第23話〈フォルトレイク上陸〉

「ガルザヴァイルさんの部屋へお通ししろ。このお二方はおそらく、ガルザヴァイルさんの同志だ」


 アジトの奥の方から、騒ぎを聞きつけて駆けつけたスタナムが言う。そして目線をガリトの死体に向けると、悲痛な表情で目をつむり、皆に向かって声を張り上げる。


「残念な事だが!ガリトは試練を乗り越える事が出来なかった‼︎最も覚醒に近い男であったのだが……。しかし、彼の死は無駄では無い‼︎今後の我々の活動への糧となり、覚醒へと導いてくれる事だろう‼︎」


 団員達は真剣な表情で何度も頷きながらスタナムの演説を聞いていた。その空気感に耐えられず、赤毛の青年クレバインは思わず吹き出した。


「プフッ」


 何人かの視線が彼に注がれる。クレバインは弁解をした。


「ああ、ごめんごめん。……いや、ほんと、お兄さんの言う通りだよ!こいつの死は無駄じゃ無いから!糧になっから、大丈夫、大丈夫」


 ニヤニヤしながら言った後、クレバインは大柄な金髪男ペンタチと共にアジトの中へと案内された。ガルザヴァイルの部屋の扉をスタナムが恭しくノックしようとした時、クレバインは彼の手に触れてそれを止めた。


 それから思いっきりドアを蹴り飛ばして開けると、騒がしく部屋の中へ入って行った。


「よおヤタラスー!久しぶりだねえ、元気ぃー?」


 部屋の中にいたドレッドヘアの男、ガルザヴァイルに向けて、クレバインは気さくに話しかける。ガルザヴァイルはその顔を見てニヤリと笑った。


「おゥ、生きてたのかよ、クレバインにペンタチよォ〜。テメェらみてェなアホ連中が船での潜入任務なんて高度な仕事任されやがって……頭の使いすぎでバカ死すんじゃねェかって思っていたぜ〜」


「なんすかバカ死って」


 ペンタチが人の良さそうな苦笑いを浮かべる。ガルザヴァイル・エシャント改めヤタラス・C・レイヴンは、目の前の黒い革張りのソファを指して二人に座るよう促した。そのお言葉に甘えて、クレバインはソファに寝っ転がる。


「っていうかヤタラスさあ、お前の偽名言い辛いんだよ。何だっけ?『ガガガルヴァザ・エシャシャント』だったっけ」


「全然違ェよ。『ガルザヴァイル・エシャント』な。文句あんなら隊長に言えや。あいつが考えた名だ」


 言いながらヤタラスは、懐から太い葉巻を取り出して咥えて火をつけた。その煙に顔を顰めつつ、ペンタチが苦情を言う。


「というかヤタラス……部下の教育がなっていないっすよ!さっき入口で歓迎を受けた時、仲間一人殺されてるのに、俺らに食って掛かる奴は誰もいなかった!どういう指導してんすか」


「俺ァなんもしてねーよ。部下じゃ無ェし、使い捨ての玩具な。……それより聞いてくれよ、あいつらこのボロいアジトで毎日熱心に何してると思う?メタナイフを抜刀する訓練だぜ?抜刀!面白すぎんだろ⁉それが出来るようになったら、今度はメタナイフを鞘に戻す練習を始めるんだろうぜ‼俺が戦場で拾ってきた、どこの誰のもんかも分からねェメタナイフをまるで聖剣かなんかのように崇めやがって……」


 机をバシバシ叩きながら、ギャハハハと下品な高笑いを上げるヤタラス。そんな彼を呆れ笑いでペンタチは見ていた。


「笑い事じゃ無いっすよ~。あんたは、その連中を引き連れてフォルトレイクで騒ぎを起こさなくちゃいけないんすから」


「んま、心配すんなよゥ。テメェらもご存じの通り、俺ァ調教のプロだぜ?ゴミみたいな兵士だろうと、上手く使い潰してやんよ」


 そう言って再び笑う。その笑い声は、部屋の外に漏れることは無く、アジトで訓練を行う団員たちの耳には届かない。


 三人の会話の内容も知らず、団員の少年、セトラはスタナムと共に夕日に染まる街を歩いていた。彼の身に大きな傷は見られない。それは、先ほどの騒ぎと、スタナムの助けによって『覚醒の儀』を受けずに済んでいたからである。セトラを『改心』させようとしていた幹部のヴァシリスとその部下達に対し、スタナムはこう言って止めた。


「セトラを改心させるのは、私に任せてほしい。セトラがペルトを庇ったのは怠惰な精神によるものでは無い。未熟であるがゆえの無知と、何より尊い同志への友情によるものだ。今の彼ではまだ『覚醒の儀』には時期が早い。今回は私がよく言って聞かせるから、勘弁してやってほしい」


 そう頭を下げるスタナムに、ヴァシリスは困り顔で答えた。


「……頭を上げてください。団長が軽々しく首を垂れるものではない。……分かりました。こいつの改心はお任せします」


 そう言って、ヴァシリスはセトラを睨みつける。それからセトラは、スタナムに連れられて二人で街に出た。沈む夕日の赤い光に照らされた港町では、たくさんの人々が行き来している。市場は盛り上がり、酒場やレストランなどの飲食店も多くの客で賑わっていた。それらを指し、スタナムは優しくセトラに語り掛ける。


「この光景、街行く人々、これこそが我が国の宝であり、我々が守るべきものだ。……しかし、同時に彼らは怠惰な存在さ。目先の生活や、家族友人といった身の周りの人々のことしか頭に無い。身勝手で、視野の狭い愚かな思考をしている。だが、それで良いのだ。この者達は、今はそれで良い。守られるべき存在なのだから。……しかし、我々は違う。我々はこの国の未来を背負って行く戦士だ。であるから、我々は怠惰な思想を持っていてはいけない。大局的でいなくてはいけない。自身の生活や、周りの人間のために活動をおろそかにすることなどあってはならないのだ。……ペルト・スターナーは、悲しいことに、自身の家族のために団員としての誇りを無下にした。これは非常に大きな罪なのだ。分かって欲しい。『戦士』でいるとはそういう事なのだ」


「……はい」


 セトラは頷く。それが本心からの理解によるものなのかどうかは、彼自身にも分からない。しかし納得していようがいまいが、セトラは賛同するしか無いのだ。そして自分の意思で賛同したからには、その思想は正しいのではないかという自己暗示を無意識的にかけているのである。心の防衛機構の一種だ。


「ペルトにできる贖罪の手段は、『覚醒』しかない。試練を生き抜いて傭兵として生まれ変わることが出来た時、彼は罪人ではなく英雄と成り得る。我々が彼のために出来ることは、その覚醒を促す手伝いをすることだけだ。すなわち、『覚醒の儀』。君も……協力してくれるね?親愛なる友人、ペルトの罪を浄化し、彼を覚醒させるために。君の拳こそが、今のペルトには必要なのだ」


 セトラは再び無言で頷いた。その瞳は真っ直ぐに真剣にスタナムを見つめていたが、同時に黒く濁っている。そんな彼の表情をスタナムは満足げに見て笑った。そして、少し声のトーンを下げて話を続ける。


「……君にだけ、私の夢を伝えておこうと思う。革命が成り、我々がこの国を動かすこととなった暁には、このフォルトレイクを、どんな大国も手出しができない強国へと生まれ変わらせようと考えている。すなわち、全国民の傭兵化。全国民の覚醒だ。一国家規模の傭兵団へと、フォルトレイクを生まれ変わらせる。そうすれば、誰も我が国を狙おうとは思わない。何人もこの国を穢すことは出来ない。この美しく気高い国を、守ることが出来る」


