第23話 古代魔獣

ここから南にある海底の都市プタニ。その都市が魔獣による襲撃を受け壊滅。生き残ったプタニの兵によると凄まじい数の魔法弾を放ち、更に巨大な追尾弾を装備した巨大な金属の亀のような姿の魔獣が街を破壊したようだ。戦いはしたが弾幕のような魔法弾の攻撃により抵抗することも出来ず死、運良く生き残っても追尾弾を放たれ爆死。近づくものは皆殺られた。


「初めて見た魔獣だったようです」


現在魔獣はゆっくりと北上。敵を発見すると魔法弾と追尾弾を撃ってくる。このままでは竜人の国に上陸、壊滅する可能性がある。竜人にとって弾数が多い敵は相性が悪い。至急各国に応援を要請することに。こんな状況だ、旅の話も一時停止。俺達は城に待機することになった。王が忙しそうに部屋を出ていく。海底都市の壊滅か、大変なことになったな。


「……」


エマの様子がおかしい。顔色が悪くうつむいている。


「エマ大丈夫か?」

「ついにこの日が来てしまったか。私の正体を話すよ」


エマはただの火の鳥ではなかった。その正体は不死鳥人という不死身の獣人。攻撃を食らっても炎の体なためすぐに傷が癒え復活。不老ではないが炎により体を燃やし、炎から生まれた肉体に転生、それを繰り返し生きながらえてきた。実質不老不死。


「私は未来から来たんだ」


未来といっても比較的近い未来。海底から現れた魔獣により人類は死滅。エマは不老不死のため生き延びた。未来の世界はエマ一人だけの世界となってしまった。絶望していると神に声をかけられ、魔獣退治の助けをしてあげてくれと神に諭され過去に転生。俺達の手伝いをすることに。この世界のエマは火の山で寝ているようだ。異変により起きたが魔獣を倒すことが出来なかった。そのまま世界が崩壊して行く様子を見ているしかなかった。


「やつに近づくことすら出来なかった。魔法弾をかわしたとしても追尾弾が襲ってくる。あの魔獣のことを皆は古代魔獣と呼んでいた」


歴史に詳しい人物が、大昔世界を滅ぼした魔獣ではと騒ぎそれがそのままついたようだ。詳細はわからないため実際に古代の魔獣かはわからない。そもそも生物ではないように見える。エマが語る魔獣はプタニに現れた魔獣と全く同じ魔獣のようだ。亀型、魔法弾ばら撒きに追尾弾か。


「あれどこかで」


薄っすらと記憶にあるぞ。思い出した、あいつだ。何故か俺の記憶の片隅に存在しているあるSTGのボスキャラのグラフィックとその動き、攻撃が頭の中で再生される。更に細かく特徴を聞く。砲台が多数背中にあり、追尾弾は背中の中心部が開き発射される。やはり同じだ。となると勝てる可能性はある。ただ、攻撃方法が全く同じとは限らない、やみくもに突っ走るのは危険だ。とりあえず様子見をすべき。エマに了承を取り王に未来の話をする。世界の崩壊の危機。緊急度を上げ、世界に伝えることに。付近の首脳陣はすぐに集まり話し合いを。


「呑気に様子見などしていては国が滅びる」

「世界を破壊する者だ、もっと慎重に動きたいくらいだ」


少々話し合いが荒れたが先行部隊を送ることを決める。飛行能力があり速さに自信のある獣人達を中心に組織された。


「飛行速度はそこまで自信は無い。俺は補助にまわろう」


獣王サキアが来ていたが今回は速さ重視ということで辞退し避難の手伝いをする。破壊よりも敵の能力、動きを探るために派遣される部隊。俺達も部隊に参加することにした。エマの話通りならこのまま手も足も出ず人類は敗退するのか。あのボスならその力は十分ある。状況次第では俺達がそのまま戦闘することになる可能性も。竜人の国は戦場になるため全員避難。予定では上陸したときに接敵。テラたちと行動し最終調整、ボムを溜める。出発の前日、先行部隊の皆と食事をする。皆緊張した面持ち。それはそうだ、世界が滅びるかどうかの瀬戸際だからな。ワインを持ち外を眺めているとテラがこちらへ。


「いよいよ古代魔獣か」

「テラは落ち着いているな」


三人は落ち着かない様子。テラだけ酒と料理を楽しむ余裕があるようだ。俺も正直食べ物の味がしない。世界を滅ぼしたものと聞き緊張する。


「このまま世界が滅びる可能性があるのだろう? なら今更ジタバタしても仕方がない。それに私はお前を信じている」

「はは、あまり期待しすぎないでくれよ」


俺の茶化しに笑みをこぼすテラ。真っ直ぐな瞳、彼女に吸い寄せられる錯覚に陥る。そうだな、ジタバタしても仕方がない。勝機がないわけではない。心が落ち着いてきた。お酒の味がわかる。


「さすが王女様だ、人心掌握術がうまい」

「ふふ、私はテラだ」

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