第31話 格闘王
この大陸唯一といえる観光都市、氷の街。氷の彫刻等氷ならではの芸術作品が多数ある。芸術家に人気な街なのだとか、他の地域と違い寒い地方ならではの物がたくさんあるから心惹かれるのだろう。船から降り、芸術家達によって作られた巨大な氷のトンネルを抜けると、独創的な建物があちこちに立ち並ぶ区画にでた。彼らが住んでいるだけあって他とは違う、氷の建物やアートな建築物、見たことがない家が多数。それにしても氷の家は寒そうだな。
「少々の寒さは芸術のためなら捨てる」
おしゃれなファッションは寒くても我慢的なやつだな。気合の入った人達だ。体は壊さないようにね。スケートなんかもある。少し体を動かしておくか。実は初めての経験。何度か転ぶうちに滑ることが出来るように。女性陣は華麗に滑っている。同じく初めてなはずだけど。やはり運動神経がいいのかな。お腹が空き食事をする。
「わーきれい」
料理は基本同じだが、店の雰囲気や器が他とは違う。この二つは重要だな、味も美味しく感じる。翌日は穴釣り、湖に張っている氷を削って糸を垂らし釣りをする。寒い場所ならではの釣だな。観光を堪能、次の行き先を話し合う。
「そういえばミハセで格闘技大会があるみたい」
「寄っていこうか」
いつかサキアが言っていた大会だな。せっかくだから俺達も。テラがもうその気だし。
「あ、まだ時間はあるしどうせなら装備を新調してから向かおう」
北国の港街からオデニへ。最高級のグローブと防具を買おう。欲しいものを探し、見つけ情報屋と相談。大きな仕事だと喜ぶ情報屋。オークションのプロを紹介してくれた。欲しいものを言う。
「予算は? はい十分です。手に入れましょう」
欲しいものが出品される日、俺達は会場へ。オークションが始まる。狙った品が登場。少々競り合ったがグローブを入手。防具も意外と簡単に手に入った。
「まあオークションの仕事を得るために裏で動いているんですがね……」
俺と二人のときにこっそりと裏の話を教えてくれた情報屋。今回は談合のようなことがおこなわれていたようだ。ここの人に話を流さないと不当に釣り上げたり嫌がらせをしてくるとか。聞いてはいたけどいい気分ではないな。テラには言わないようにしておこう。喜んでいるところに水を差すのもね。品を手に入れ装備する。金属よりも硬くそれでいて内側は拳を守る革製のグローブ。動きやすくゴムのような感触の布の防具。試しに動く、軽い分動きが良くなった、嬉しそうにしている。テラが強化された。港街からミハセに移動。闘技場へ向かう。選手の受付をしていた。優勝者には賞金が出るようだ。その金額は莫大。俺達が一生遊んで暮らせるほど。正直お金は持っているがあればあるだけいい。ぜひテラには賞金を手に入れてもらいたい。テラが自分の名前を記入、参加する。闘技場から練習終わりと思われるサキアが出てくる。目があうと微笑みながらこちらに声をかけてきた。
「いつぞやの約束を果たそう」
「いいだろう」
燃え上がる二人。テラと拳を合わせサキアは去っていった。そういえば仲間を引き連れていたな。頭を張る器ではある。仲間にできなかったのはちょっと残念だけど。試合は十日後。まだ時間があるな。トレーニングをしながらその日を待つ。
「よし、勝つぞ!
試合当日。気合を入れるテラ。
「これより武闘大会を行う!」
選手達の前で、王が開催の言葉を。こうして戦いが始まった。テラの一回戦の相手はカンスト冒険者の格闘家。一人目から手強い。いや、皆このくらいの実力者か。少しダメージを受けるが勝利。やはり一筋縄にはいかないな、これだけ強化されたテラでも完勝とはいかない。サキアの一回戦が始まった。攻撃するサキア、しかし相手が見事に避ける。お互い一進一退、いや、サキアが優勢か。世界は広い、まさか獣王サキアが苦戦をするとはな。装備もかなりいいもの。さぞ名のある格闘家なのだろう。
「やるな、こんな強者が野に隠れているとは」
「サキアといい勝負が出来るなんて」
無名の格闘家か。まさかの展開に盛り上がる観客。今回の戦いで有名になりそうだ。
「ぬぐぉぉーー!!」
対戦相手の男が急にもがき苦しみだす。いいのが入って怪我でもしたかな。筋肉が収縮したり膨張したりを繰り返す。見たことがある、これは付与魔法、ダボ二の魔法だ。男の頭が膨張、そして爆発。その場に倒れ動かなくなる。
「キャー!」
「ひぇっ」
闘技場は一転、阿鼻叫喚の地獄となる。出口にダボニがいた。やはりヤツの仕業か、歩き去っていく。
(さすが獣王サキア。強化した者でも勝てませんか。今後の資金に賞金が欲しかったんですが、ふふ、仕方ないですね)
仕切り直し、大会続行。サキアはダメージを受けている。奴の付与魔法は恐ろしいものがある。勇者すら苦戦させるとは。それでも勝ち上がるサキア。順調に勝ち進むテラ。決勝はテラ対サキアになる。だが今回はテラの勝ち。大会は一日で決勝まです全ての試合が組まれる。昔からのルールだ。ダメージが抜けないまま戦ってはサキアでもきついか。ダボニの強化者がテラとあたっていたら勝負は逆の結果だったろう。運も実力のうちというけれどお互い本調子の戦いを見てみたかったな。
「負けたよ」
「また今度やろう」
「ああ」
握手する二人。ケチが付いたが勝ちは勝ち、勝者テラ。オークションのときといい表裏があるのは仕方がないことか。世の中綺麗事ばかりではないからな。デボニはこの街を出禁となる。操っていたのは世を騒がせていた生死不問の賞金首の犯罪者だった。魔法により骨格が変わっていたため誰も気が付かなかった。出禁はゆるい気がするが。見かける度に大きなトラブルが起こる。本当に危険なやつだ。
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