 夢見るような、輝く瞳でスタナムは語る。その途方もない夢に、希望に、セトラは圧倒された。そして、口からは勝手に言葉が紡がれる。


「……やりましょう、スタナムさん。僕たちの手で。この国を……生まれ変わらせる」


「ありがとう。賛同してくれて嬉しい。共に行こうじゃないか」


 二人は、熱い握手を交わした。


 やがて街は暗闇に沈み、人の通りもほとんど無く、月と星の灯りのみが照らす道を、セトラは一人歩いていた。街道から少し外れた小道の端に佇む小さな花屋に、彼は帰り着く。スタナムと握手を交わしたその手は、指の関節部分が擦り切れ血で滲んでいる。ついている血は、セトラのものだけでは無かった。


「セトラ!お帰りなさい……!こんな時間まで何をしていたの⁉心配したんだから」


 建物の中から、彼の姉が出迎える。その顔を無表情に見つめながら、セトラは何も答えずに家に入る。明かりで照らされた彼の手を見た姉は、驚いた声を上げる。


「ちょっと、指のところ怪我してるじゃないの!見せて!治療しないと……」


 そう言って、彼の手を取る。セトラは姉を睨みつけて、乱暴に振り払った。


「……やめろ!……この傷に触らないで。姉さんが心配するようなことじゃない……!」


 そう怒鳴るセトラに向けて、姉は恐る恐るといった感じで問いかける。


「……今日、スターナーさんのお店で、何か揉め事があったみたいなの。……あなた、あそこの家のペルト君と仲良かったわよね……?」


「それが何⁉」


 セトラは苛立ちの声を上げる。姉の優しく心配気な声色が、自分を非難して責め立てているようにしか聞こえないのであった。


「……ねえ、あなたが最近一緒にいる人たちって……その……。大丈夫なの?……何か危ないことをしているなら、関わるのを辞めて……」


「姉さんに、我々の崇高な使命は理解出来ない‼」


 セトラが吠えるように怒鳴る。姉はびくりと体を震わせた。セトラはさらに続ける。


「怠惰でぬるま湯に浸った生活に溺れる姉さんには分からない‼僕たちは、戦士なんだよ。この国の事を考えて、辛く厳しい訓練を生き抜いているんだ‼……僕は……ベン兄さんに誓ったんだ。姉さんを守れる強い男になるって‼……だから僕に意見するな!黙って僕に守られていれば良いんだよ‼」


 そう言って、乱暴な所作で自室へ戻っていく。そんな弟の後ろ姿を、姉は涙を瞳に溜めて見送るしか無かった。そして、部屋の奥の小さな木棚から、書き途中の手紙を取り出す。国を出て行った幼馴染の、昔の恋人へ宛てた手紙だ。今のフォルトレイクの近況と、自分達姉弟の事情が書いてある。彼女はペンを取り、その手紙の最後をこう締めくくった。


 ―お願い、ベンジャミン。もしも、この国に戻ってくるのなら……セトラを助けて―





「ベンさん、どうしたんですか?」


 元カノからの手紙を、真剣な表情で何度も読み返すベンに対し、サヴァイヴが尋ねる。ベンは慌てて手紙を懐にしまうと、誤魔化すような笑いをこちらに向けた。


「いやいや、何でもねぇよ。ちょっと……望郷とやらにふけっていただけだ。それより見ろよサヴァイヴ、アリス。もうすぐ着くぜ……。俺の故郷、フォルトレイクに」


 狭い小型トカゲ船。人の乗る場所のサイズだけなら、シャトルバスくらいだろうか。薬等の積み荷を乗せる空間を合わせるともう少し大きいのだが。


 そんな狭い船内の壁に窓のように空いた部分から、ベンが外を指した。サヴァイヴとアリスが、ベンの指した方向を覗き見る。白い塩の砂漠の遠くに黒い島のような影が見えてきた。近づくにつれて、その全貌がはっきりしてくる。巨大な島の外側全体が、石造りの防壁でぐるりと囲われた、まさに『城塞国家』。島の中心部は山のように高くそびえており、緑が多く見られる美しい自然豊かな島だ。


