第15話 六大陸
旅を続けて小さな街に寄る。
「近くの森に魔獣を操って生活している奇妙なやつがいる」
魔獣情報だ。情報のあった森へ。そこには大きなトカゲがおり、背には男が乗っていた。木を口を使い削ってコルク状にし、吹き出して獲物にぶつけている。魔獣の名は「リザードショット」、通常の魔獣は人を襲うが、小さい頃から育てるとなつき、狩りのパートナーになるとか。子供から育てても全魔獣、人を襲うと聞いていたが、そんなこともあるのか。欲しいなら子トカゲを譲ってくれるという男。そうだな、魔獣博士に相談してみよう。また貰いに来るかもと言い残しその場を去った。
「一周したようだ」
ここから南下すると竜の国。ゴール地点が見えてきた。竜の国を旅しながら城がある王都に到着。魔獣博士に卵を預け、トカゲの件を相談。今度トカゲを引き取りに行くとのこと。城まで入口に。王女が先に入っていき、他三人は客間へ。二人と話をしていると王と王女が部屋に入ってきた。
「どうやら旅は順調だったようだな。ふふ、だが本番はここからだ」
王が語る。世界には六大陸と呼ばれる六つの巨大な陸地が存在、それぞれ個性的な地域、人々が暮らしている。海の国もあり人によっては七大陸と呼ぶが基本は六大陸。我々が暮らしているこの大陸は世界の真中に位置している。これから他大陸に渡りさらに見聞を広めること。地図をテーブルの上に広げる。手始めに西にある三分の二を森に囲まれている大陸へ行くといい、と指差し勧めてきた。他の五大陸はこの大陸の周りに存在する。予定としては半時計回りに大陸を渡っていく。もちろん途中戻っても、他へ行ってもよし。あくまで予定。中心にあるからこの国には帰ってきやすいな。カルチャーショックやホームシックになってもすぐ戻れるのはいいね。ここまで旅をしておいて今更ないとは思うけど。しかし、家業はしばらく辞めることになるか。弟に任せて半引退にしてしまおう。旅に出る前にそうなる可能性はすでに伝えてある。手紙を送っておくか。彼女達三人も旅を続けることに異議なし。それから魔獣博士と話しをする。
「もし他大陸で拠点が出来そうなら連絡をくれ。こちらの仲間を送ろう」
魔獣を連れて旅をするのはかなり大変だ、助かる。こうして四人の旅が再スタートすることに。
「改めてよろしく」
竜の国から南西にある港街に移動。そういえば船に乗るのは初めてだ。先にドラゴンに乗ったり浮島に乗ったり変わりどころは乗ったけど。あべこべだな。乗船券を買い船に乗る。大きな船だ、四人が寝泊まりする部屋に荷物を置き、甲板へ。潮風の匂い、空を飛ぶ海鳥。今まで暮らしていた大陸が徐々に小さくなっていく。船旅が始まった。船上には武装した冒険者がいる。海にも当然魔獣がいる。
「色々遊ぶところがあるみたい」
長旅なため様々な施設が中に入っている。船旅というと優雅なイメージがあるが、人によっては退屈な旅と感じる人はいるだろう。風景はどこまで言っても海。出港、入港時に陸地が見えるくらい。子供には辛い旅になるかも。浮島のときもそうだったな。これだけ施設が整っているというのはこの世界でも退屈という点においては似たようなものなのだろう。一方日ごろ忙しい人には非常に有意義な時間を過ごせるとか。時間を忘れただのんびりと過ごす。贅沢な時間の使い方なわけだ。船内に入り施設を確認。レストラン、バー、子供用室内遊び場、劇場、ダンス場、カジノ、ショップ。充実した設備、我々がまず選ぶ場所は? バー! 昼間からお酒! なかなか出来ない贅沢だ。この世界でも昼間からお酒飲むのは気が引ける。翌日はカジノをやってみる。カジノと言っても現代のようなものではなくサイコロ、チェス、トランプ等の賭博場。ルールが簡単なサイコロ賭博に挑戦。ディーラーと客の勝負。二つ振って合計数字が高い人間の勝ち。最初のうちは簡単に勝てた。だが、客が大金を賭けるときはディーラーの勝つ確率が高めだった。次の高額ゲームのサイコロの動きを見る。ああ、不自然だ。一定のリズムで転がっている。これなら狙ったサイの目を出せるだろう。後ろで見ていたテラも気がついたようだ。まあイカサマはどこの世界でもある。サイコロを取り上げてイカサマだと叫んでも面倒なだけ。しかし白けてしまったな。適当に賭け終わらせる。知らなければ楽しめたかも。能力を持った弊害か。
「お客さん、どうです一勝負」
席を立ちどうしようかとうろついていると女性のディーラーさんから勝負を挑まれる。トランプを使ったゲーム。切っているところをしっかりお見せしますとカードを切って見せる。先程の立ち回りを見ていたのか。となると勝負にならない可能性があるな。俺の動き、表情を見て察したなら、ボロ負けだろう。だけど面白い。大金をかけるわけでもないから彼女ゲームをすることに。様々なテクニックを見せてくれた。正確には見えない、何をやっているかわからない技たちだったけど。そうだな、何もスピードだけがテクニックではない。最後はわざと負けてくれプラマイゼロに。先程の賭けで騒がなかったお礼として色々見せてくれたようだ。
「ありがとうございました」
礼をしてこちらにウインク。完敗だな。負けたけど清々しい気分だ。お腹が空きレストランへ。食べ終え一息ついていると、船が少し揺れた。魔獣と戦闘中かなと思っていると、今度は大きく揺れ椅子から転げ落ちる。こいつは大きな魔獣かも。立ち上がり甲板を目指す。ここから距離がある、船がひっくり返されないといいけど。外に出ると予想通り、大きな魔獣に船が襲われていた。タコの様な魔獣が船に絡みついている。特に船首付近には大量の足が。彼女達が片付けようとしたその時、船上から曲が流れてきた。情熱的なその曲は一人の女性が演奏しているものだった。その正体はディーラーさん。クール系の人だと思っていたけど。そしてその隣に羽帽子に剣を持った男性が。二人は踊り、曲が終わると決めポーズ。
「はっはっは、君たちは運が良い。この私が船に乗っていたのだからね。勇者ザデフ、その友マフア、いざ参る!」
ザデフと女ディーラーのマフアが戦闘に参加。高速な走り、絡みつく足まで一瞬で近づく。そして両断。かなりの早業だ。エマよりも早い。あっけにとられていたが我々も戦闘に参加。十数本切ったところでタコの魔獣は海中へ逃げていった。この勝利は勇者ザデフの活躍によるところが大きい。魔獣を追い返すと満足げに船の中へ入っていった。マフアとすれ違う。
「ふふ、惚れた弱みというかね」
そうか、マフアはあれだけの人読みができる。ところがザデフは何も考えてなさそう。人の心を読むのは非常に疲れる。彼がやすらぎになっていのかな。まあいやいや音楽をやってはいなかったしまんざらでもなさそうだったけど。ナルシストでちょっとあれな人だったが、勇者ザデフの身体能力は非常に高かった。速さ特化の剣士かな。この後は特に問題はなく無事航海を終え西の大陸に到着。勇者ザデフたちは街の中へ。彼らとはまたどこか出会えるかもな。この街は大きな街、お城もあり王都でもある。宿を取り地図を買ってギルドへ。テーブルに地図を広げ今後のルートを話し合う。一泊して観光。街としてはよくある一般的な街かな。ギルドで少し仕事をして、次の街へ。
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