


「ドリュートンせんせい……」


 アリスが少し口元に笑みを浮かべて呟いた。


 頬を薄っすらと染めつつアリスの格好をチラチラと見ていたサヴァイヴが、少し弄るような口調でエグゼに言う。


「さっきから、アリスの歌にケチつけてるけどさ、文句があるなら君が歌ってみたらどうなの」


 エグゼは小さく舌打ちをして、鋭い瞳でサヴァイヴとアリスを交互に睨みつけた。


「……貴様ら罪人は、つくづく社会不適合者だな。良いか、どのような内容であろうとも、それが課せられた仕事であるのならば手を抜いてはいけない。真面目に一定以上のクオリティで全うする必要があるのだ」


「……私、まじめにやってる」


 アリスの反論を無視して、エグゼは深く息を吸うと、歌い出した。


「おいしいおいしいモルトの野菜♪甘くてまろやかモルトのミルク♪朝採り、新鮮、あらお得♫騙されたと思ってお一つどうぞ♪たくさん売れたらウハウハで、家の牛達も大喜び♬」


 美しいテノールの歌声だ。腹の底から響くように歌い出されたその声は、市場の隅々まで響き渡った。誰からともなく自然と拍手が鳴り響く。エグゼは相変わらず不機嫌そうではありつつもどこか自慢げにも見える表情で、アリスを見た。アリスは頬を小さく膨らませた。


 そんなやりとりをする彼ら彼女らの元へ、近づく少女が一人。


「美味しそうですね。その赤い実をお一ついただけますか?」


「へい、まいど!」


 そう言って、モルトは満面の笑みで瑞々しい赤い実を茶色い紙に包んで少女に渡した。


「どうも、ありがとうございます。……それで……」


 受け取った赤い実をその場で齧りつつ、ジトッとした目をエグゼに向けて、少女は言う。


「……やっと見つけたと思ったら……あなた達、ここで何をしているんです?」


 彼女の顔を見たエグゼは、絶句して後ずさる。


 ブルーアッシュの長髪を三つ編み状に結んだ、ぱっちりつり目の気の強そうな少女だ。エグゼはその口からかすれ声を出した。


「リ……リカ……⁉何故ここにいるんだ⁉」





 城塞国家フォルトレイクの首都ルトレ、そのすぐ隣にある小さな町マクロ。この双方と隣接する大きな街がある。名をデミルトレ。首都や港町に次ぐ、フォルトレイクにおいて三番目に大きく栄えている都市だ。


 そのデミルトレの東南部には年季の入った立派な聖堂がある。太陽神フェニクシスを信仰する宗教組織『崇陽教会』、その一派閥であるフェニクシス原理主義教会の所有する聖堂である。立派なステンドグラスで彩られた建物の中で、膝をついて熱心に祈りをささげる恰幅の良い男に、黒髪褐色肌の青年が声をかける。


「神の御言葉は聞こえるかい」


 ハクア・C・レイヴンはからかうような口調で言いながら、その虹色の瞳を男に向けた。


 男はハクアを見て立ち上がると、落ち着いた口調で答えた。


「私のような未熟者には、神の御声は聞こえません。しかし神は万能の存在です。私の声は届いていることでしょう」


「そうかい。しかし、フォルトレイク最大の薬品商会を率いるあんたがこうも信心深い人間だとはね。あんた、学者出身の商人だろう?学者と商人は、神など信じない現実主義者ばかりだと思っていたのだが」


「現実主義者ですとも。私にとって、神とは現実の存在なのです」


 そう言うと、男は鋭い目つきになってハクアを見つめた。


「我々も、現実の話をしましょう。例の薬は、手に入れたのですか」


 ハクアは小さく口笛を吹いた。


「会長さん、この聖堂に入る時、入り口に馬車が停まっているのに気づいたかい?」


「ええ。すると、あれがそうですか。上手くいったようですね」


 薬品商会の会長である男は、満足そうに笑う。そんな彼の様子をハクアは観察するように見ていた。会長はさらに話を続ける。


「我が国の問題は、我が国自身の手で治めなければいけません。他国の力を借りてしまったら、我が国の独立性は奪われてしまう。国政評議会は愚かにも、クラフトフィリアから治療薬援助を受けることを決定してしまった。それは許されることではありません。死裂症の解決法は我々フォルトレイク国民の手に無ければならない」


「だから、薬を奪って自分達の手で売りさばこうってわけか。そのようなことを神がお許しになるのかね」


 意地の悪い口調で尋ねるハクアに対し、会長はこともなげに答えた。


「薬と言うのは、人を治すものです。逆に言えば治す対象がいなければ薬の存在価値は失われる。もし薬の神というものがいるとすればそれは、戦乱や疫病を欲してやまない、血に飢えた戦神と同様の存在なのでしょうな。私が信仰しているのはそのような神なのです」


 聖堂の大きな鐘が鳴った。ハクアは懐から懐中時計を出して眺めると、聖堂の扉に目を移す。扉はゆっくりと開いて、三人の男達が入ってきた。


「ちょっと遅れたかな?いや、時間ピッタリか!」


 華奢な赤毛の青年、クレバインがニヤニヤ笑いながら言う。その隣に立つ金髪大男のペンタチも、人の良さそうな笑みを顔に浮かべていた。二人の後ろでは、ドレッドヘアの柄の悪い男、ヤタラスが何も言わずに視線を動かして聖堂の中を見ていた。やがてその視線がハクアと合うと、バツが悪そうな表情となって、目を反らす。