 そんな自然も、島に近づくにつれ見えなくなり、やがて目の前は巨大に建つ防壁に覆われた。防壁に密接して小型のトカゲ船が停まると、壁についた小さな扉が開き、折り畳み式の簡易的な通路が防壁と船の扉を繋いだ。


「俺達は、ここで下りる。船は港の別位置に移動して、積み荷を下ろす」


 ベンが言う。つまり、人と積み荷で下りる場所が異なるわけだ。我々は繋げられた簡易通路を通って防壁内へと入る。サヴァイヴ、アリス、ベン、エグゼ、レイモンドと、ドリュートン先生。彼ら彼女ら六人は、フォルトレイクに上陸した。もちろん、私も上陸した。


 それから六人は、積み荷を受け取るべく防壁内を移動する。その道中、ベンが事前に伝えていた話を改めて説明する。


「治療薬とワクチンを運ぶ先はフォルトレイクの首都『ルトレ』。そこにある国営の病院に向かう。そのために、馬車を二台借りてある。そいつに薬を乗せて運ぶわけだが……」


 チラッと、サヴァイヴとエグゼに目を向けて、ベンは話を続ける。


「港町から離れているとはいえ、この近隣もブラックカイツやC・レイヴンの連中がいる可能性は高い。ルトレに近づくほど、危険は高まるだろう。だから、当初の予定よりも大幅に迂回して行かなくちゃいけない。さらに、怪しまれないよう、二手に分かれて行く。……今から、そのチーム分けを行う」


 そう、ある意味これが最初の課題であった。ベンは皆を見渡して尋ねる。


「前にも聞いたが、一応確認しておく。アリスとエグゼは……馬車を扱ったことが無いんだよな?」


「……うん」


「ああ」


 二人は言葉少なく肯定した。馬車を動かした経験の無いエグゼを見て、サヴァイヴが小さく笑う。エグゼはその顔を睨みつけた。ベンは二人を見て溜め息をつく。


 今から行おうとしているチーム分けだが、実はその組み合わせはほとんど決まっている。様々な条件から考えると、自ずと選択肢は限られてくるのだ。


・条件1:傭兵二人は別々のチームにする。戦力の偏りを防ぐためだ。

・条件2:医者二人も別々のチームにする。最悪、どちらか一人だけでも、薬の使用法を知る者を国営病院に送り届けなければならない。これも偏りがあってはならない。

・条件3:それぞれのチームに二人ずつ、御者が必要。馬車を動かすのは交代で行う必要があるためだ。そのため、アリスとエグゼを同じチームにするわけにはいかない。


 この三つを組み合わせると、あら不思議。サヴァイヴとエグゼが絶対に同じチームになってしまうのであった。とはいえ、犬猿の仲の二人だ。そのままこの組み合わせを提案しても、反発して来るのは必定。そこで、ベンは懐から事前に用意していたクジを取り出し、言う。


「こいつでチーム分けするぜ」


 このクジには細工がなされており、すでに決められたチームに分かれるよう仕向けられている。このような運任せの手段を装うことで、サヴァイヴとエグゼの反論を封じると言うベンの策だ。そして、予定通りチームが決まった。


・チーム1:ベン、アリス、ドリュートン先生

・チーム2:サヴァイヴ、エグゼ、レイモンド


 サヴァイヴとエグゼは、顔を顰めて互いに睨み合う。ベンはそんな二人に向けて声を張り上げた。


「文句はあるだろうが、クジで決めたことだ!黙って従う事!」


 それから、ベンはサヴァイヴとエグゼに地図を渡し、ルートの詳細を伝える。


「ルトレに着く前に、二か所ほど、合流ポイントがある。予定の期日以内に合流が出来なかったら、先に進むこと。さらに、俺達チーム間の連絡手段には、こいつを使う」


 そう言って、懐から小さな白い鳥を取り出した。


「こいつの足に手紙を括り付けて飛ばすんだ。俺達互いの場所を行き来してくれる。名は『プラチナ』だ」


 伝書バトのようなものか。優秀な鳥である。プラチナは、私を見て小さく首を傾げた。よく分からないが、鳥流の挨拶だろうか、鳥社会の常識には疎いため私には分からない。一応、お辞儀をしておいた。


 それから、港の貨物受け取りエリアで、積み荷の薬品類が二台の馬車に積まれていく。その様子をまじまじと見つめていたサヴァイヴに、音も無くアリスが近づき、耳元に囁いた。


「……リカ姉さんの言葉、忘れないでね」


「うわっアリス!びっくりした」


 耳を赤くして、サヴァイヴがアリスを見る。アリスはジッとサヴァイヴの顔を見上げていた。


「……あの人、エグゼ。……彼と、喧嘩しないで。リカ姉さんが言っていた事」


「……分かっているよ」


 小声で目を反らしつつ、サヴァイヴはアリスから少し距離を取る。そんなサヴァイヴの態度に、どこかムッとした様子で、アリスはまた一歩近づいて彼に向けて身を乗り出す。


「……本当に分かっている……?……サヴァイヴ、エグゼと関わるときはバカになるから、心配」


「なにそれ、バカになんてならないよ!」


 反論しながら、再びサヴァイヴはアリスから離れる。そんな二人のやり取りを見ていたレイモンドが、クククッと笑って声をかけた。


「なあにお嬢ちゃん、心配するな。彼らが揉めそうになったら私が仲裁するさ」


「……そう……。……お願い……します」


 そう言って、小さく頭を下げると、銀髪のポニーテールを軽やかに揺らして、ベンの元へ駆けて行った。ホッと小さく息をつくサヴァイヴの手首をそっと取り、レイモンドが囁く。


「脈拍が上がっているぜ?……王子様」


「なッ……⁉昨日の会話聞いていたんですか⁉」


「昨日の?なんのことだい」


 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて、レイモンドは虹色の瞳をサヴァイヴに向ける。サヴァイヴはハッとして口を押えた。レイモンドは面白そうに続ける。


「アリスが……物語の王子を夢見る可憐なお姫様であることは、シーナから聞いて知っていたが……。昨日、君達の間に何かがあったようだな。……どれ、私に話してごらん。数多くの姫君の心を奪ってきた、悪徳王子のこの私が、相談に乗ってやるよ」


「結構です!っていうか、そんなんじゃないですから!」


 そう言って、サヴァイヴはレイモンドから離れて、ドリュートン先生の方へ向かって行った。私はサヴァイヴの頭を飛び立ち、レイモンドの肩に下り立った。そんな私に向けて、レイモンドは笑いかける。


「君のご主人は……可愛いねぇ」


 そこへ、エグゼが近づいてきた。切れ長の赤い瞳でレイモンドを睨みつけ、小声で言う。


「貴様も、醜い罪人だな。何が医者だ。その血に塗れた手で人の命を救おうなどと……虫唾が走る」


「私は、戦医だったからね……。治せない者の苦しみを和らげるための安楽死処置ならば嫌になるほど行ってきた……君の言う通り、醜い敗北の記憶さ」


 自嘲するような口調でレイモンドは言う。エグゼは大きく舌打ちをした。そして、さらに何か言おうと口を開いたその時。


「よし、積み終わった!出発するぞ!」


 ベンが皆に向かって声を張り上げ言った。エグゼは言葉を飲み込むと、鋭い視線でレイモンドを一瞥して馬車へ乗り込んだ。レイモンドは軽く笑いつつ、彼の背に続いて乗り込む。


 二台並んだ馬車の御者台には、それぞれベンとサヴァイヴが座っている。ベンが、サヴァイヴに告げる。


「それじゃ、最初の合流地点で会おう。気をつけろよ」


「ええ。そちらこそ」


 そうして二台の馬車は、それぞれ別々の道へと進んで行った。

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