第21話 災悪の勇者
樹木が破裂、幹の中から四人の人間が出てきた。どうやら幹の内部を掘りながら上ってきたようだ。それは俺達にも出来ない行為だった。樹木の幹は上に行くほど硬くなる。最後の街まで来ると我々では傷をつけられないほど硬かった。三人の男達は上半身の筋肉が異常に発達している。ドリルのような金属を使い掘り進んできたようだ。リーダー格の細身の男が残念そうにメガネを上げる。
「先を越されてしまいましたか、高い金を払って特注の堀削機を作ってきたのについていませんね。しかもほんの少し」
「なーにお頭、奪っちまえばいいじゃないすか」
「それは出来ません、私は勇者だから悪いことはしないんですよ。それに」
「それに?」
「悪人の君達は奪う前にここで死を迎えます」
男たちの様子が急変。苦しそうにもがく。そうか、あの異常な筋肉の代償か。怒り狂いリーダーの男を狙う男たち。しかし魔法を唱え脚を異常に発達させ、逃げ回る細身の男。そして男達に限界が訪れる、爆発し壮絶な死を迎えた。死んでもいい犯罪者を拾ってここまで上ってきたという男。思い出した。この男は災悪の勇者ダボニ。付与術士の勇者。悪人はどう扱ってもいいと危険な思考を持つ者、行く先々でトラブルを起こす遭遇したくない人間ナンバーワンの男。かなりの危険人物。しかも胸糞悪いやつ。あっと思った瞬間、アイエスが電撃をダボニに向かって発射。後方へ飛びかわすダボニ。
「どうやら歓迎されていないようですね。誰にも理解されなくて辛いものです。私は貴方がたとやり合うつもりはありません。ここは退散させていただきます」
神霊樹から飛び降りる男。脚を元に戻し、今度は腕の筋肉を肥大化させ腕をばたつかせて空を飛んでいく。その異様な光景に誰もが嫌悪した。
(あの電撃、かわせませんでした。通常よりも強い個体? ふふ、面白くなりそうですね)
簡易の墓を作り、今後どうしようかと話しているとカトナがとても眠いとその場に座り込む。長い間眠っていたんだ本調子ではないんだろう。ここで一泊してから降りることに。テントの準備ができる前に寝てしまったカトナ。設営し彼女を背負い運ぶ。
「母様……」
小粒の涙を流すカトナ。まだ若い、家族との別れが辛かったのだろう。そこは安心してくれ、優しいお姉さんがいっぱいいるから。アイエスは短気だけど正義感は強い。良い人多いよ。頭をなでテントへ。一夜明け、カトナにこちらの状況を説明、うなずき納得した様子。彼女の力を見ることに。獣人化は人型のワシ。
「かっこいいでしょ」
契約し彼女に乗ってみる。メインウエポンは左右の手から発射される風の魔法弾、射程はそこそこ、威力はそこそこ、弾数は少なめ。特徴的なのは飛行速度、三人よりも速い。3D画面に向いていそうだ。3Dは前後左右見えるから強そうに見えるが後方からの攻撃に弱い。そこを速く飛ぶスピードで後続をぶっちぎることによりカバーできる。短期決戦、逃げに向いている。いつもより速いと自身の能力が上がったことに驚いているカトナ。そうだな、カトナに俺達の能力を教えておきたいし、この際おさらいしておくか。
テラ
・見た目は竜
・氷のブレス
・射程は短く弾数は三発、威力は大、チャージ攻撃は超大
エマ
・火の鳥
・火の羽
・射程は短く無限弾、連射可能威力小
アイエス
・天馬
・電撃
・射程は中、無限弾、威力中
カトナ
・ワシのような人
・風の魔法弾
・射程は中、弾数中、威力中、機動力が高い
後は俺の能力のまとめもしておこう。
・戦闘時、縦画面、横画面3D画面の3つから選べる
・ステータス画面がある、ここで使用できる能力がわかる
・レベル制、レベルアップで能力が増えることも
・ボムが使える、ゲージ制、時間で溜まる
・かすることによりゲージ上昇
・契約した者の能力強化
・属性ダメージ半減
・仲間を収納できるアイテム、圧縮玉4、魔獣玉3
仲間の魔獣
・フロートリーフ、獲物に向かって実の弾丸を発射
・リザードショット、木をくり抜き、コルク弾を発射
こんなところか。力を見せ合い打ち解ける四人。仲良くやれそうだ。カトナに冒険者カードを渡す。訳アリの人間が仲間になったとき用にと何枚か冒険者カードを貰っていた。ここからは飛んで帰ることにした。もう一度あの迷宮を通るのは勘弁だ。途中魔獣が襲ってくるがこのメンバーなら余裕、返り討ちにする。枝部最下層に到着。休んでから幹を降り街へ。神霊樹の街から出て拠点へ。新しい魔獣が増えていた。ウッドシャーク、歯を飛ばし攻撃する魔獣。サメが空を飛んでいるのはなかなかにシュールな光景だ。魔獣の数が増えている。彼らを使ってお金を稼いでいるようだ。ありがたいね、維持費も結構掛かる。特にトカゲの魔獣は相性がいいようでかなり活躍しているようだ。魔獣だから連れ歩くのは難しい。今後はこういった活用がメインとなりそうだ。拠点は彼女達に任せ、旅に出る。次はここから南下。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます