第22話 不穏

国境を越え大きな街が見えてきた。


「見えてきた、木の街バロオ」


街に伐採された木材が運び込まれていく。ここは世界でも有名な木材生産国。神霊樹の栄養がここまで来ている。船の九割はバロオ産の木材を使用している。加工したときに出る木材の香りがあたりに立ち込めている。あちらこちらに加工場がある。木材も様々なものがある。普通の船用から今後行く予定の砂漠の大陸用の船用木材等。砂漠用の船の木材を加工している工場を見学。特殊な木「滑る木」を加工し砂漠用の船を作る。この木は名前のとおりよく滑る。砂の上を滑って走る船としてはうってつけだ。そもそも砂漠を船で移動するのか。他変わった木がこの国には生えている。そして加工品も面白いものが多数ある。


「ガラスのテーブル?」


透明なテーブルを売っている。どうやら木の樹液を固めて作ったテーブルのようだ。色々あるな。希少な木材が欲しいときはこの国で探せば見つかるかも? 


「あの鎧は南東の大陸の帝国兵が着ている」


物々しい雰囲気の工場を発見。攻撃的な国、帝国の兵達が辺りを守備している。彼らは世界に打って出る隙を常に探している厄介な国。工場に山のように積まれた木材が運ばれていく。あれは「軽い木」、非常に軽い木材。彼らが飛ぶ船を作っているという噂があるが、もしかしたら本当に作っているのかも。だとしても原動力はなんだろう、わからん。あまり関わりたくない奴らなだけにほとんど見ずに素通りする。街を観光、ひと通り見終えると、街から出てさらに南下、次の大陸、八割が砂漠に覆われている大陸に行ける港街に到着。ここから次の大陸は距離が非常に近い。薄っすらと陸地が見えるくらいだからな。乗船券を購入、船に乗り砂漠の国へ向かう。


「見た目は普通の国だな」


砂漠の国、ゴウマタジに入港。この辺りはまだ普通の陸地。ギルドに入りテーブルの上に地図を広げる。街を越えると広大な砂漠が広がっている。沿岸に街がいくつかオアシスが点在している。オアシスと沿岸の街を見て回るか。街から出て砂漠に隣接する街に入る。ここから先は砂漠、死の大地、と思っていたが意外と生物が存在するようだ。特に魔獣は独特の進化を遂げており砂漠を自由に走り回る。生命力のある奴らだな、人間達が苦戦するわけだ。しかし大きな魔獣はいない。船なら簡単に轢き殺せる。流石に砂漠を徒歩は自殺行為、ここからの移動は船にする。砂船と言われる滑る木を使った船、帆船で砂を滑るように走っていく。操縦が難しい船だとか。たしかにどうやって止まるのだろう。砂船に乗り砂漠の旅を開始。砂が巻き上がって船上に乗り上がる。ゴホッ、非常に埃っぽい、甲板から景色を見るのはきついな。各地のオアシスの街と沿岸の街に寄り観光する。一部の街では大陸中心部には近づくなという言い伝えがあったが、近づいてはいけない理由がどこも曖昧だった。普通に行こうと思っても中心部へは船が出ていない。船を借りるか購入するしか行く方法はない。お金がかかるし船員も雇わないといけない。行くとなると大事だな。船が壊れるとアウト、通常は航路がある程度決まっているから、船が壊れたとしても助かる可能性は高い。帆船の布が破れたり、老朽化により木材が破損したりと稀に事故がある。単純に危ないからやめとけってことかな。その昔命知らずの探検家が挑戦したが何もなかったとのこと。何も無いなら無理していくこともないか。


「カトナのときと違って噂的にいいことではなさそうだからどちらにせよいかないほうが」

「それもそうだな」


危うきに近寄らず、やめとこう。砂漠の大陸を一周、ゴウマタジに戻ってきた。旅は順調、これで半分の三大陸制覇。次は海底の国か帝国の国。海底の国は入国までが大変、帝国の国はそもそも入れるかわからない。一旦竜人の国に戻って王と相談しよう。ゴウタマジから竜人の国は近い。船に乗り、あっという間に竜人の国に到着。城に入り王にこれまでの旅を報告。


「言い伝えは本当だったか。信じてなかったのかって? ははは、確証がないものを信じることはせぬだろう?」

「それはそうですね」


王は正直言い伝えを半分は信じていなかったようだ。王様だから尚更オカルトで突っ走るのは危険だからね。しかしこれからは本格的に準備をしていかなくてはと王が言う。拠点をこの国に作ることが決まる。魔獣をうまく使い金策ができそうだから自給自足が可能。資金も問題なし。海底の国は行くまでに時間がかかるからとりあえずやめ。帝国は現在入れない。二つを飛ばして東の国に行くことにする。旅の話をしていると、竜人の兵士が血相を変えて王に駆け寄ってきた。


「王!」

「何事か」

「海底の国プニタが壊滅しました……」

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