「では、私はこれで」


 そう言うと会長は、三人と入れ替わるように去って行った。その後ろ姿を見ながら、クレバインがハクアに尋ねる。


「何、今のおっさん」


「スポンサーさ。それよりお前達、よく来たな。まあ座れよ」


 横長の木製椅子に各々腰掛けた三人に対し、ハクアは声をかけていく。


「クレバイン、ブラックカイツの連中は?」


「マクロのアジトに集めてあるよ。奴ら、やる気満々だ。命じればいつでも、首都で大暴れしてくれるだろうさ。ま、これ僕の仕事じゃないはずなんだけど……」


 言いながら、半目でヤタラスを見た。ハクアもまたヤタラスに鋭い視線を向けて、低い声で言う。


「……ヤタラス、俺はお前にブラックカイツを率いて来いって言ったよな?薬を運ぶ連中を襲撃しろとは言っていないよな?それは覚えているか?」


「……ああ」


 ヤタラスはハクアの顔を見ることなく、答えた。ハクアは小さく溜め息を吐くと、彼に命じた。


「お前は、港町へ戻れ」


「はァ⁉ここまで来たばっかりなのに、また戻んのかよ?」


 不満の声を上げるヤタラスを、ハクアは一睨みで黙らせる。


「勝手な行動をした罰だ。港町からソフィー号へ戻ろうとしているベンジャミン・ゴールドを見つけ出して始末しろ」


「なんだそれ、めんどくせえ……。っていうか誰だよそいつ?」


「ゴルダの町近くの宿で、お前が殺し損ねた男だよ」


 ハクアはベンジャミンの特徴を説明した。ヤタラスはその存在を思い出したらしく、静かに頷く。


「へー、あいつ生きてたのか……。そんな死にぞこない、わざわざ殺しに行く意味ってあんのか?」


「サヴァイヴ達からの連絡で、彼は私が裏切り者だと言うことを知っている。薬を奪われたことや、ドリュートン先生を殺されたことも」


「ドリュートン?……ああ、例の『レイモンド』ね!」


 懐から取り出した知恵の輪を弄りつつ、茶化すように笑うクレバインを、ハクアは睨みつけた。


「ドリュートン『先生』だ。偉大な方だ、礼を欠くことは許さない」 


 ハクアのその厳しい言葉に、クレバインはいじけた子供のような表情になって口笛を吹いた。ハクアがその場で指を鳴らすと、聖堂の天井部に開いた隙間から、黒い影が飛んできた。ギャーギャー、と喧しく鳴き喚く大型の鴉だ。顔を顰めて耳を塞ぎつつ、ペンタチが鴉を見てぼやく。


「ライア……!相変わらずうるさい子っすね……」


 ライアと呼ばれた大鴉は、その足に捕まえていた何か白いものをぽとりと、ハクアの前に落とす。それはサヴァイヴ達が連絡用に使っていた小さな白い鳥、プラチナであった。その死体の足に括り付けられた紙を開いて眺めつつ、ハクアは話を続ける。


「ベンジャミン・ゴールドが、船へ向かってこの鳥を放ったところをライアが見つけて捕らえた。だから、船の連中には私の正体も先生の死も届いていない。ベンジャミンが船に辿り着く前に始末するんだ。彼の居場所はライアが教えてくれる。どうやら彼はまだ、港町にいるらしい」


 ライアは威嚇するような鳴き声を上げつつ、ヤタラスの目の前に留まって彼を突いた。ヤタラスは鬱陶しげにそれを払う。


「このバカ鳥が!……へいへい、分かったよ。死に損ないのベンジャミン・ゴールドを始末してきてやらァ!」


 そう言って、ライアに追い立てられるかのように、ヤタラスは一足先に聖堂を後にした。残されたクレバインとペンタチにも、ハクアは指令を下す。


「お前達二人は、ブラックカイツ本隊を引き連れて首都ルトレに攻め込め。目的は国政評議会の掌握……ってところだな。成功しようがしまいが、どちらでも良いが」


「それで……隊長はどうするんすか?」


 ペンタチが尋ねる。ハクアはニヤリと笑った。


「首都を守る憲兵隊に密告するのさ。『ブラックカイツが国政評議会を攻撃しようとしている』ってさ」


 彼らの目的は、この国を支配することでは無い。この国で戦争を引き起こすことなのだ。


 退屈そうに知恵の輪を弄るクレバインが、ふと思い出したようにハクアへ尋ねた。


「そういや、副隊長はどうしたのさ。もうそろそろ船から逃げ出して、合流してきても良い頃なんじゃ無いの?」


「あいつには、ある人物を始末するよう指示を出してある。……まだ連絡は無いが……問題は無いだろう。受けた傷を全て相手に返してしまう呪術『遺脂返し』。殺した者の脂を用いた黒死術だ。あれがある限り、奴は無敵だよ」


 ハクアは小さく笑いつつ、何やら思案しながらそう答えた。

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