第26話 魔法都市
船に乗り東の大陸へ。陸地が見えてきた、入港、上陸し遊覧。街としてはよくある風景なのだが一つ他とは違う大きな特徴があった。
「あれが魔法列車か」
浮いている箱型の乗り物を発見。地面に反発する石を乗り物の下部に貼り付け浮いている。磁石の強力版といったところ。魔法は直接関係ないのだが浮いている姿が魔法を使っているようなのでその名がついたとか。まあこの石が魔法のアイテムのようなものだけど。かなりレアな石のため他国には輸出禁止だとか。変わった乗り物もある。またがって乗るホウキ型の魔法列車。古代の魔法使いはホウキを使い空を飛んだそうだ。今の魔法使いは空を飛ぶことは出来ない。獣人が飛べるから空の世界は身近ではあるけれど。この列車は疲れそうだ、しかも囲いがなくそのまま走っていく。正直恥ずかしい、普通の列車にしておこう。中にある席に座る。結構な数の人が乗る。満員電車のように押しこむまではいないけど。屈強な魔法使い達が後部の囲われた列車に入っていく。あそこがエンジン部かな。動力源は一体なんだろう、服からして魔法で動いているのかな。見えないようにしっかり囲っている、教えてもらえそうにないな。
(まさか手動だとは客も思うまい)
(夢は大事よ)
出発の合図が鳴り列車が動き出す。魔法列車は中央にある巨大都市につながっている。他の街も中央の街につながっている。中央の街以外へは馬車か徒歩のいつもの乗り物になる。中央魔法都市の地図を広げる。きれいな円状の街、円を描くように外周と内部のちょうど中心位の位置に列車が走っている。この街は王都も兼ねている。しばらく走ると魔法都市が見えてきた。
「美しい街並みだね」
主に石材が使われている建物が多い。この大陸は良質な石材が取れる石材の宝庫でもある。中心部に近づく。三分の二くらい入ったところから街の雰囲気が変わる。ほぼ同じ石材で統一された街並み。この石は夜発光する夜光石という特殊な石。明かりがなくても街の中を歩けるのだとか。この石のお陰でこの街は別名眠らない街と呼ばれている。終点の駅が見えてきた。この街のシンボル、石材で出来た巨大な塔、魔法塔。お城の代わりでもある。頂上に王が住んでいる。魔法塔内部に入り列車は停止。内部は夜光石が使われており、陽の光が入っていないのに明るい。お店も多数ある。かさばらないお土産を買っていく。沢山の人達が行き来している。現代よりも発展した街のように感じた。今日は魔法塔の宿屋にチェックイン。そろそろ夜、魔法塔にある見晴らしがいいレストランで食事をする。石が発光し幻想的な街並みが見える。食後、夜の街を散歩。建物、道路が光っているため明かりは必要ない。基本この世界は暗くなったら寝る。夜ふかししていた現代の生活を思い出すな。遊ぶ場所も豊富。ダンス場等どこにでもあるものから、爆発石という金属に接触すると爆発する石を使いパネルに向かって投げる特殊な派手なゲームまで。ギャンブルも面白そうだ、カジノへ移動。
「外れたかー」
磁石石を使ったルーレットのようなものがある。特産品の石を使ったゲームか。暇つぶし場所が多数あり退屈しない街。数日観光していると、王の使いを名乗る人から声をかけられる。
「シン様、王がぜひとも話がしたいと」
この日はどうかと聞かれ了承。指定の日になり迎えの人がこちらへ。魔法塔の高層へ移動。作りはわからないがエレベーターのような物に乗る。。ガラス張りになっていて、上りながら見る魔法都市は現代の街の夜景を見ているかのようだった。到着音が鳴り扉が開く。魔法都市の王と会う。
「久しぶりだな、シン殿。声をかけてくれたら良い場所を提供したのに」
「いえいえお気持ちだけで十分です」
「相変わらず真面目だのー」
気さくな性格の人物。古代魔獣との戦いのときに会った。古代魔獣を倒したことで気に入ってもらい仲良くなる。上の階層に移動、360開放の場所、魔法都市全体を見渡せる。ここから望む魔法都市は格別。皆景色に釘付けとなる。椅子が浮いている、列車と同じ石を使っているのだろう。座ると少し沈む、不思議な感覚だ、はしゃぎたくなる。王と会話をしていると料理が運ばれてきた。絶景を眺めながらの食事。料理が一段と美味しく感じた。
「ところでシン殿。悩みごとがあってな相談したいんだが」
「なんでしょう」
王と話しをしていると、階段方面から声が聞こえてきた。
「アスラ様、現在王はお客様とお食事中です」
「うるさい」
兵を押しのけこちらに向かってくる若い男。喧嘩になりそうとテラ達が立ち上がる。兵が気を使っていたからこの国の関係者か。殺し屋のような危険人物というわけではなそうだ。この人は本当にといった表情の兵士。そのまま進み俺の目の前に立つ男。
「あんたがシンか、勝負しろ!」
「こら、アスラ! 客人に向かってその振る舞いはなんだ!」
「王の御子息です」
アスラと呼ばれたこの男性は王子だった。勝負というのは、古代魔獣を倒した俺に勝てば世界最強の称号が手に入るためだとか。
「すまんなシン殿。こいつがその悩みの種なんだ。丁度いい、アスラの鼻っ柱を折ってもらえんか」
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